日本酒には出会いがある。
いつも飲んでいる日本酒。運よく買えたスペシャルな日本酒。たまたま買ってみたら好みだった日本酒…。
ここでは、唎酒師のわたしが出会った「本日の1本」を紹介します。
本日の1本は、奈良県御所市にある「油長酒造株式会社」さんの醸す、「風の森 ALPHA 夏の夜空」(かぜのもりアルファなつのよぞら)です。
油長酒造(ゆうちょうしゅぞう)さんの醸す日本酒には「風の森」と「鷹長(たかちょう)」という2つの銘柄があります。
鷹長は、奈良酒ならではの「菩提酛造り」という技法で、奈良酒の伝統と技術を人々に伝える銘柄。
風の森は、現在の蔵元となる十三代目・山本 長兵衛(やまもとちょうべえ)さんのお父様が生み出した銘柄で、1998年に発売をスタートしました。
名前は御所市内にあり、油長酒造さんの蔵から車で15分ほどにある「風の森峠」に由来しています。
という想いから始まりました。
現在では、奈良酒の伝統を現代の技術を用いることで改変し「前衛」を志す日本酒として風の森ブランドが展開されています。
風の森の1番の特徴は「無濾過無加水生酒」(むろかむかすいなまげんしゅ)であるということです。
非加熱にこだわったそのお酒は、味わいが少しずつ変化をしていきます。
開けたて~2・3日後、飲み切るまで…その味わいの変化を「一期一会の味わい」として楽しんで欲しいという想いと、生酒の「液体の立体感や質感」も愉しむことができます。
そして、他の酒蔵さんの日本酒とは明らかに違うモノがあります。
それが「硬度250mg/L前後」となる「超硬水」を使用して醸している日本酒という点です。
通常、日本酒造りには「軟水」(硬度30~60くらい)のお水が用いられます。
軟水を使用すると、やわらかくまろやかな口当たりに仕上がる傾向があり、日本人が飲みなれている日本酒を醸すことができるためです。
硬水の場合は、キレや濃厚辛口といった味わいに仕上がりやすくなります。
油長酒造さんでは、灘の宮水(男酒)と呼ばれる硬度100前後よりももっと高い「硬度250前後」の超硬水を仕込み水として使用しています。
これはヨーロッパで飲まれている水くらいの硬度で、コンビニなどで販売されているエビアンよりも少し軟らかい(低い)くらいのイメージになります。
超硬水で醸される風の森は、ミネラル豊富でマグネシウムがたくさん含まれているので
といった特徴を活かし「大人のラムネ」と呼ばれるような、新鮮なガス感が特徴の濃厚な生酒に仕上がっています。
今回いただいた風の森はALPHA(アルファ)というシリーズでラベルの裏には
従来の風の森の枠を超えて目標を定め、独創的な技術で日本酒の可能性を追求します。
と記載があり、「次の日本酒の可能性を求めるブランド」です。
現在までに、ALPHA TYPE1~TYPE7までが発売となっており、夏の夜空はアルコール分10%「ALPHA TYPE1」のお酒に分類されています。
それぞれの違いは下記の通りです。
そして、2021年10月8日より新しく「ALPHA TYPE8 大地の力」が初お目見えとなりました。
通常の風の森シリーズとは異なる味わいを愉しめるのが「ALPHAシリーズ」となります。
夏の夜空は2021年で「5年目」の発売となる、夏の季節限定の日本酒です。
2021年は6月10日ごろより酒販店さんの店頭に並びました。
アルコール度数は昨年の12%よりもさらに低く「10%」でリリースされ今までにない「みずみずしさ・充実感」を追求しています。
わたしは「夏の夜空」を飲むのは初めて!
どんな味わいなのかワクワクしながら開栓すると、ガス圧で王冠が浮いてきていました。
栓が飛ぶ前に急いで開けると「ボーン」と小さめの音が鳴ります。
精米歩合65%の純米酒とのことで、リーデルの純米グラスでいただきたいと思います。
果物の香りがします。
これは梨?
和梨っぽい香りです。
ジュワジュワっとガス感が少しして去っていきます。
わ、美味しい。
すごく飲みやすいです。
これはジュースかな?
思わずもうひと口!と飲んでしまいます。
梨ジュースっぽい感じで、柑橘っぽさも少しあります。
とっても美味しいです。
後口はさっぱりとした酸味感。
甘さがすーーーっと去ってゆきます。
飲む度に、ジュワリとガス感が口の中を刺激するのが心地よいです。
甘みがとっても可愛い。
軽やかでフレッシュ!ラムネっぽさもあります。
さわやかで、冷たいのがおいしいです。
今日は無印良品のチキンの大盛カレーと一緒にいただきたいと思います。
カレーを食べた後に飲んでみると…
合う!
酸味が美味しく引き出されます。
甘みもきゅーっとして(語彙力…)後口が爽やかなのでとっても美味しいです。
うーん、本当に後口さわやか!
カレーのスパイスと合う感じ…というより、これ本当にお酒ですか?
日本酒じゃない。
ジュース、ラムネ感。
おいしいです。
わが家の夏の定番、ねばねばサラダ。
納豆も入っていますが、サラダと一緒だとさっぱり。
ジュワっと感がUPして美味しいです。
夏の夜空は納豆が悪さをしないお酒ですね。(納豆に合わない日本酒もあります!)
というか、このお酒本当においしいです。
スルスル飲めちゃう系で、一瞬で無くなっちゃいます。
純米酒なのに重たくなくて、とってもきれい。
ジュワっとガス感からのさっぱり。
爽やかさが半端ないです。
酸味というよりもラムネっぽくて飲みやす過ぎです。
そんなこんなで、
四合瓶1本
空いちゃいました。
味わいの変化を楽しむなら「もう1本」必要だったみたいです。
おいしかったよ~。
ごちそうさまでした♪
わたしは飲んでみて「飲みやす過ぎてもう1本飲みたい!」と思った味わいの日本酒でしたが合わない人も居るかと思います。
それは
です。
ですが、「日本酒ってこんなことができるんだよ!」という日本酒の可能性やその味わいを愉しみたい人にはピッタリのお酒です。
実はわたしもまだまだ、風の森のお酒を飲んだことがありません。
風の森を飲んだのはこちらの夏の夜空で3本目。
ですが、知れば知るほど「面白いなぁ」と思っている銘柄で、日本酒セラーには6本ほど飲んでいない風の森が…あります。
種類が多いので、少しずつ飲んで記事にしていきたいと思っています。
ちなみに、油長酒造さんは一般社団法人 J.S.P ジャパン・サケ・ショウチュウ・プラットフォームに加盟している酒蔵さんです。
先日、JSPのYouTubeライブに出演&日本酒を販売されていました。
この動画を見ると、より詳しく油長酒造さんを知ることができますので、気になったあなたはぜひご覧ください。
JSP UTAGE【風の森】ライブ 9月16日(木)20時~
https://www.youtube.com/watch?v=zKFMX8Gj7ss
油長酒造さんでは、蔵元によるお酒の直接販売は行っていません。
公式サイトには、お問い合わせフォーム・お電話にてお問い合わせくださいと記載がありました。
お近くの取扱店を紹介してもらえます。
また、JSPの公式サイトに一部の特約店さんが掲載されています。
わたしが初めて風の森を購入したのは「IMADEYA(いまでや)銀座店」です。
数種類並んでいて「風の森を飲むのは初めてですが、どれから飲んだらいいですか?」と聞いた思い出があります。
その時の回答は【風の森 秋津穂 657】でした。
IMADEYAさんはオンラインショップもあります。
夏の夜空は「夏限定酒」なので現在は購入できませんが、10月7日現在、新発売の「風の森 ALPHA8 大地の力」などを注文することができます。
気になったあなたは参考にしてみてください。
特定名称 :純米酒
原材料名 :米(国産)米こうじ(国産米)
原料米 :契約栽培米 奈良県産 秋津穂100%使用
精米歩合 :65%
アルコール分:10%
仕込水 :超硬水 金剛葛城山系深層地下水 硬度250mg/L前後
内容量 :720ml
価格 :1,430円(税込)
製造者 :油長酒造株式会社
製造所 :奈良県御所市1160
公式サイト :https://www.yucho-sake.jp/
Instagram :https://www.instagram.com/kazenomori1719/
夏の夜空のラベルには、夏の星座の「さそり座」が描かれアンタレスも赤く輝いています。
わたしは10月生まれの「さそり座」なのでなんだか嬉しくなりました。
また、油長酒造さんでは新たに「水端(みずはな)」という、奈良に伝わる古典技術を探求するブランドがスタートしました。
この第1本目となるお酒を購入しましたので、しっかり味わってからまた記事にしていきたいと思います。