日本酒には出会いがある。
いつも飲んでいる日本酒。運よく買えたスペシャルな日本酒。たまたま買ってみたら好みだった日本酒…。
ここでは、唎酒師のわたしが出会った「本日の1本」を紹介します。
本日の1本は、秋田県秋田市にある「秋田醸造 株式会社」さんの醸す「ゆきの美人 技巧 001 一穂積」(ぎこう いちほづみ)です。
当サイトでゆきの美人の日本酒を紹介するのはこちらで3本目となります。
まだまだ飲んだことの無いゆきの美人ですが、秋田県秋田市にある「秋田醸造」さんで醸されている日本酒です。
関東や東北以外の地域にお住いの人は「知らない」「聞いたことが無い」という人も多い銘柄の日本酒かもしれません。
日本酒の地酒は本当に種類が多く、販売されている酒販店さんも限られるため普通に暮らしていては出逢えないお酒がほとんどだと思います。
ですが、秋田県や日本酒愛好家の人たちの間では有名かつ新政酒造さんも所属する「NEXT5」(ネクストファイブ)というグループを知っている人であれば直ぐにピンとくる銘柄のお酒です。
その5つの蔵元集団からなるNEXT5の先導者(リーダー)が、ゆきの美人を醸す秋田醸造の蔵元・小林忠彦さんです。
蔵元自ら日本酒を醸し酒質の設計を行っている「蔵元杜氏」で、穏やかな香りとやわらかな口当たり、上品な酸味とすっとしたキレ味のあるお酒がゆきの美人の特徴です。
ゆきの美人についてもっと詳しく知りたい!というあなたは、下記の記事に詳細を記載していますのでご一緒にご覧ください。
\そもそも「ゆきの美人」とは?/
今回購入したお酒は、令和5年7月14日からの秋田県豪雨で被災したゆきの美人さんを「飲んで応援したい!」と思い購入した1本です。
被災する前、7月8日ごろに出荷となったお酒なので、この記事を書いている7月25日現在も在庫のある酒販店さんであれば購入することが可能です。
通常のゆきの美人とは異なり「実験的な商品をつくるというコンセプトのお酒」として醸された商品に付けられた名前が「技巧」(ぎこう)です。
技巧は今後もシリーズとして発売されるため、その第1弾(001)がこちらのお酒一穂積(いちほづみ)になります。
元々、試験醸造酒は「craft ZERO」(クラフトゼロ)という名前で発売されていましたが、今回その名を改め「技巧」という名前になりました。
一見、聞きなれない「一穂積」(いちほづみ)とはお酒に使用されている酒米の品種です。
秋田県で生まれた新しい酒造好適米で、新潟県の「越淡麗」(こしたんれい)と秋田県の「秋田酒こまち」を掛け合わせて誕生したのが一穂積になります。
五百万石が持つような、雑味が少なくフレッシュで淡麗、すっきりタイプそして後味にふくらみのある酒質に仕上がるのが特徴となる酒米です。
ゆきの美人では「初使用」となる酒米となります。
そして、ゆきの美人 技巧 001ではこの一穂積に「AK-1」という酵母を使用し醸されました。
酵母とは、日本酒の「アルコール発酵」と「香りの生成」に関係する微生物のため日本酒造りには無くてはならない存在となります。
例えば、新政酒造さんの「6号酵母」や真澄を醸す宮坂醸造さんの「7号酵母」は有名で聞いたことのある人も多い酵母かと思います。
「AK-1」酵母とは、秋田県が開発した清酒酵母で通称「秋田流花酵母・AK-1」と呼ばれ、日本醸造協会のきょうかい酵母にも採用され「協会1501号」として頒布されています。
その特徴は「さわやかで軽快、ほどよく吟醸香があり後味が軽い」というもので秋田県ではとても有名な酵母になります。
通常、ゆきの美人のお酒に使用される酵母は「金沢酵母(14号酵母)」や「6号酵母」がほとんどです。
なお、今年の6月に発売された「純米吟醸 ゆきの美人 改良信交」にはいつもの金沢酵母ではなく実験的にAK-1が使用されていました。
普段からゆきの美人のお酒を飲んでいる方であれば、その違いが味わえたのではないでしょうか。
7月の秋田豪雨災害のことがあり、今回「とにかく買って飲んで応援したい!」と酒屋さんへ問い合わせ現在在庫があったのがこちらの技巧でした。
通常のゆきの美人のお酒であれば、日本酒度が「+」(プラス)のいわゆる「辛口」と呼ばれるスッキリ・ドライなタイプのお酒がほとんどです。
こちらは日本酒度「-3」とゆきの美人ではめずらしく甘口寄りの仕上がりとなっています。
そして飲んでみて面白かったのが
「開栓初日と2日目で味わいの印象が全然違う!」
ということです。
どういうことなのか?
早速、見てゆきたいと思います。
最初は白桃?と思いました。
みずみずしくキレイで透明感のある甘さに感じます。
そして、スッキリとしたパインのような酸味とメロンのような甘みも香ります。
甘みとたっぷりさが押し寄せてきました。
「おぉ!」
と思っていると、舌にジワッとさも過ぎてゆきました。
このたっぷりとしたやわらかな甘みは仕込み水の甘みなのかしら?以前NEXT5 Colorsのゆきの美人を飲んだ時を思い出しました。
ジューシーなのに丸さもある甘みがたっぷりと広がり、そこへ角のない酸がやってきます。
舌にはジュワっと酸が弾けるように広がりスッキリさへと移行。
最後は素材の稲っぽさ?青さ?のある苦味が残るので、甘過ぎずに落ち着きます。
お水の甘みは最後まで口の中に残るため、スッキリだけではなくやわらかな印象も残ります。
温度が上がるとよりまとまり感が出る印象もありました。
ゆるりとした甘みと、柔らかで綺麗さのある少しハッとする酸味。
最後はスーッとまとまり素材のアクセントで〆る。
一見甘くて飲みやすいのですが、アルコール分は15度あるため飲み過ぎに注意しないと!と思います。
冷えていた方がジューシーさを楽しめます(室温が高いためすぐ温くなってしまうため冷やしながら飲んでいます)
「ゆきの美人は食中酒でしょ!」
ということで買ってきた焼き鳥と共にいただきたいと思います。
まずはサラダを食べてから飲んでみると、(味付けはオリーブオイルに醤油)お酒の甘みに華が出て美味しいです。
ジュワっとさがあり、後口に感じていた稲っぽさがどこかへ行きました。
甘みと酸味を楽しめます。
焼き鳥(塩)を食べてから飲んでみると、スッキリさがUPしながらもやわらかさのある酸味を楽しめます。
焼き鳥(タレ)を食べてから飲んでみると、タレの甘みに酸味が合う!キレイな酸で楽しめます。
スルーっとスッキリ。
料理と一緒に飲むのも美味しいのですが、中休み的に飲んだ時の味わいもめちゃうまです。
あとやはり、しっかりと冷やして飲むのが美味しいと思いました。
じゃがまるポテトは、今日のご飯の中で1番スッキリさを感じました。
1日では飲み切らずに、残りを冷蔵庫で保管していました。
味わいの変化はあったのでしょうか?
香ってみると、スーッとしたメロン系。
今日はスッキリとみずみずしさが多めに感じます。
飲んでみると、甘み!
「おいしい~!」
と思ってからの酸味がアタックしてきます。
初日よりも2日目の今日の方が、酸味に強さを感じます。
入りの甘みはやわらかさよりも「甘酸ジュワっとさ」が印象的です。
昨日よりも明らかにお酒が「開花」したように感じます。
フレッシュメロン?な入りの甘みからの、キレイでハッとする刺激的な酸味が広がります。
なんて言ったらいいのか、酸味が光るお酒になっています。
昨日感じた後口の稲っぽさも今日は気にならず、表情が全く異なる印象で面白いと思いました。
トウモロコシを食べてから飲んでみると、とうもろこしの甘みにお酒の甘みが引っ張り出されてからのスッキリ。
とうもろこしの甘みがお酒の甘みと合って美味しいです。
ささみのピカタは、甘みと酸味に落ち着きが出てキレイさもしっかりと分かりながらいただけるため美味しいです。
え、ピカタ合います。美味しい組み合わせです。
今日はジュワっとさが出てガス感も楽しめる2日目です。
え~?なんだろう。
「昨日は寝てて、今日起きた」とか「高校デビュー」とか、それ位の変化があります。
技巧 001 一穂積、とっても美味しいお酒です。
そんなこんなで飲み終わってしまいました。
美味しかったです!
ごちそうさまでした。
わたしは飲んでみて「このお酒はもう一回飲みたい。もう一本買おうかな…」と現在も購入を悩んでいる日本酒ですが合わない人もいるかと思います。
それは、
です。
基本的にスッキリとするお酒かと思います。
ですが、みずみずしさのある甘みや角のない酸味、2日目の変貌っぷりなどは飲んでいてとても面白くとても美味しいお酒でした。
これからゆきの美人を買ってみようと思っている…という人にはとてもお勧めできる1本だと思います。
7月に発売されたお酒なので、まだ購入のチャンスはあります!
気になったあなたはぜひチェックしてみてください。
ゆきの美人の日本酒は全国にある取り扱いのある「特約店さん」での購入が必要となります。
ですが公式サイトがなく、特約店一覧といったものも用意がありません。
そのためGoogleやYahoo!などで
ゆきの美人 特約店
ゆきの美人 買える店
といったキーワード検索をするとヒットさせることができます。
インターネット販売を行っている特約店さんは下記のページに記載していますので参考にしてみてください。
\ゆきの美人を買えるお店【まとめ】/
その中で、7月25日現在も「技巧 001 一穂積」の在庫がある酒販店さんは下記になります。
在庫が少ないお店もありますので、気になったあなたはぜひチェックをしてみてください。
品目 :日本酒(純米吟醸酒)
内容量 :720ml
アルコール分:15度
原材料名 :米(国産)、米麹(国産米)
精米歩合 :55%
仕込み水 :太平山麓の湧き水
原料米名 :秋田県産 一穂積100%使用
使用酵母 :AK-1
日本酒度 :-3
製造者 :秋田醸造株式会社/秋田県秋田市楢山登町5-2
価格 :1,870円(税込)
公式サイト :なし
Twitter :https://twitter.com/yukino_bijin
まだまだ飲んだことのない種類が多いゆきの美人さん。
本来、わたしは「辛口」のお酒は苦手ですが技巧はとても面白く美味しかったですし、他の種類も飲んでみたいなぁと思っています。
日本酒度「+16」の6号酵母 超辛口…こちらもとても気になっております。
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