日本酒には出会いがある。
いつも飲んでいる日本酒。運よく買えたスペシャルな日本酒。たまたま買ってみたら好みだった日本酒…。
ここでは、唎酒師のわたしが出会った「本日の1本」を紹介します。
本日の1本は、福島県西白河郡矢吹町にある「合名会社 大木代吉本店」(おおきだいきちほんてん)さんの醸す、「楽器正宗 別撰 中取り」です。
大木代吉本店さんの醸す「楽器正宗 別撰 中取り」は「醸造アルコール」を添加している特別本醸造(とくべつほんじょうぞう)のお酒です。
醸造アルコールを添加=いわゆるアル添酒と呼ばれる日本酒のことで、
もしかしたら
などなど「醸造アルコール入りの日本酒=美味しくない・悪者」といったイメージを持っている人もいるかもしれません。
ですが、楽器正宗は違います。
むしろ、美味しくないとか良いイメージを持っていない人にこそ飲んでいただきたい。
わたしもひと口飲んでとてもビックリした日本酒、それが楽器正宗です。
日本酒には「特定名称酒」(とくていめいしょうしゅ)という区分があり、使用原料と精米歩合によって8つの呼び名(名称)をラベルなどに表記することが可能です。
大きく分けると2つのグループに分けることが出来ます。
こちらは原料に「米」「米麹」のみを使用している日本酒です。
本来の日本酒のあるべき姿として、純米酒しか醸さない蔵も現在では増えています。
こちらは原料に「米」「米麹」「醸造アルコール」を使用している日本酒です。
楽器正宗 別撰 中取りはこちらのグループに属しています。
ちなにみ、使用できる醸造アルコールは、白米重量の10%以下の醸造アルコールと決まっています。
具体的な数字で言うと、1000キログラムあたり120リットルまで醸造アルコールの添加が可能ということです。
これはかなり少ない量になります。
なお、白米重量の10%以上のアルコールを添加した場合は「普通酒」と呼ばれる特定名称酒を名乗れない日本酒に分類されます。
本醸造酒グループはさらに下記に分けることが可能です。
どれだけお米を磨いているかによって、名称を変えることが可能になります。
今回いただいた楽器正宗 別撰 中取りは「精米歩合60%」で「醸造アルコール入り」の日本酒のため「特別本醸造」に分類されます。
なお、精米歩合が60%なので「吟醸酒」も名乗ることができますが、こちらは造り手さんが表記を選ぶことができるため好みの方を選んで表記されます。
例えば、華やかな吟醸香をコンセプトにして醸している場合は「吟醸酒」、そうでない場合は「特別本醸造酒」といったことが多いようです。
ちなみに、No.6を醸されている新政酒造さんは、どれだけお米を削って磨いていても全ての銘柄を「純米酒」という名称で統一しています。
純米酒には、純米、特別純米、純米吟醸、純米大吟醸などがありますが特定名称酒についてもっと知りたいあなたは下記の記事にて詳しく紹介しています。
こちらも上記に紹介したページで詳しくお話していますが、現代では「香味の調整」を目的として醸造アルコールを添加しています。
醸造アルコールにはこういった効果があり、日本酒の味わいのメリットを引き出すことが可能になるのです。
そのため、あえて醸造アルコール入りの日本酒を醸し自信をもって提供してくれる酒蔵さんもある…ということを知っていると日本酒の愉しみが増えるかもしれません。
実はこちらの楽器正宗の日本酒、全く知らない銘柄のお酒でした。
「正宗(まさむね)」と付く日本酒は多くあり
などなど、一見ラベルだけ見たら「同じ酒蔵さんが造っているのかしら?」と困惑しますよね。
それもそのはず、正宗という名前の付く日本酒は149銘柄くらいあるようです(多)
その中でも、着物のお姉さんが横笛を吹いている姿や楽器のフォントがお洒落で目を引く「楽器正宗」というラベルの日本酒。
一時期SNSでよく見かけていて「気になる正宗」として頭にずっとありました。次第に見掛けすぎて勝手に「楽器ちゃん」と呼ぶ始末。
ですが地元の酒販店さんで見掛けたことはありません。
そんなある日(4月14日)はせがわ酒店 亀戸本店にてついに出逢い、購入に至ることとなりました。
実は、醸造アルコール入りの日本酒ということは購入時に店員さんと話をして知りました。
はじめましての日本酒は変に知識を入れたくないので、ほとんど調べずにジャケ買いが基本なわたしです。
内心(えっ、醸造アルコール入ってるの?)と思いながら購入した訳ですが、頭には「醸造アルコール入ってるとこういう香りになるよね」というのがあります。
グラスに注いで香ってみると、
…あれ?(思ってたのと違う)
お米の香りと、華やかさもあります。
口当たりがやさしく、甘い。少しキレる。
本当に醸造アルコール入ってる?なんだこれ、美味しい。
ジューシーな甘みで、ベタつきやくどさが全くない。
フルーティーさもあり、最後はさわやかに去っていきます。
ちょっとアルコールぽさが口に残るかな?
終始「思っていた醸造アルコール入りの日本酒と違う!」と思いながら飲んでいました。
お魚ぜったい合うでしょ!と思い「ばらちらし」と一緒にいただくことに。
結果は「めっちゃ合う!」
ばらちらしは甘さがUPして美味しい!
ちょっと酸味もあるのか、舌にジュワっと感がある。
おいしい~。
ちょいジュワっとして、きれいな甘さ。
味わいにまとまりもあって、やわらかさもある。
いつもはお酒を買ったら日本酒セラーで数日~入れておくのですが、買いたてホヤホヤを飲んでます!
おいしい~~。
ローソンで買った、からあげクンにも合う!
おいしくてどんどん飲めちゃう。でもアルコール分16度なので油断すると酔います!
料理と一緒だと、ジュワジュワして美味しい。
醸造アルコール?
ないない、そんなの。
入ってるハズなのに全然感じませんでした。
醸造アルコール入りということで、開栓してからいつもより少し長めに冷蔵庫の野菜室(0℃)にて保管をしていました。
ちょっと他の人にも飲んで欲しくて、普段醸造アルコール入りの日本酒を飲まない(好きじゃない)人にブラインドで
「美味しい日本酒あるから飲んで!」
と飲んでもらい、
「…実はこれ、醸造アルコール入ってるんだよ」
としたり顔で言ったところ、
「ホントに?全然そんな感じしない!美味しい!」
とのお言葉をいただきました。
いや、本当にすごいです。楽器ちゃん。
わたしも一緒に飲みましたが、開栓してから1週間経ったこともあり初日よりも「物足りなさ」がありました。
ですが驚いたのはこの後。
料理と一緒に飲むことで、そのポテンシャルを発揮!
甘みがぶわっと!キレがあって美味しい。
本当に醸造アルコール入りとは思えない味わいで、ジュワリ感も復活。
楽器正宗 別撰 中取りは、ぜひぜひ料理と一緒に食中酒として味わっていただきたい日本酒でした。
おいしかったー。
また買おう!
ごちそうさまでした♪
わたしは、醸造アルコール入りの日本酒は好んで手に取ることはほとんどありません。
燗酒にして温度を変えたり、飲み方を変えるとめちゃくちゃ美味しくなることは知っていますが
「あの醸造アルコールの味の感じ」
がそんなに好きではないためです。入っていると直ぐに分かります。
ですが、この楽器正宗は醸造アルコール感が一切なし。
「他の種類もいろいろ飲んでみたい!」と思える日本酒でした。
そのため、合わない人は
にはイメージと異なるため合わないかもしれません。
ですが、
「醸造アルコールが入っていてもこんな感じの日本酒に仕上がるんだよ~」
ということが知れるチャンスです。
これは、苦手な人も好きな人も、両方、誰でも一度は飲んでいただきたい日本酒です。
本当に驚きました。
おいしい。
もう一つの驚きは「価格」そのコスパの良さです。
楽器正宗 別撰 中取りの場合は、
とかなりコストパフォーマンスがよく、手に取りやすい日本酒となっています。
風の森も初めて出逢った時は安いなぁと思いましたが、楽器正宗もお得だと思います。
大木代吉本店さんの醸す楽器正宗シリーズは、一般の人へ直接販売を行っていないため正規取扱店さんでの購入が必要になります。
公式サイトでは、電話にて問い合わせするとお近くの取扱店さんを紹介してもらえると記載がありました。
わたしは、近くに特約店さんがありませんでしたが、東京の「はせがわ酒店 亀戸本店」に行ったときに出逢うことができました。
その時は、3種類の楽器正宗が置いてあり「初めて飲むのですが、どれが一番おすすめですか?」と店員さんに聞きながら購入しました。
店舗の場合は、質問しながら選べるので良いですよね。
ですが、ネットで販売を行っている特約店さんであればオンラインで購入することも可能です。
「楽器正宗 特約店」
といったキーワードで検索するとヒットさせることができます。
ちなみに、わたしが結構利用するいまでやオンラインさんでも購入することが可能です。
いまでやオンライン
https://www.imaday.jp/c/producer/producer-01/producer-01-07/producer-01-07-13
5月7日現在、「楽器正宗 特別本醸造 別撰 中取り」は在庫ありで購入できます。
また、大木代吉本店さんでは他にも「自然郷(しぜんごう)」という無農薬米だけを使用し食中酒をコンセプトとした銘柄の日本酒も醸されています。
こちらも気になっている日本酒なので、いずれ購入してみたいと思いました。
特定名称 :特別本醸造
原材料名 :米(国産)米麴(国産米)醸造アルコール
原料米 :福島県産「夢の香」
精米歩合 :60%
アルコール分:16%
内容量 :720ml
価格 :1,254円(税込み)
製造者 :合名会社 大木代吉本店
所在地 :福島県西白河郡矢吹町本町9番地
公式サイト :https://www.daikichi-sizengo.co.jp/
Facebook :https://www.facebook.com/ookidaikichi/
ラベルの着物姿で楽器を奏でるお姉さんが印象的な「楽器正宗」。
本醸造の日本酒と言えば、「黒龍」や「磯自慢」といった有名人気銘柄の名前が挙がりますが「楽器正宗」はそれらとはひと味違います。
あなたも新しい本醸造酒の楽しみを味わってみませんか?