岐阜県揖斐郡大野町にある「杉原酒造株式会社」さんの醸す日本酒のひとつである
という銘柄をご存じでしょうか?
製造量100石以下という「日本一小さな酒蔵」さんの醸す日本酒で、その味わいに魅せられた多くの日本酒愛好家の人たちから選ばれています。
少量生産のため希少価値が高く、市場に出回る本数も本当に少なく限られているため射美を「知らない」という人も多い日本酒でもあります。
ですが、日本酒ファンになればなるほど知る確率が高くなり、レアな銘酒の1本として「1度は味わってみたい!」と思っている人も少なくないかもしれません。
今回は幻の日本酒とも呼ばれる射美の、
の2本を飲み比べてみました。
どんな日本酒だったのか…?
早速、見ていってみましょう♪
創業1892年(明治25年)現在の蔵元である五代目・杉原慶樹(すぎはらよしき)さんが2003年に蔵を継ぎ、2009年に「射美(いび)」が誕生しました。
射美は、地元である岐阜県揖斐郡(ぎふけんいびぐん)の揖斐(いび)と「美酒を射る(造る)」を掛けて命名されました。
使用されている酒米はオリジナルブランドである「揖斐の誉(いびのほまれ)」で、杉原酒造さんと地元農家さんと共に開発した酒米を使用して醸されています。
そして揖斐川の伏流水を炭素ろ過したものを仕込み水に、酵母も蔵付き酵母を使用と、とことん地元にこだわった地酒酒造りをされています。
射美のお酒の特徴は、食材を引き立てる「甘みと旨み」。
特に射美特有の「甘さ」が特徴で、そのとろみのある甘みに魅せられる人も多いのではないでしょうか。
「飲んだ人がなんか笑顔になってくれれば」
「飲んでいる時間がいい時間になれば」
という思いで醸していると、五代目蔵元である杉原さんが語られていました。
元々は年間20石(こく)ほどしか生産されていませんでしたが、現在は年間100石(こく)以下まで製造数が増えています。
と言っても、日本酒製造量が100石以下の酒蔵さんはほとんど無いと言っていいほど本当に小さな酒蔵さんです。
BY2(令和2酒造年度)に関しては「60石」しか造られていなかったとのことです。
なお、
となり、かなりの少ない生産数ということが分かります。
そのため取り扱い販売店となる「特約店」さんも少なく、各酒販店さんへの入荷本数も極少となるため入手困難なお酒としても知られています。
それもそのはず、酒造りは親子2人の二人三脚で昔ながらの丁寧な手作業による「手仕事」を大切に醸されているためです。
ちなみに、BY3(令和3年7月~令和4年6月製造)より父親である庄司さんはメインの酒造りから外れ、学生2人(アルバイト)パートさん2人の力を借り製造されています。
毎年、射美のスタートとなる一番出荷のお酒「吟撰」。
吟撰とは、吟醸製法にて醸されたお酒のことで射美の吟撰には「醸造アルコール」が若干添加されています。
「え?醸造アルコール?」
と、もしかしたら思った人も居るかもしれません。
醸造アルコールは決して悪ではなく、現代では香味の調整として使用する酒蔵さんが多くなります。
詳細は下記の記事に書いていますので、気になったあなたは一緒にチェックしてみてください。
そして、添加されている醸造アルコールも約1年間蔵で寝かせたものを使用とこだわっています。
発売時期は12月。
2021年は12月12日ごろ特約店さんに入荷となりました。
生酒のため火入れはされていません。
「射美を知るなら、まず最初に飲むべき1本」
であることは間違いありません。
射美はラベルの裏に5代目蔵元・杉原慶樹さんによる「その時その時のコメント」が記載されています。
今回いただいた吟撰 BY3の文章は下記の通りです。
15年以上前に拾ってきた愛犬が立てなくなった。ご飯も食べれず血尿が出る。お医者さんも打つ手が無い状態だった。
しかし、ある朝、犬が立っている!食欲もある!
「え?母さん何したの?」
すると母親は小さな瓶を出して言った『これを飲ましてみた!』それは『救心』だった。『毎朝、一粒飲ました。』
自分にはもったいないといって飲まない母親が、錠剤を落とし、『見えない!見えない!』と言って必死に探す姿を見ると、母親も飲んでほしいと心から思った。
…なんだか物語を読んだ気持ちになりますね。
こういったラベルの裏を読む愉しみがあるのも射美の特徴です。
発売第2弾となるのがこちらの特純 射美になります。
特純とは「特別純米酒」のことで、醸造アルコールを使用せず原材料は「米・米麴」のみ、精米歩合60%の日本酒になります。
ちなみに、槽場無濾過生原酒とは「槽場(ふなば)」と呼ばれる槽でお酒を搾る伝統的な手法で、酒袋に醪(もろみ)を詰めて槽に敷き詰め上から圧をかけて搾ります。
その後、濾過をせず瓶詰めし火入もしない「生」のままのお酒という意味です。
発売時期は1月。
2022年は1月22日ごろ特約店さんに入荷となりました。
今回いただいた特純 BY3の文章は下記の通りです。
今期2人の学生が手伝ってくれている。酒造りの経験は無い。彼らは全ての工程を見よう見まねで一生懸命だ。
酒造りは若いと言えど楽ではない。ましてや給料も高く無い。
『酒造りどう?』
一通りの工程を行った後、恐る恐る彼らに聴いた。
「楽しいです!」
『・・・』彼らから学ぶ事は多く、私から教える事は少ないかもしれない。
でも、将来思いだしてくれるよう、今期は彼らに旨いと言ってもらえる酒を、彼らのために造る。
こちらの特別純米は、今期の造りに関してその一面を覗き見れるような内容となっていました。
射美(いび)という日本酒は、ねこと日本酒のサイトをスタートしてから知った銘柄のお酒で今まで聞いたことの無い銘柄でした。
後々、
「日本一小さな酒蔵が造っている」
「親子二人で醸している」
「希少銘柄である」
ということが分かりましたが、そのラベルの見た目から特に興味を惹かれることはありませんでした。
(初見の日本酒はラベル命で判断してしまうため大変申し訳ございません…)
ですが、東京の酒屋さんを巡っていた際に出逢ってしまったため手に取ることとなりました。
今回の2本は別々の日に飲み比べを行っています。
果たして「射美」とはどんな味わいの日本酒だったのか?
早速、書いてゆきたいと思います。
はじめましての射美はこちら。
初めての射美が吟撰で良かったなぁと「特別純米酒」を飲んだ後に改めて思いました。
早速グラスに注いでみると、注いでいる時からふわりと華やかな香りが漂ってきました。
華やかパイナップル。
濃いめに香り、少々スッキリと酸味っぽさもあります。
あっ、甘~~~い!
かなりの甘さです。
これは蜜?
甘さを酸味が後押ししてきます。
柑橘っぽさのある甘みで、後口はスッキリと酸味がまとめてくれる感じです。
口に含んだ時の「ギュッ!」としてから弾ける甘みが印象的です。
甘すぎるほど甘いのに、後口にその甘さが残らないのがすごい。
「醸造アルコール入ってますよ」という感じは全く無いのですが、この甘みを引き出しているのは醸造アルコールの効果だと思います。
甘みがジューシーからの酸味すっきり。
この甘さのインパクトは苦手な人も居るのでは?と思います。
でも本当に後に残らないのが不思議です。
濃ゆいのに、いい感じの酸味がとても仕事をしてくれているイメージ。
醸造アルコール入りの日本酒と言えば「楽器正宗」が当サイトではお馴染みですが、楽器チャンより濃厚です。
\楽器正宗を飲んだ感想はこちら/
今日はインドカレー(甘いのにスパイシー)と一緒にいただいてみたいと思います。
カレーを食べてから射美を飲んでみると「甘味×甘味」で甘さ感がUP!
そこに酸味がいい感じに合わさります。
スパイシーなカレーに合います!
甘みが「ギュン!」っと美味しくなります。
苦味もいい感じに交わって、美味しくしてくれます。
え、カレー本当に合うのだが。
甘酸のバランスが最高に良くて、アルコール分17度のお酒ですがカレーがある限り3杯…4杯…と飲んじゃいました。
サラダのマヨネーズにも合います。
酸味の柑橘スッと感がUP!甘さも合い美味しくいただけました。
その美味しさに思わず盃が進みましたが、1日では飲み切れなかったため冷蔵庫にて保管をしていました。
時間を置いて飲む射美の味わいに変化はあったのでしょうか?
早速、見てゆきたいと思います。
グラスに注ぐと、変わらず華やかな香りが漂います。
離れていてもとても香ります。
甘くてマスカット?
甘味ジューシーな果汁の香りで、美味しい甘みに交わる酸味。
嫌な華やかさではない香りが鼻をくすぐります。
初日同様、パインぽさもありますが今日は甘みが印象的です。
甘い。
濃ゆくて甘みジューシー。
柑橘っぽい酸味がやわらかくあり、甘酸のバランスがとても絶妙!
後口はキャラメルっぽい甘酸の香ばしさ?があります。
これは…初日より美味しいです。
甘みは相変わらず濃いですが甘過ぎず、酸味がいい感じにあります。
うん、やっぱり飲んでるとキャラメルっぽさがありますね。
なんとなく、コーヒーっぽさもイメージできます。
かなり旨みのあるお酒。
これは美味しいです。
濃ゆさがすごい。
好きなタイプのお酒です。
今日はおでんと一緒にいただきたいと思います。
おでんの後に飲んでみると、キャラメル感が増しました。
おでんに合う!
美味しく食べれるし飲めます。
甘さがありつつ酸味がいい感じにスッとしてくれるので、食中酒としてとても良いです!
え、大根めっちゃ合う!
うまっ。
練り物もとっても美味しくいただけます。
醸造アルコール感一切なし!
開栓5日目、とにかく美味しくてどんどん飲めちゃいます。
いえ、むしろもっと飲みたい。
射美の吟撰、美味過ぎなのだが??
「これが射美なのか…」
と衝撃的な体験の出来た1本でした。
選ばれる理由、解りました。
射美は1本飲めたし、その味わいを知れたのでとりあえずいいかな…
と思っていた最中、再び東京にて酒屋さんを巡っていた際にまたまた出逢ってしまいました…!
吟撰(ぎんせん)の衝撃的な美味さが脳裏にあり、迷わず購入。
醸造アルコールが入っていないこちらの「特別純米酒」の射美はどうなのでしょうか?
ウキウキしながら開栓してゆきたいと思います。
うん、パイナップルです。
甘味多めのパイン。
酸はやわらかく香ります。
甘~~~~~い!!!!
シロップのような甘さで、トロッと感もあります。
酸味&苦味がゆるやかに通り過ぎてゆくので、後口はサトウキビを?んだ時の苦味?青さ?が残ります。
吟撰の射美より甘みが凄いです。
今日は豚バラミルフィーユ鍋!
食べた後に飲んでみると、甘みに酸味がUPしてぶわーっと美味しい甘さがやって来ました。
口に含んだ瞬間はとてもパインで、パインが鼻を抜けてゆきます。
瓶の底にはうっすらオリがたまっていました。
混ぜてから香ってみると、華やかな香りは広がらなくなりました。
飲むとパイン缶。
少しスッキリさもあり、ボリューム感も出て甘過ぎずにスルーっと飲めます。
鍋の後に飲んでみると甘みがUP!シロップっぽさが戻ってきました。
きゅうりとトマトのマリネは、甘酸のパイン感が絶妙に合い「美味しい」と声に出ました。
料理と一緒に美味しいお酒だと思います。
一緒だと甘みのバランスが良くなります。
パインっぽさはずっとあります。
単体で飲むと甘みが強いかな。
「ピ!」っと背が伸びるほど甘いです。
特純はせっかくなのでシェアして飲んだため1日で飲み切ってしまいました。
おいしかったです!
ごちそうさまでした。
今回初めて「吟撰 射美」と「特純 射美」の2本を味わってみました。
という感じでした。
わたしの好みは「吟撰 射美」(ぎんせん いび)。
醸造アルコールの添加されたお酒ですが、本当に衝撃的な1本でした。
このテンションのまま「特純 射美」(とくじゅん いび)を飲んだため「甘み強過ぎ」という印象が強く残ってしまいました。
そのため、もしかしたら特純を1番に飲んでいたら「射美は1回飲んだしいいかな」と思ってしまったかもしれません。
ですが、吟撰がとても好みだったので「他の射美も出逢えたら飲んでみたい…」と思うようになっています。
「射美を飲んでみたい!」
と思っている人にわたしがお勧めする1本目は「吟撰(ぎんせん)」です。
まずはその味を知ってもらいたいなぁと思いました。
杉原酒造さんの醸す射美は「特約店限定販売」の日本酒のため、岐阜県にある蔵へ行っても購入することができません。
ですが、酒蔵の道を挟んで南側の小売部(ふくや)では下記の2銘柄の日本酒を購入することができます。
また、杉原酒造さんのオンラインショップでも上記の2本は数量限定にて入荷することがあります。
射美(いび)に関しては特約店さんのみでの取り扱いのため、上記では購入することができません。
また、公式サイトにも「どこで購入できるのか?」と言った記載がありません。
基本的に、
といった酒販店さんによって異なる方法にて購入が可能です。
わたしは東京で酒屋さんを巡っていた際に偶然出逢うことができました。
ちなみに、神奈川県には特約店さんはありません。
例えば下記の酒販店さんで取り扱いがあります。
など。
基本店頭にての販売となりますが「行けば買える」というものではありません。
また、お店により販売方法が異なるためチェックが必要となります。
入荷本数は酒販店さんによって異なりますが、1番入荷本数が多いのが日本酒の聖地と呼ばれる「小山商店さん」です。
在庫に関して、電話では問い合わせを受け付けていないこともありますのでまずは公式サイトをご覧ください。
基本的に射美(いび)は店頭での販売がほとんど。
どうしてもネットから購入したい場合は「さくら酒店」さんの
のどちらかに参加するのも一つの方法となります。
少し面倒な方法になりますが、適正価格で手に入れるひとつの方法です。
射美には毎年発売される「定番酒」と、いつ発売となるか未定な「限定酒」などがあります。
販売は12月~3月ごろまで、月に1度順次発売となります。
BY3(2021年12月~2022年)の入荷時期に関しては下記の通りです。
3月15日現在、ホワイト射美までは発売が済んでしまっているため店舗在庫が無くなり次第終了となります。
BY3は、ワイン樽を使用し熟成させた無濾過生原酒のBARREL(バレル)が発売予定となっていますので購入希望のあなたはぜひチェックしてみてください。
原材料名 :米(国産)、米麹(国産米)、醸造アルコール
原料米 :国産米100%使用(揖斐の誉)
精米歩合 :60%
アルコール分:17度
仕様 :無濾過生原酒
内容量 :720ml
価格 :1,570円(税込)
原材料名 :米(国産)、米麹(国産米)
原料米 :国産米100%使用(揖斐の誉)
精米歩合 :60%
アルコール分:16度
仕様 :無濾過生原酒/特別純米酒
内容量 :720ml
価格 :1,706円(税込)
製造者 :杉原酒造株式会社/岐阜県揖斐郡大野町下磯1番地
公式サイト :https://www.sugiharasake.jp/
Facebook :https://www.facebook.com/sugiharasake/
定番の「ホワイト射美」は白麹を使用した酸味系の日本酒とのことで飲んでみたかったのですが、気付くのが遅く今期は購入することができませんでした。
射美の入荷は極少量のため欲しい種類がある場合は、SNSなどで前もってチェックが必要となります。
限定酒などもありますので、また何か購入し味わうことができましたら記事にしてゆきたいと思います。