日本酒には出会いがある。
いつも飲んでいる日本酒。運よく買えたスペシャルな日本酒。たまたま買ってみたら好みだった日本酒…。
ここでは、唎酒師のわたしが出会った「本日の1本」を紹介します。
本日の1本は、秋田県秋田市にある「新政酒造」さんが醸すColors(カラーズ)シリーズの日本酒「瑠璃(ラピス)2020」です。
新政酒造さんの日本酒と言えば「No.6」(ナンバーシックス)が有名ですよね。
No.6は、新政酒造さんの蔵で発祥した6号酵母という酵母の味わいをダイレクトに楽しめるように醸された新政唯一の「生酒」シリーズです。
生のお酒のため、新政さんでは品質保証期間を設け製造より3ヶ月間としています。
今回いただいたお酒Colors(カラーズ)とは、同じ6号酵母を使用し秋田県の酒米の個性を楽しめるように酒米違いで醸された「火入れ」シリーズのお酒となります。
火入れ(熱殺菌処理)をする理由は、その個性や特徴を「固定」するため。
そのため、長期保存も可能でヴィンテージによっては3年から5年の長期低温保管にて熟成することで味わいの変化を楽しめるシリーズでもあります。
6号酵母は、新政酒造さんの蔵で発見された酵母で「新政酵母」とも呼ばれます。
その特徴は、発酵力が強く穏やかで済んだ香りとなり、雪深い寒冷地でも安定した酒造りができることで、まさに秋田県での酒造りにピッタリな酵母です。
酵母とは、日本酒を醸す際に必須となる微生物で「糖分」を「アルコール」と「炭酸ガス」に変える働きがあります。
そのため、どの酒蔵さんでも日本酒を醸す際に酵母をの力を借りることとなりますが、使用する酵母によって発酵力や特徴的な香りなどが異なります。
その蔵に住んでいる「蔵付き酵母」を使用する酒蔵さんもありますが、安定した味わいを提供するのは難しいため通常は清酒酵母を培養した「きょうかい酵母」を使用します。
6号酵母も「きょうかい6号」として頒布されているため、他の酒蔵さんでも使用することが可能です。
なお、現在日本酒造りの主流となる酵母は6号酵母のほかに、7号酵母(華やかな香り)と9号酵母(吟醸酵母の定番)などがあり、他にもさまざまな酵母が存在します。
ちなみに、1号酵母~5号酵母までは頒布が終了しているため現役の酵母としては6号酵母が「最古の清酒酵母」となります。
2022年3月現在、Colorsには6種類の秋田県産の酒米で醸されたお酒が存在します。
それぞれ単一の酒米にて全量木桶仕込みで醸され、その酒米の個性の味わいを存分に楽しめるシリーズがこちらのカラーズです。
アッシュとアースに関しては、2021年の年末ごろより特約店さんでの発売がスタートとなりましたがわたしはまだ入手していないため不明点の多いお酒です。
ちなみに、ラベルの色は新政酒造8代目蔵元となる佐藤祐輔さんが「そのお米の味わいを色で表現」したものになっているとお話しされていました。
そして、今回いただいた青いラベルのラピスは2020ヴィンテージにて製造終了となるお酒になります。
ラピスは2014ヴィンテージよりColorsに加わったお酒です。
ヴィンテージとは、そのお酒に使用している酒米の収穫年度のことで例えば2020ヴィンテージは「2020年に収穫した酒米を使用したお酒」ということです。
ワインと同じ考え方ですよね。
Colorsも「寝かせて楽しめる」ことの出来る日本酒のため、古いヴィンテージほどそのレア度も高くなり飲む時のワクワク感も高まります。
ですが、残念なことに青色ラベルのラピスは現在醸しているロットで最後となります。
本日、ぬくみとりをいたしましたぁ…明日、添仕込みとなります。
いよいよラストラピスカウトダウンです。#aramasa#新政#Lapislazuli #ラピス#木桶仕込#LastLapis#ラストラピス https://t.co/1lJuRIsVIe— YOSHIAKI SOMA-相馬佳暁 (@SOMUCH_) March 11, 2022
と、新政酒造の相馬さんがツイートしていらしたので3月24日現在は絶賛、アルコール発酵中(醪/もろみ造り中)なのではないでしょうか。
そうなるとラストラピスの発売は4月以降となるのでは?と思います。
ですがロットによっては製造より数ヶ月間寝かせてから出荷する場合もあるため、完成後すぐに発売されるかは不明ですので今後のツイートにも注目をしたいですね。
ラストラピスの発売は、2022年11月1日~各特約店さんでの発売となりました。
Colorsの中で1番好きなのは「ラピス」!という人も多かったのではないでしょうか。
新政酒造さんでも、ラピスは新政の基本的な味わいを表現する「定点観測」的な作品と表現されていた通りColorsの中ではコスパも含め1番人気のお酒でした。
ですが、新政酒造さんでは原点回帰という伝統的な醸造手法へ回帰した酒造りを行っており、そして「秋田県産の酒米を使用」「6号酵母を使用」という特徴があります。
ラピスに使用されている「美山錦」(みやまにしき)は、秋田の酒米ではなく長野県で誕生した酒造好適米です。
また、新政酒造さんでは無農薬栽培での酒米づくりに力を入れていますが、美山錦の無農薬栽培は非常に難しくこれらのこともあり終売となることが決定されました。
この2点が、新政酒造さんでのラピスが終了する理由となります。
とても残念ですが、終売までには時間があります。
もし最後にラピスを飲みたい!というあなたは特約店さんを巡ることで出逢えるチャンスはまだあるかと思います。
ちなみに緑のラベル美郷錦(みさとにしき)のヴィリジアンも数年後には終売を予定していると佐藤祐輔社長がお話しされていました。
ラストラピスは2022年11月1日より特約店さんにて販売され、こちらの発売を持って終了となりました。
新政酒造さんの日本酒の中でもColorsは購入しやすい部類に入りますが、今まで地元でラピスを見掛けることはほとんどありませんでした。
昨年1年間、特約店さんを巡りに巡ってみた感想ですと地域によってカラーズの入荷する種類(買いやすい種類)が異なっている印象がありました。
中でもラピスは東京で購入しやすいイメージがあります(当社比)
そんな中、初購入できたラピス2020のラベルの裏を見てみると「3~5年の冷蔵貯蔵がお勧めである。」との一文が!
そうなのです。
2020ヴィンテージからは、ラベルの裏に新政酒造の8代目蔵元・佐藤祐輔さんによるテイスティングコメントが記載されるようになったのです。
そして、同じラピスという銘柄でもロット(仕込みタンク)ごとに味わいが異なることが「本ロットの味わい」のコメントでもハッキリと分かるようになりました。
今回わたしが飲んだのは、2020ヴィンテージ【04ロット】のラピスです。
どんな味わいだったのか?
見てゆきたいと思います。
和梨の香り。
口に含むと、少しジュワリ。
梨や柑橘さがあり、最後はさっぱり酸味感。
おいしい。
ジューシーな甘さと、厚みも感じますが最後はさっぱりします。
この梨感がすき。
とっても美味しいです。
以上。
え?ちょっと待って、わたしこれしかメモに残していません。
いつもテイスティングコメントは手書きでノートに書いているのですが、ラピスの感想さっぱりしすぎん?
開栓1日目のメモしかないので、1日で飲み切ったのだと思います。
ちなみに飲んだのは8月でした。
新政さんの日本酒は大好きなので【美味しい!すきだ!】が先行して語彙力もほぼ無くなります。
ですが、この後に「Colors4種類飲み比べ」を行いその時はしっかりとメモを取っていますので、またそちらの記事も書いてゆきたいと思います。
わたしの感想が参考にならないかと思いますので「どんな味わいなのか?」をそれぞれ調べてまとめてみました。
2020ヴィンテージのラピスは、01ロット~17ロットまで発売されています。
ラストラピスは18ロットになるのではないでしょうか?(違った際は、また記事を更新してゆきたいと思います)
それぞれの祐輔さんによるテイスティングコメントは下記の通りです。
マスクメロン、和梨様の瑞々しい香り。酸味に溶け込む蜂蜜様の甘みはキレよく消えてゆく。
杉桶由来の複雑さもあるが、比較的甘口でキャッチーなロットと言える。冷蔵での3年以内の熟成は、より成熟したまろやかさを生むだろう。
メロン、ジャスミン、蜂蜜の控えめな上立香。クリアな口当たりから、生?と木桶のニュアンスが彩る美山錦の存在感が屹立し、複雑な余韻を残して消える。
酒精度13度ながら濃密さをも垣間見せ、次回以降のロットにも期待が高まる。酒質から数年の冷蔵熟成は吉となろう。
夏みかんと琵琶、青林檎の香。口当たりは優しめであり、酸味と甘みの調和がある。美山錦らしい、渋みやダシ感も健在で、木桶の影響もあり、軽快ながら立体的な構造が存在する。
バランスが良いためすでに楽しめるが、冷蔵で2年程度の熟成もお勧めできる。
金柑、和梨、サワークリームの上立ち。口当たりはみずみずしい酸味が支配する「らしい」一品。
バランスとしては2020ヴィンテージの目標地点へと到達しており、前ロットとの比較は興味深い。ラピスらしい個性が発揮された佳作。3~5年の冷蔵貯蔵がお勧めである。
キウイ、和梨、かすかにアップルビネガー。清酒特有の甘ったるい匂いは極力抑えられ、凛とした香が基本。
味わいも骨格のはっきりした酸味と木桶特有の渋みが基調の男性的な趣。ラピスとしてはやや甘みも感じられるロットでもある。耐久性も申し分なく貯蔵向き。
柑橘、青りんご、和梨といった清々しい香。味わいは、ひたすらみずみずしい酸味が主役であり、甘みは適度である。
美山錦ならでは良質な苦味、木桶の良質な渋みも心地よく、五味のバランスが取れた中盤期の佳作と言える。貯蔵性も見込め、三年ほどの熟成が楽しみである。
サワークリーム、胡瓜、黒糖、金柑を思わせる上立ち香。酸味主体の非常に硬い酒質であり、ガスのアタックも屹立している。
美山錦ならではの立体的にして鋭利な口当たりが酸味を増幅し、長寿を約束するロット。3年ほどの低温熟成をおすすめする。
ミント、梅の花、水仙、青林檎ーー酸味を予想される上立ち香。実際ラピスとしてはやや高めの酸味が印象的。
美山錦特有の渋みも強めに出ており、張り詰めた緊張感が漂う。木桶のニュアンスが白檀を思わせる点など通好みのロットであり、長期貯蔵もおすすめだ。
梨、金木犀、しそ、いちじくといった香り。前ロットよりやや分厚い感触はあるが、微妙に発酵ガス感も残存しており、ゴージャスな趣もある。
枯れた木桶のふくらみのあとに、青りんご様の渋みが続き、味わいに複雑な変化が楽しめる。3年程度の低温熟成もお勧めできる。
金木犀、梅、アップルビネガーといったニュアンスが感じられる。口に含むと若い葡萄を思わせる酸味、そして香ばしい木桶のニュアンスも続く。
甘さは十分にあるが、切れも良く、繊細で複雑な構成が見られる。3~5年の低温熟成も楽しみな佳作である。
青りんご、ライムのような爽快な香りが主体。ライチ様の酸味と黒糖的な甘みはオリエンタルな趣である。
木桶由来のタンニンと美山錦らしい渋みが、軽快な酒質の中に適度な奥行きを与えている。貯蔵育成の場合は、冷蔵下の2~3年ほどの期間をおすすめする。
熟した白桃、花梨、青りんごの香り。味わいは酸と甘味のバランスが均衡し、軽いアフターにつながる。原料米由来のアイソトニックドリンク的ミネラル感と木桶の渋みによる立体感も魅力。
30年以上の長きに渡り当蔵を支えてきた酒米「美山錦」の最後の輝きの一つである。
いちじく、蝋梅、ヤマユリの香り。赤身の強い柑橘を思わせる酸味と上品な甘み、かすかに木桶の枯れた渋みも楽しめるバランス型の酒質。
若干のガス感もありインパクトは前半に集中し、余韻は控えめであろう。寿命は長めであり、育成する場合は3年の冷蔵貯蔵を推奨。
デラウェア、野バラ、青りんごを連想させる控えめな香り。ラピスらしいビターな酸味が立体的な印象を与えるが、今回のそれはガラス細工のような繊細さを宿している。
とはいえ耐久性は高く、より成熟した形に進化するには3年は必要だろう。
デラウェア、セルロイド、若いマンゴーを思わせる上立ち香。みずみずしい酸味と木桶のグリーン感が印象的。
バランスは軽快さが勝る酒質だが、適度な複雑さと展開もあり、飲み飽きない味わい。冷蔵下で2~3年の貯蔵で酸の角が取れて、味わいはより向上するだろう。
若いイチジク、巨峰、青りんごの爽快な上立ち香。高めの酸味に、じゅうぶんな甘さが寄り添い、同時に枯れた木桶のニュアンス、また美山錦特有の少々のビター感が複雑な味わいを織りなしている。
熟成耐性は中程度と思われ、3年ほどの冷蔵下の熟成をおすすめする。
梅、ジャスミン、蜂蜜。爽快さと甘味を連想させる上立ち。ほのかにヒノキの香りも。
凛とした酸味と渋味が織りなす鋭角的な美山錦の味わいの中、山水画のようなモノトーンの木桶の存在感が際立ち独特な風景。
3年から4年の低温熟成により、より円熟した姿が想像される。
ヤマユリ、かぼす、穏やかな乳清、またシリアル様の香り。
味わいは酸味主体でありながら旨味も豊富で、どことなくオーソドックスな「日本酒」的イメージも感じさせる。
後にラストラピスを控えたロットであるが、やや珍しい味わいのロット。すでに飲み時と言える。
こうやって比べて見てみると「このロット飲んでみたい…!」というのがありますよね。
ですが、ラピスの購入時にロットを選ぶことはできません。
その時入荷されているロットを購入することとなりますし、酒販店さんによって入荷しているロットが異なることもあります。
基本的に01ロットからの発売となりますが、熟成期間を設ける場合もあり前後することもあります。
「完全に運」
となりますが、ロット違いで味わいが異なることを知っていると購入するときの楽しみが増えるかもしれません。
わたしもロットで味わいが異なることを知り特約店さん巡りをした結果【04】【06】【10】【17】の4本を購入することができました。
2022年11月1日より、最後のラピスとなる「ラストラピス」が発売となりました。
SNSでは「買えた!」という声をよく見かけるようになり、意外と個人で購入出来ている方が多いような印象もあります。
そのヴィンテージは2021。
箱入り、王冠(コルク栓付き)で通常のラピスよりもジュワジュワなガス感が特徴のお酒となりました。
わたしは10月29日・30日に開催された秋のUTAGE2022の新政酒造さんが出品された回で飲むことができました。
ラストラピスの裏ラベルには下記のように記載があります。
最後のラピスをここにリリースいたします。
美山錦は、独特なコクの深さが魅力であり、「青やまユ」そして「ラピスラズリ」と、体制を一新した後の当蔵において、なくてはならさない酒米として皆様に親しまれてきました。
しかし無農薬栽培が難しいという点から、2020年の栽培を持って一区切りとなりました。
このラストラピスは、貯蔵性を高めるため発酵ガスを可能な限り封じ込めております。
現状でも美味しく楽しめますが、冷蔵下での3年以上、5年ほどの育成もおすすめいたします。
希少な最後のラピスのため、すぐには開けず数年間は寝かせて飲むという人も多いかもしれません。
\ラストラピスについてはこちら!/
新政酒造さんの日本酒は蔵での販売は行っていないため「特約店」さんでの購入が必要となります。
一部の特約店さんに関しては、下記のJ.S.P(ジャパンサケショウチュウプラットフォーム)のサイトにて確認が可能です。
中でもColors(カラーズ)は比較的に購入しやすいお酒となりますが「いつ入荷するのか酒販店さんも不明」なお酒となります。
「入荷し、その時あったら買える」
というイメージになるのではないでしょうか。
そのため、入荷状況や在庫状況などの問い合わせを受け付けていない酒販店さんがほとんどです。
わたしも「行ってみてあったら買う」という方法で購入しています。
もちろん、遠くまで足を運んでも買えないことも多くあります。
そんな時は他の気になる日本酒を購入しつつ、どんな感じで新政さんのお酒を販売されているのか?を尋ねてみる…ということをしています。
それは、特約店さんによって販売方法が異なるからです。
新政酒造さんの日本酒はインターネットでは購入のできないお酒ですので、まずは特約店さんに足を運ぶことからしてみてくださいね。
仕様 :生酛木桶純米
アルコール分 :13度(原酒)
原材料名 :米(秋田県産)米麴(秋田県産米)
精米歩合 :麹米60%・掛米60%
原料米名 :美山錦100%使用(2020年収穫 秋田県産)
使用酵母 :きょうかい6号
発酵容器 :木桶(30・31号)
醸造年度 :令和2酒造年度(2020-2021)
内容量 :720ml
価格 :1,950円(税込)
使用瓶 :暁鐘(Morning Bell)
製造者 :新政酒造株式会社
所在地 :秋田県秋田市大町6丁目2-35
公式サイト :http://www.aramasa.jp/
Twitter :https://twitter.com/aramasayamayu
ロットごとに味わいが異なり、冷蔵貯蔵もオススメ…と何本も購入してしまいたくなるColorsシリーズ。
ラピスは終売となってしまいますが、他の酒米に関しては「2021ヴィンテージ」も出始めています。
ラストラピスはこれから販売となりますので、もし購入出来たらすぐに飲まずに長期熟成保管にチャレンジしてみても楽しいかもしれません。
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