2023年6月6日(火)~6月11日(日)までの6日間限定で開催された日本酒イベント。
秋田県秋田市にある、新政酒造さんによる単独の日本酒イベントで多くの新政ファンの方が参加されたのではないでしょうか。
「発酵のちからの素晴らしさ」
を楽しみながら体感できるイベントで、発酵の楽園=Fermentopia(ファーメントピア)と名前が付けられました。
こちらのイベントは、
と内容と場所を分け開催されました。
実際はどんな内容のイベントだったのか?
実は今回、全ての日程のチケットを購入し実際に参加してきました。
ここでは平日のアカデミックフェーズ「2日目」に焦点を当て、実際にわたしが体験した内容や飲んだ日本酒についてなど書いてゆきたいと思います。
平日のAcademic Phaseに参加するためには、
の4種類の内からいずれかを選んで「前売券」を購入し、後日郵送で届いた「入場券と参加証」の2枚セットが必要でした。
入場券には専用グラスとお酒のチケットが3枚付いており、どのお酒もチケット1枚で飲むことが可能となっています。
6月6日の初日は「シンポジウム(宇宙兄弟 鼎談会)」を選びました。
その時の記事は下記にまとめています。
\Academic Phase【6月6日初日】に参戦!/
そして6月7日の2日目は、ワークショップの「木桶にふれてみよう」を購入。
新政酒造が発注した最新の木桶を題材に、木桶の仕組みや奥深さを、作成者の相馬佳暁氏とともに、とことん学べる貴重な特別授業です。
とのことで、「新政酒造さん=木桶」について学ぶことが出来ました。
ちなみに新政酒造さんでは、現在45本の杉の木桶を所有し酒造りをされています。
そして今回のイベントに向け新しく制作され、イベント期間中シンボルとして設置された「新政木桶46号秋田杉」がワークショップでの題材となりました。
新政酒造さんの46本目の木桶ですね!
ワークショップはまず座学からスタートしました。
新政酒造の木桶を担当し、制作している相馬佳暁(そうまよしあき)さんが講師となり「木桶と醸造」に関しての講義です。
現在、日本で木桶をつくっているのは大阪府堺市西区にある「藤井製桶所」さんが唯一となります。
後継者不足による問題もあり、このままでは「木桶を作れる職人が居なくなる(木桶の技術の継承が途絶えてしまう)」ということで新政酒造さんが取った行動は
「自社の社員に木桶の技術の継承をしてもらい、職人を一から育て上げる」
でした。
いち消費者として新政のオール木桶になることを夢見ていた相馬さんが木桶を担当することとなり「ここまで来るのに3年かかった」といったお話もありました。
そして今年中には新政の持っている一番古い蔵を改装し、木桶の本舗所にすると!
全てを自社でやってのけてしまう新政酒造さんはやはり凄いですよね。。
座学の内容を簡単にまとめると下記のようになります。
木桶と木樽は混同している人も多いですが、蓋(フタ)が固定されて無いものを「桶」。
固定の蓋(フタ)があるものを「樽」といった形状の違いがあります。
タンクで醸すお酒は、容器が大きいため1度に多くを醸すことが出来、微生物は添加、品質を安定させることが可能で管理も容易にできます。
つまり狙った安定的な味わいに造ることが出来る反面、同じような味わいが生まれます。
木桶で醸すお酒は、容器は小さくタンクほど醸せず、微生物は常在(無添加)そのため品質にはバラツキがあり管理も難しくなります。
安定しない代わりに、予定調和ではない未知の可能性がありそこまで極めることにより確実にこの世界にはないものを造り出せると考えているとお話がありました。
日本酒を仕込む桶の材料は、1本の原木から4枚程度しか取ることが出来ません。
それは水や水分が出ていき難い板目かつ、アルコールを通さない白太(辺材)の部分を含める必要があるからです。
1本の木桶に必要な枚数は35~40枚くらいになるため、日本酒醸造用の木桶は他の木桶に比べかなり高価なものでもあります。
また、木桶の制作には接着剤やビスなどは一切使用せずに「竹釘」という竹で作られたの釘が使用されています。
制作は28工程あるものを5日~1週間で組み上げますが、天日で乾燥させる必要があるため今回の木桶46号は2020年に購入した秋田杉を2年間ほど乾燥させています。
生酛のお酒は、劣化や酸化がしにくく、旨味が深い。
そして、乳酸菌には2種類あります。
木製品の中に住んでいる「蔵付き乳酸菌」と、まだ未解明ですが人に棲んでいる「人付き乳酸菌」の2種類のセットが生?のメカニズムになっている。
そのため、生酛と木桶は相関関係にあり、その蔵の細菌叢(さいきんそう)を反映した個性的なお酒が醸し出されます。
ノルリグナンという樹木心材成分によって、樽酒は口腔の脂分を洗い流す力や魚料理での旨味やコクを増強する効果があります。
特に秋田杉の赤身の部分にはノルリグナンが多く含まれます。
また、抗酸化成分であるポリフェノール(タンニン)が多いといった味覚的効果などもあります。
…といったお話があり、ここでNo.6の話になりました。
No.6はこれまで「サーマルタンク」にて醸されていました。
なお、これまでもA-typeなどの特殊なNo.6は木桶を使用しています。
そして今年に入り、令和4(2022)醸造年度の中盤よりNo.6も全て木桶仕込みへと代わっています。
「美味しい・美味しくないではなく、木桶でもサーマルに負けないお酒を醸したいと思っている」
「情報量の多いお酒の方が美しいかなと思う」
とお話されていました。
なお、No.6がサーマルから木桶仕込みへと代わったタイミングは
という違いがあります。
「何でシールが貼ってあるんだろう?(新しいボトルじゃないんだろう?)」
という疑問がありましたが、そういった違いがあったことがここで初めて分かりました。
日本三大美林のひとつである秋田杉。
木桶づくりの原木に最適な100年くらいの秋田杉がこれから増えてくるため今がトライするチャンス。
秋田杉の悪いところはどうケアしてゆき、良いところを伸ばしていけるような酒造り親和性を持って行きたい。
秋田の自然で完結する酒造り(無農薬・無肥料の酒米作り(農業)/木桶生酛による醸造/醸造用木製品の供給と開発(林業))が新政酒造の想う地酒である。
ここまでが座学となり、この後は質疑応答がありました。
今回のワークショップでは全量木桶仕込みとなったその節目の「温度制御タンクのSタイプ」と「木桶仕込みのSタイプ」飲み比べが体験できました。
※ボトルの写真を撮っていませんでした…
さらにダイレクトパスとのことです。
純粋に「サーマルタンク(温度制御タンク)の味わい」と「木桶仕込みの味わい」として飲み比べてみた感想は下記の通りです。
均一さを感じる。
どちらかと言うと硬質さがある。
ジュワっとして、とてもキレイ。
酸味が一定な感じがする。
飲むと膨らみを感じる。
温かいイメージ。
ジュワッ、ふわっと、柔らかさがある。
酸味に複雑さを感じる。
飲み比べてみると「これがサーマルと木桶の違いなんだ…」ということを身を持って体験することができました。うーん、面白いですね!
その後ちゃっかり木桶仕込みのS-typeのお代わりをいただいたのですが、この頃にはもう2つの違いが分からなくなっていました(笑)
続いて、質疑応答について書いてゆきたいと思います。
今は蔵が3つある「愛醸蔵(赤)」「明醸蔵(黄色)」「吟醸蔵(青)」
蔵を増やさない限り木桶が入らない(あと1本入るか入らないかくらい)
桶をつくり続けるため、20年位のサイクルで木桶の技術を伝承しながら変えてゆくことを目指す
ダメージを受けた桶はもう一回つくるかリプロダクトにして製品化するかなど循環型を考えている
蔵で、蔵人でやっている。
木桶をつくるだけではなくて「どういう風に使った方が良いか」まで提供できるようにしている
1本の木桶で年間5回くらい回転させているため、どういう環境で使ったらいいのか、カビが生えない方法、リセットする方法なども解っている
ビールや日本ワインといった日本酒だけではなく醸造業界で使っていただけたらいいかな
新樽の方が香りが強い。
やまユは木桶を買った時の1発目のお酒だった。
香りが付きやすい。
あとは、土地土地の木によっても味わいが変わったり、木桶のサイズによっても味わいが異なる。
新政では6個くらいの木桶のサイズがあり、それによって味わいが異なる。
エビデンスがあるため「そういう味わいがいいならこういう比率の桶がいい」といったアドバイスもできる
細長いか、大きいかで味わいが異なる
使い続けて、木に入っているポリフェノールが減っていくとお酒も軽くなってくる
でも木を削ると香りがフレッシュになる
欲しいという声があれば他の蔵に譲ったり。
オークやミズナラの樽は3年サイクルで変えている。
樽に関しては、フレッシュな香りだけが欲しいので3年に1回購入している。
今回のNo.6 A-typeは、オーク樽の中で二次発酵させている。
通常は開放環境で発酵させるけど、密閉空間で再発酵させることで香りと味のバランスが凄くまとまり味も複雑になる。
サイズが違うのと「のみ」という薮田などにホースを繋げるバルブが付いている。
この「のみ」は味噌や醤油には不要で、その部分が塩分などで痛んじゃう可能性が高い。
なのでそのままでは使わないのでは?
味噌や醤油は上からポンプで吸い上げる。
日本酒はポンプで吸い上げる段階で味の劣化になるため、下から。
将来的には、木桶を少し上に上げてグラビティという形で自重で搾りたいと考えている
現在は、木桶⇒ポンプ(ホース)⇒薮田⇒圧搾している…なのでグラビティではなく、ポンプの力で一回酸化している。
既に新政酒造では薮田が下に人が入れるくらい上にリフトアップさせていて自重で落ちるようになっていて、ダイレクトパスは薮田からポンプを通さず手で入れている
薮田をリフトアップしているのはうちくらいでは?
といったお話もありました。
質問の流れで新たな新政酒造さんの知られざる一面を知ることが出来、とってもワクワクした座学でした。
新政木桶46号秋田杉です。新政酒造の8代目蔵元・佐藤祐輔さんもいらしていました。
正直台で桶の側板をカンナで削る体験や(楽しい!)
削った木くずを貰ったり(いい香り!)
実際に木桶の中に入りカンナで削ったり(難しい!)
木桶の底板に名前を書いたり(嬉しい!)
と新政酒造さんのファンにはとても貴重な体験ができました。
相馬さんとも少しお話できて嬉しかったです。
最初はこちらのお酒、No.6 Fermen-type 2022です。
飲むとうまー!
甘みからやってきて酸味と木桶のスッと感。
甘みの余韻が残りつつのスッキリさ。
この甘み、好きです。杏子…?
これはわたしたちが認識している「日本酒」ではないです。
お次は涅槃亀(にるがめ)!
甘みから入り、甘みがスーッと抜けてさっぱりとした酸味が残ります。
美味しい。
マスカットやメロンを思わせる味わいがあります。
ジワッとメロンの果汁感がありますが、スッキリさが大きい。
精米歩合88%とは思えないのはもちろん、飲みやすさがとてもあり「重い・厚い・複雑」などをあまり感じずに美味しくいただけます。
他のお酒との違いは、麹の雰囲気があるため「沢山飲みたい!」というよりもゆっくりじっくりと味わって飲みたくなります。
でもやはり美味しいです、
今年の紫八咫(むらさきやた)!貴醸酒を貴醸酒で仕込んだお酒です。
飲むとひゅーっ!てします。
やはり特徴的ではあります。
熟成のカラメル感、干しいちじくとか。
でもその後が凄く飲みやすいです。スーッと心地よく抜けてゆきます。
甘みはとても濃ゆいです。
そしてこの色はオーク樽熟成をさせた色とのことです。
ブランデーとかで感じるふわっと樽感と広がる感じがあります。
濃厚。
やはりこちらも飲まねば!No.6 A-type!
飲むとうまっ!美味しいです。
今日はとってもバランスが良く感じました。
甘味と酸味が絶妙に落ち着いていて木桶のスッキリさも少しあり、ボリューム感もある。
これは美味しいお酒です。
飲んでいると「うまー!飲みやすーい!」と思います。
本当に甘酸が絶妙。
昨日のお酒が今日も飲めました!アッシュの2022。
飲むと、ミンティ?ハーブ?
なにこれ美味しい。
香草の爽やかさがあります。
初日に飲んだ感じとはまた違うのですが?
冷えていてとっても美味しいです。
スーッと清涼感があり、爽やか美味しいです。
苦みは少々、スッキリ美味しくて好きな味わいです。
この後予定があったため、後半のお酒が出てくる前に帰らなければならないことに!
なのでラストはファーメンタイプをおかわりしました。
やっぱりうまっ!
甘み主体の苦味少々、渋み?美味しいです。
青梅っぽい爽やかな酸味があるのかしら?
飲む度うまっ!って思います。
美味しいお酒だなぁとしみじみ。
そして最後、帰り際に嬉しいことが…!
初めて、佐藤祐輔さんにサインをいただきました。
( ´///` )植田さん、祐輔さん、ありがとうございました!!!!
\きゃー!!!/
今回のイベントでも特に愉しみだった「木桶にふれてみよう」に参加することができてとっても嬉しかった2日目。
様々なスペシャルな体験ができました。
そしてお酒を注いでくださった蔵人さんに
「あれ、昨日も来られていましたよね?」
と話しかけていただいたため
「全日買いました!!!」
と先に暴露をしたり、どんな蔵人の仕事をしているのか聞いてみたり…ワークショップ以外でも楽しい体験ができました。
毎日新政酒造さんのお酒が飲めるのって…すごいイベントですね。(すごい)
to be continued…(3日目へ続く)
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