秋田県秋田市にある「新政酒造」さんが毎年恒例として醸している日本酒に
の日本酒があることをご存じでしょうか?
毎年3ヶ月連続で「2本ずつ」発売される日本酒で、玄人向けに「試験醸造」や「実験酒」といった通常とは異なる製法で醸されたお酒です。
その数は公表されていないため、どれくらいの人が購入できるのかは不明です。
気付いたら始まっていて・気付いたら終わっている。
そんな頒布会用の日本酒を、ありがたいことに今年はわが家へお迎えすることが出来ました。
今回は【5月分】となる、
を飲み比べてみました。
どんな日本酒だったのか…?
早速、見ていってみましょう♪
2021年(令和二醸造年度)の新政酒造 特別頒布会のテーマは
「六号酵母の醸造における理論と実践」
となっています。
6号酵母とは、別名「新政酵母」名前の通り新政酒造さんの蔵で発祥した酵母で、現在使われている最古の清酒酵母となります。
2021年の今年は、新政さんの唯一の定番酒「No.6」(ナンバーシックス)が発売10周年を迎え頒布会とは別に「十周年記念酒」が発売されています。
当初は、今年の頒布会のお酒はNo.6を避ける予定でしたが「十周年」や「沈黙ムードの年」ということで、頒布会もハレの日感が強いNo.6になったとのことです。
今年の頒布会は「5月末」「6月末」「7月末」の3回、発売されます。
第1弾の【5月分】は、5月27日(木)に入荷した酒販店さんが多かったのではないでしょうか?
ちなみに毎年、頒布会の発売の時期は異なり2020年は「6月」「7月」「8月」でした。
今年の頒布会用の箱は「取っ手」が組み立てられるようになっている、段ボール製のしっかりした専用BOXとなっています。
そこには、
「2021 Anual Reports for ARAMASA Distribution Group」
「FERMENTATION REPORT OF THE BREWING YEAST No.6」
の文字が。それぞれ直訳してみると
「新政酒造 頒布会 2021年年次報告」
「6号酵母の発酵レポート」
なるほど!だからテーマが「六号酵母の醸造における理論と実践」なのですね。
英語は苦手なので、Google翻訳さんを頼りましたが「ARAMASA 」と入力すると「新政」と翻訳されることにひとりで感心していました。
そして箱の裏には「目次」が書かれていました。
頒布会のお酒は3回に分けて2本ずつ発売されるため、目次の内容は下記のようになっています。
…玄人向けの日本酒と言った意味がお分かりいただけましたでしょうか。
これを見て「ほうほうなるほど!美味しそう!」と感じる人は多分ほとんど居ないのでは…?
わたしは、「えっと、まずレザレクションとは?」から始まりました。
英語を翻訳してみたり、一緒に同封されている説明などを読んでようやく「面白そう!」と思いました。
実はこれを書いている時点ではまだ「F-Type」「T-Type」を飲んでいません。
いつもは日本酒を飲んだ後に「その日本酒がどういったものなのか?」調べながら記事を書いてゆきますが、頒布会の日本酒は違います。
【先に調べてから飲まないと勿体ないことになる】
という確信があったので、ある程度理解してから飲もうと決めています。
本当は「保管して飲む用」と「すぐ飲む用」の2セットを購入するのが理想ですが、それは無理です!
1セット入手できただけで幸せ者です。感謝(* ´人` *)
今回は5月分の「清酒におけるレザレクション製法の報告」の2本について読み解いていきます。
ちなみに、「Part1 Reports of the Resurrection Method」という英文。
これは直訳すると「第1部 復活法報告」なので、「第一節 清酒におけるレザレクション製法の報告」のことを言っているのが分かります。
こちらは今回のNo.6のSanple酒となる1本目「F-Type」のことです。
レザレクション(Resurrection)とは、翻訳すると「復活・蘇生・蘇り」といった意味になります。
新政さんでは、Resurrectionを「二次発酵」の意味で使用しています。
ここからは「F-Type」の説明を引用させていただきます。
その方が分かりやすい&購入できなかった人に正確に伝えることが出来るためです。
アルコール度の低減にともない直面せざるを得ないボディ感の不足に対応するため、新政酒造では
をはじめ様々な方法を模索しているが、本方式は貯蔵容器内での二次発酵を行うことによってこれを解決しようと試みたのもである。
概要としては、上槽後の清澄な酒と酵母を含んだもろみを共存させ、再発酵させる方法を採用している。
これはワイン醸造においては”Sur Lie”(シュール・リー)と呼ばれる製法に近い。
ただしワインの場合、再発酵というよりは酵母の菌体から溶出する糖鎖蛋白質(マンロブロテイン)の溶出を狙っているのに対して、新政酒造では酵母菌体が溶出するほどの長期間の接触は避け、短期的に明確に再発酵させることによる香味の変化を意図している。
見方を変えると、どちらかというと”Sur Lie”よりもスパークリング酒の製法に近いといえる。
とはいえ、本製法とスパークリング酒の製法にも、目的に明確な違いがある。
新政酒造がスパークリング酒を醸造する場合は、瓶内二次発酵を行うため、密閉した瓶内に高圧の二酸化炭素が充満する。
しかしながら本作品は、タンク内で二次発酵を行うものであり、また酵母を含んだオリも除去しているため、醸造の過程でガスは失われ、ほとんど残ってはいない。
単純に酒のボディ感の付与を目的とした手法である。
なお本製品については、”Sur Lie”やスパークリング製法と区別するため、”Resurrection”(レザレクション)というコードネームで実地試験を行っている。
以上が、「F-Type」開発の経緯の説明です。
これらをわかりやすく簡単に言うと
となります。
なんとなく伝わりましたでしょうか?
ちなみに「ミズナラ樽」とは、ウイスキーの熟成に使われる木樽の一種で主に日本の北海道などに自生し「ジャパニーズ・オーク」とも呼ばれます。
飲用方法も書いてありました!
美味しく飲むためにはとても大事なことですよね。
こちらも説明文より引用させていただきます。
~~ここから~~
木桶仕込みのNo.6をミズナラ樽の中で貯蔵するだけでなく、同時に酵母を含んだオリとともに格納し、一ヶ月間”Resurrection”(二次発酵)化することでさらに味わいを複雑化している。
一般的なNo.6よりもボディ感が増し、また生酒特有の「生老化」(甘い草いきれのような香り)の経時的発生も抑制される見込みにある。
出荷後3ヶ月以内に、よく冷やして細身の磁器かワイングラスで楽しむのがおすすめである。
~~ここまで~~
なるほど!
細身の磁器は持っていないので、ワイングラスで愉しみたいと思います。
ちなみに「生老化」は「なまひねか」と読みます。
生酒が劣化した際に生じる臭いですね。
「草いきれ」は「夏の強い日差しを受けて、草の茂みから立ち上る、ムッとする熱気・湿気」のことなので、どんな香りか何となく想像できたかと思います。
こちらは今回のNo.6のSanple酒となる2本目「T-Type」のことです。
「F-Type」との違いは
という面です。
それではT-Typeはどんなお酒なのか?見て行ってみましょう。
以下、商品説明から引用。
F-Typeが、ミズナラ樽に入れて二次発酵を行っているのに対し、本作品T-Typeは木桶仕込みの低精白酒に、温度制御タンク内での”Resurrection”(二次発酵)を施している。
また、低精白ならではのボリューム感を活かし、アルコール度数を通常より2%ほど低い11度台でまとめている。
なお、上槽時の利き酒により複雑性は十分と判断し、ミズナラ樽の使用を取りやめて温度制御タンク内での二次発酵を行うこととなった。
低精白酒は、酵母が強健に育つため酒そのものは頑丈であるが、米外層部の窒素成分ならびに油分が多いため、これらが酸化して熟成が早いように思われる。
また酵母の代謝物が多いために、「生老ね」が出やすいという欠点もある。
本方式は再発酵により、そうした不良成分の除去に資するところも多く、低精白酒のクオリティを上げるために有効と予想されている。
以上が、「T-Type」開発の経緯の説明です。
これらをわかりやすく簡単に言うと
となります。
こちらもなんとなく伝わりましたでしょうか?
2本の違いをまとめてみて、味の違いもなんとなく「こんな感じなのかな?」と想像できそうですよね。
ですが、それを軽く裏切ってくるのが新政さんなんですけどね。
こちらも飲用方法が書いてあります。
美味しく飲みたい♪
こちらも説明文より引用させていただきますね。
~~ここから~~
本作品は、生酛、木桶仕込み、低精白という江戸時代を彷彿させる素材で醸しながら、現代的香味を楽しめるように設計された。
精米歩合88%とはいえ、徹底した吟醸造りを行っているため、酒器はぐい飲みからワイングラス、温度帯は冷やからぬる燗まで幅広いアプローチで楽しめる。
なお本年度から基本的な製法を見直したため、ここ数年来のテイストにはなかったクリアさが復活しているようだ。
これもまた”No.6”、つまり生酒であるため、冷蔵庫化の管理により、3ヶ月以内に消費されるべきである。
~~ここまで~~
危ないところでした!
ぬる燗もいけるんですね。読んでなかったら冷たいまま飲み切る所でした…。
ちなみに「ぬる燗」とは「40℃」になります。
レンジで温める場合は、1合(180ml)を徳利の場合、500Wで50秒ほど温めると「ぬる燗」くらいの温度になります。
ですが、レンジの場合は徳利の上部と下部で温度差が出たり失敗しやすいため「湯煎で温める」のがおすすめです。
熱燗のおいしい作り方と温度帯の記事がありますので、よければご一緒に読んでみてください。
開栓初日と翌日の2日間で飲み比べをしました。
結論としては「美味しい!」「面白い!」なのですが、それぞれの違いを書いてゆきますね。
飲み比べをする上で「よく冷やして飲む」と案内のあったこちらを先にいただきました。
グラスに注ぐと、泡が立ち少しシュワシュワしています。
香りは、柑橘系と梨(和梨)の香り。
味は、梨感。甘さも少し感じます。
じわじわっとガス感もあり、そして酸味の刺激。
オレンジの香りかな?
後口は、さっぱり爽やかさがあって、甘みはさほど無いけど「陽乃鳥」を思わせる雰囲気があります。
冷えているほど甘さは感じず、常温に近くなると甘みも少しあり。
でも、甘みよりもさっぱり爽やか。
オレンジというより「みかん」を思わせます。
そして料理と一緒にいただくと、苦味もありピンクグレープフルーツ感あり。
グラスに注ぐと、F-Typeよりも泡が立ちます。
香りの印象、似ています。
でもこちらは、オレンジの皮とか、はっさく?こっちのほうが強めの香りがします。
飲んでみると、こちらの方がスーッと去っていき軽い。
爽やかでオレンジ感&やさしい甘さが少し。
ドライというよりも爽やかです。
舌にはジワジワとガス感。
F-Typeよりも飲みやすくて、こちらの方がグイグイ飲めます。
好きな酸味感。
日本酒とは思えません。これ、精米歩合88%ですよね?そんな感じ全くない。
時間が経つと口の中にお米感がこんにちはします。
香りは嗅ぐほどクセになります。
ジューシーさと厚みはこちらのほうが感じます。
飲み方の案内の通り「40℃のぬる燗」まで温めてみました。
香りはまろやか。
飲んでみると、酸味~~~~~~~!ぶわっと酸味~~~~!
すっぱめの酸が口の中に広がり、これはクセになる!
なにこれ、めっちゃおいしい!そして面白い!!
ちなみに、50℃の熱燗まで温度を上げると味が飛びます。「40℃」が最適!
すっぱうまーい。
レモンの酸味にオレンジ感?
うまく言えませんが、とにかくクセになる美味しさでした。温めて正解!
そして、料理と一緒だとこちらの方が盃がすすみます。
F-Typeと違って苦味が出ません。
あとは、アルコール度数が11度と低いので飲みやすいというのもポイントです。
初日に2つを交互に飲んでいて、違うんだけど似た雰囲気があるのでどう違うのかちょっと混乱していました。
2日目改めて飲んでみて、その違いが分かりましたので書いてゆきます。
梨。
さらっとしていて少し甘さのある香り。
昨日よりジューシーさと厚みが出ました。
やさしい甘さと酸味。
きれいなお水、とても爽やかです。
改めて飲むと「みかん」っぽい香り。
まず甘さの種類が違います。
こちらは口に含むと、まず甘さがふくらんでから酸味が来ます。
そして口に残るのは酸味。
レモンの皮っぽい酸味。少し苦味がある感じ。
続いてこちらをいただきます。
柑橘。
オレンジの香りで、こちらの方がやはり強さのある香りがします。
ジュワジュワ感あり。
こちらの方が濃厚。
でも、その濃さはさっぱりと去っていきます。柑橘感。
お米の甘さを感じます。
酸味が爽やか。
オレンジの酸味からのお米の甘さ。キレ感も少しあり。
新政頒布会2021年、5月分の「F-Type」「T-Type」を飲んでみて共通するのは
ということです。
甘さも所々に感じますが、甘さよりも「酸味が印象的」なお酒でした。
それぞれの違いをまとめると
という感じでしょうか?
ちなみに、T-Typeを飲むなら絶対温めた味も味わっておくのがおすすめです。
【ぬる燗、40℃】
本当にその味わいに驚きます。すっぱくてふわ~っとして面白いです。
一緒に飲んだ人は「これすき!」と言っていました。
どちらも新政でしか体感できないお酒だと思います。
ちなみに、レザレクションの製法やどんなお酒なのかを飲む前に予習し、味わいを想像していましたが
「ぜんぜん思ってた味わいと違う!」
というのが、本当にもう、新政さんの凄いところだと思います…。
完全にしてやられます。
むしろどうしてそうなるのか?なんでこんな味わいが出せるのか?なんかもう、凄いとしか言いようがありません…。
んー!美味しかった♪
ごちそうさまでした。
毎年、特別頒布会の抽選販売をしている矢島酒店さんより案内がありました。
今年もコロナ過ということで「オンライン抽選販売」を行うとのことです。
6月6日(日)に配信予定のメールマガジンにて抽選方法をお伝えします。
とのことでした。
矢島酒店さんのメールマガジンに登録しておくと6/6にメールが届きますので、抽選の詳細はそちらよりご確認ください。
矢島酒店 新政酒造「特別頒布会2021」のご案内
https://posts.yajima-jizake.co.jp/blog/2021/05/post-7445.html
新政酒造さんの醸す日本酒は、蔵での直接販売をしていません。
頒布会のお酒も、特約店さんにて購入することの出来るお酒となります。
特約店さんの一部は下記のJSP(ジャパン・サケ・ショウチュウ・プラットフォーム)の公式ページより確認ができます。
また、蔵へ直接電話をすることでお近くの特約酒販店さんを紹介してもらえます。
ですが、注意点があります。
です。
これは新政酒造さんの日本酒が「人気過ぎるお酒」「手間暇をかけた特別な製法のため醸造できる量が限られる」ためです。
また希少価値の高いお酒のため、転売ヤーが出てきてしまい酒販店さんも販売には慎重になっているためです。
特に、特別頒布会のお酒は数が少ない「玄人向け」のお酒です。
『いつも来てくれている常連さんなどに買って欲しい』というのが、売る側の気持ちですよね。
今日はじめて行って、今日買える。ということはほぼ無いと思ってください。
また、新政は置いてあるだけで売れる日本酒なので「いつも新政しか買わない」という人も難しいかもしれません。
確かに消費者側の意見としたら
「飲みたい酒だけ買って何が悪い」
と思うかもしれません。
でも売り手からしたら
「あなたじゃなくていい」
となってしまうのも理解できるのでは無いでしょうか…?
そのため、
というのが、頒布会などの特別なお酒を買うための近道になります。
今年は無理でも、来年のために行動してみませんか?
ですが信頼関係があっても、本当に数が限られているため「今回は飲食店さんのみ」と断られることもあるんですけどね。
買えるだけ感謝!というのが、今の新政酒造さんの日本酒です。
本当に感謝しかありません( ´人` )
そんなこと言っても飲みたい!そんな時は
というのも選択肢のひとつです。
今は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置により飲食店さんでお酒を飲むことが難しいですが、InstagramなどのSNSでチェックしておくと飲めるお店を見つけることができるかもしれません。
ちなみに、去年の新政頒布会2020は完全に逃してしまったため、わたしも飲食店さんでいただきました。
その時はTwitterで見つけました!
さらに、それが初めてのひとり呑みという…
ひとり呑みをしたことのないわたしを動かす新政酒造さん…マジ半端ないです。
その時の様子は下記の記事に書いています。よろしければご一緒にどうぞ!
頒布会には毎回ノベリティが付いてきます。
今回のノベルティは「No.6のオリジナルマスク」でした。
わたしが貰ったのは「ベージュ色」のマスクでしたが他にも「黒」「白」などの色が存在するようです。
佐藤祐輔さんが、ペンケースやマスク入れに使えるクリアポーチを作ることにしたとTwitterで言っていたので、クリアポーチは【6月分】になるのかな?
そちらも楽しみです。
また、今回もNo.6のステッカーが付いてきました。
旧H-type(はせがわ酒店コラボのNo.6)の派生で統一した「ダズル」「カモフラ」「マクロス」の3種類の「6」が並んでいます。
ちなみに、今回のボトルはミリタリーっぽいデザインの「カモフラ」です。
来月はどちらになるのか?
それもまた楽しみですね。
5月の頒布会のNo.6のデータは下記の通りです。
原材料名 :酒こまち
精米歩合 :掛米60%、麹米55%
アルコール分:13度
仕込容器 :木桶
二次発酵容器:ミズナラ樽
特殊製法 :Resurrection(二次発酵)
内容量 :720ml
原材料名 :酒こまち
精米歩合 :88%(掛米、麹米ともに)
アルコール分:11度
仕込容器 :木桶
二次発酵容器:温度制御タンク
特殊製法 :Resurrection(二次発酵)
内容量 :720ml
価格 :上記2本で、4,500円(税込み)
製造者 :新政酒造株式会社/秋田県秋田市大町6丁目2番35号
公式サイト :http://www.aramasa.jp/
Twitter :https://twitter.com/aramasayamayu
新発売のお酒の情報などは、8代目蔵元である佐藤祐輔さんがTwitterにてつぶやかれています。
InstagramやFacebookもされていますが、Twitterの情報が一番早いためTwitterをチェックしておくのがおすすめです。
\第2弾、頒布会飲み比べ記事追加/