こんにちは。ねこです。ここでは本醸造酒(ほんじょうぞうしゅ)についてのお話をしていきたいと思います。
さっそくだけど、ゆみは本醸造酒って知ってる?
知ってるよ!コンビニとかスーパーに置いてある日本酒でよく見かける気がするなぁ。でもね、あんまり買わないよ。
え?なんで?
うーーん。なんか「お父さんの味」がするから…うまく言えないけどアルコールの感じが強いっていうのかな。
この日本酒を買うなら酒屋さんに置いてある「無濾過生原酒」とか「純米吟醸」とかって書いてある日本酒を買いたいな。あれは好きだよ♪
「お父さんの味」…そっか。ゆみは「お父さんが飲んでる日本酒の味」が苦手なんだっけ。(漫画:私が日本酒をすきになった理由を参照)
じゃあ、他の日本酒と何が違うのか見ていってみようか。
日本酒のラベルにはさまざまな用語が表記されています。
多くは漢字が羅列されている日本酒がほとんどで、日本酒に詳しくない人は「何を言っているのかよく分からないけど、毎回何となく同じ表記のものを選んでいる」と言う人も多いのではないでしょうか。
表記された用語の中で、本醸造酒(ほんじょうぞうしゅ)と対になる用語は、純米酒(じゅんまいしゅ)になります。
双方の違いは、「醸造アルコールが添加されているか」「いないか」です。
「純米」と書いてある日本酒は、原料に米(こめ)と米麴(こめこうじ)のみを使用した日本酒です。
余計なものは入っていない、米と米麴と水を原料として発酵させて造る本来の姿の「日本酒」となります。
「本醸造」と書いてある日本酒は、原料に米(こめ)と米麴(こめこうじ)、さらに規定量内(白米重量の10%以下)の「醸造アルコール」を使用した日本酒です。
米と米麴と水を原料として発酵させ、発酵が終了した時点(または、最初に日本酒を搾る上槽直前)で「醸造アルコール」を添加します。
いわゆる「甲類焼酎」と呼ばれる焼酎と同じ製法(連続式蒸留)で造られた「蒸留酒」で分かりやすく言えば「無色透明でクセのないピュアなアルコール」です。
連続式蒸留機でアルコール度数を約95%まで上げ、醪(日本酒)に添加する際は30%前後になるように加水してから使用します。
原料は、糖蜜(廃糖蜜/さとうきびの搾りかす)やとうもろこしなどがほとんとで、ものによっては米を原料にした醸造アルコールを使う場合もあります。
ちなみに、宝酒造の「宝焼酎」や、梅酒を作る時などに使う「ホワイトリカー」といったお酒が甲類焼酎になります。
「わざわざアルコールを添加する意味がわからない」
「かさ増しのために入れてるの??」
こういった疑問を持った人もいるかもしれません。
確かに、原料米だけで造るよりも醸造アルコールをいれたほうが日本酒の量が増え、さらに醸造アルコールのほうが原料米よりも安いため製造コストも安く済ませることができます。
ですが、醸造アルコールを添加する目的は大きく3つあり時代によっても主目的が異なります。
江戸時代の頃に、醪(もろみ/本格的なアルコール発酵を行い日本酒を搾る前の状態)に焼酎を添加すると「腐造」しにくくなることが発見されたことが醸造アルコールを添加するはじまりでした。
現在でも、醸造アルコールを添加することで日本酒を腐敗させる原因となる「火落ち菌」など不要な微生物が繁殖するリスクを下げることが可能です。
そのため添加すると「防腐効果」があるため、常温で保存しても長く楽しむことができます。
これが本醸造酒(醸造アルコール入りの日本酒)を冷蔵庫で保存せずに常温保存しても劣化しにくい理由です。
太平洋戦争前後の物資が乏しい中(米不足)に、原料削減や増量を目的として醸造アルコールを添加した日本酒が増えました。
これはいわゆる「三増酒(さんぞうしゅ)」と呼ばれる日本酒で希釈した醸造アルコールの他に、薄まった味を整えるために糖類、酸味料、グルタミンソーダなどを添加した日本酒です。
醪に対して約3倍に増量されているため、三倍増醸酒(さんばいぞうじょうしゅ)略して三増酒(さんぞうしゅ)と呼ばれます。
この時代に合法的に認められていた日本酒のため、製造者だけではなく買う側(消費者)としても安価かつ入手しやすいとして重宝されたお酒となります。
ちなみに現在、「三増酒」は法律で日本酒として認められず「雑酒」扱いとなるためほとんど売られていません。
実は、醸造アルコールを醪に入れることで下記の効果を得ることが出来ます。
これは「キリッと淡麗辛口」が好きな人にはメリットですし、大吟醸酒や吟醸酒といったお酒の華やかな香りを引き出すのを目的として少量の醸造アルコールを添加する場合もあります。
「醸造アルコールが入っているからまずい」のではなく、入っている目的を理解していれば「全てが悪ではない」ことが分かるかと思います。
ですが、味わいの「好み」「好みじゃない」は個人で異なりますので好きでなければ無理して飲む必要はありませんし、いろいろ飲んで試してみる!というのも楽しみのひとつかと思います。
日本酒の話をしていると、どんどん用語が広がっていき「??」が増えていきますよね。
ということはお分かりいただけたかと思います。
実はこの呼び方は「特定名称酒(とくていめいしょうしゅ)」という呼び方で法律で決められ、簡単に言えば「条件を満たした日本酒が名乗ってよい名称」となります。
「使用原料と精米歩合(せいまいぶあい)」によって全部で「8つ」の種類があります。
まずは分かりやすく2グループに分けて紹介します。
こちらは、使用原料が「米と米麴」のみで造られた日本酒になります。
全て「純米」がついた日本酒には醸造アルコールが添加されていません。
こちらは、使用原料に「米と米麴と醸造アルコール」を使用して造られた日本酒です。
全て「純米」が付いていない日本酒には醸造アルコールが添加されています。
これで、手に取った日本酒が「醸造アルコールが入っているのか?入っていないのか?」の区別がつきやすくなりましたね。
次に、それぞれの呼び名の違いを理解するには「精米歩合(せいまいぶあい)」を知る必要があります。
精米歩合とは「どれだけお米を削って残ったお米を使っているか」です。
となります。
お米は削れば削るほど、吟醸香の香りがして味わいが軽快(きれいなお酒)になります。そして削る量が多くなればなるほど使用するお米の量が必要なのでコストは高くなります。
例えば、獺祭の「磨きその先へ」は「磨き二割三分(精米歩合23%)」よりもさらにお米を削って造られているため価格も3万円を超えています。
あまり削らなければ、原料のお米の香りがして味わいが濃醇(コクのあるお酒)になります。ですが削らなすぎると「雑味」も発生しやすくなります。
大まかですが、これが精米歩合の違いです。
「どれだけ削って残ったお米を使っているか?」には規定がありそれぞれ呼び方が異なります。
実は、原料が「米と米麴」のみであれば全てのお酒を「純米酒」と名乗ることができます。
削っている量は関係ないので、精米歩合90%でも精米歩合20%でも純米酒となりますが、精米歩合20%のお酒は「純米大吟醸酒」と名乗ることができます。
そのため、精米歩合20%のお酒を純米酒と名乗るのは「コストや味わいに差があるのでもったいない!」となります。
実は、醸造アルコール入りで「本醸造酒」を名乗れるのはお米を30%以上削っている日本酒に限られます。
<純米酒グループ>
<本醸造グループ>
精米歩合が60%以下であれば、各グループともにどちらの名称を名乗っても問題ありません。
基本的に「華やかな吟醸香を意識して造った日本酒」であれば「純米吟醸酒(吟醸酒)」を名乗り、そうでない場合は「特別純米酒(特別本醸造酒)」を名乗っているケースが多くなります。
<純米酒グループ>
<本醸造グループ>
精米歩合が低いほど、その分必要なお米の量が増えるためコストがかかるというお話をしました。
純米グループの中で一番高価な日本酒が「純米大吟醸酒」、本醸造酒グループの中で一番高価な日本酒が「大吟醸酒」となります。
ですが日本酒は「削れば削るほど旨い!」というものではありません。
これは「コクのあるほうが好き!」「香り高いほうが好き!」など個人の好みもありますし、造り手さん(蔵)によっても同じ原材料・精米歩合で造っても味わいは全く異なります。
精米歩合だけに囚われずに、さまざまなお酒を飲んでみるのが「自分が好きな日本酒」を知れる近道かもしれません。
本醸造酒は、
これに加え「特定名称酒」を名乗るのに必要な
という条件をクリアした日本酒が「本醸造酒」を名乗ることが出来ます。
ですが、「米と米麴、醸造アルコール」で造った日本酒だけれども「本醸造酒」を名乗れない日本酒(普通酒)があるのは知っていますか?
実は、日常で一番よく見ている日本酒がこの「普通酒」にあたる日本酒となります。
コンビニやスーパーの日本酒売り場に必ず置いてあります。
などなど。パックやカップで置いてある日本酒を見掛けたことはありませんか?
安いし、気軽に購入できるので飲んだことのある人も多いのではないでしょうか。
実はこちら、すべてが「普通酒」と呼ばれる日本酒になります。
普通酒も「米と米麴」「醸造アルコール」を原料として造られています。
違いは、
こちらのいずれかに当てはまる日本酒は「普通酒」と呼ばれる日本酒に該当します。
普通酒は、本醸造酒と比べると多くの醸造アルコールを添加していることがほとんどで白米1トンあたり280リットル以下まで醸造アルコールを添加することが可能です。
この添加量は、アルコール添加率にすると約45%となるため「二増酒(二倍増醸酒)」とも呼ばれています。
醸造アルコールの添加率を記載している普通酒はないため、どのお酒にどれだけ入っているのかは不明です。
「醸造アルコールが添加されていない本来の日本酒の味」を知りたい場合は「純米」グループのお酒を選んでみると楽しみが増えるかもしれません。
ちなみに、本醸造酒に添加されている「規定量内(白米重量の10%以下)の醸造アルコール」とは、白米1トンあたり120リットル以下なので普通酒よりも半分以上少ないことがわかります。
本醸造酒は、純米酒と比べると「さっぱり、スッキリ」飲むことのできる日本酒です。
美味しい温度帯は「5℃~15℃」くらいに冷やして飲むと、
がより強調されるためキリリと美味しく飲むことが出来ます。
また、「45℃~50℃」といった上燗や熱燗の温度に温めて飲むと、軽快さやドライな後味を引き出せるため「クゥ~~~」っと美味しく温かい日本酒飲むことが出来ます。
単体で飲む場合は、少し物足りない気分になるかもしれません。
ですが、料理と一緒に飲めば美味しさも倍増します!
こういった「油っぽい」料理と一緒に飲むと本醸造酒の特徴である「シャープさ、ドライな後味」が良い感じに油を流してくれるためとても合います。
こちら、ウォッシュ・リセット効果と言って普通酒でも同じ効果を得られます。晩酌のお供に選ばれるのも納得です。
本醸造酒は原料に「米、米麴」のほかに「醸造アルコール」が入った日本酒で、精米歩合によって「特別本醸造酒」「吟醸酒」「大吟醸酒」に分かれる「本醸造グループ」があります。
そして、原料に「米、米麴」のみで造っている「純米酒グループ」(純米酒、特別純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒)もあり、合計8つ特定名称酒に分けられます。
…というのは分かったかな?
いやぁ~~~びっくりした~。こんなに種類があったんだね。全然知らなかった…っていうかいつも「何となく」「おいしいか、おいしくないか」で選んでたよ。
こんなに種類が違うなら、味が違うのも納得だね!
しかも、スーパーやコンビニでよく見るお酒は「普通酒」って呼ばれる日本酒だったんだ…。あれ、あんまり美味しいって思えなくて…(ゴニョゴニョ)
でね、わたしのお父さんがいつも呑んでるお酒を調べてみたら「本醸造酒」だったの!わたし、醸造アルコールが苦手なのかもしれない…。
うん。話を聞いてるとゆみはそんな感じがするね。
日本酒は無理して飲むものじゃないから、自分が「おいしい」と思えるものを飲むのが一番だと思うよ。それに…
でもね!「おいしい飲み方」を聞いてやってみたい!って思ったよ。
だってお父さんがずーーっと飲んでる日本酒だもの。わたしも好きになりたいよ♪
あじの開きがあるから今夜試してみるね!
(ゆみ…)