日本酒には出会いがある。
いつも飲んでいる日本酒。運よく買えたスペシャルな日本酒。たまたま買ってみたら好みだった日本酒…。
ここでは、唎酒師のわたしが出会った「本日の1本」を紹介します。
本日の1本は、岐阜県揖斐郡大野町にある「杉原酒造株式会社」さんの醸す「WHITE 射美」(ホワイトいび)です。
一見、白すぎて酒販店さんに置いてあっても見逃してしまいそうなホワイトラベルの射美。
ホワイト射美は、そのラベルから「白射美」(しろいび)という愛称でも親しまれ日本酒愛好家から「飲みたい1本」としても選ばれている日本酒です。
毎年「ホワイトデー」前後に発売されるため、3/14が近づいてきたら要チェックな1本となります。
射美(いび)のお酒の最大の特徴は、地元農家さんと協力して開発した酒米「揖斐の誉」(いびのほまれ)を使用して醸されていることです。
揖斐の誉は、杉原酒造さんオリジナルブランドの酒米。
酒米の王様「山田錦」と愛知県で生まれた酒米「若水(わかみず)」を交配し、地元「大野町」誕生した酒米で2021年に岐阜県の酒造好適米として認定されました。
5代目蔵元・杉原慶樹(すぎはらよしき)さんの地元産にこだわる熱意から生まれた酒米で「この酒米を使ってうまい酒をつくるのが自分の仕事」として射美を醸されています。
WHITE 射美も、もちろん揖斐の誉100%にて醸された日本酒となります。
他との違いは、黄麹にプラスしその一部に「白麹」(しろこうじ)を使用していることです。
通常日本酒は「黄麹」(きこうじ)という麹菌の力を借りて米のデンプンを糖類に変えたり、酵母の栄養源や旨味成分などを供給しています。
「白麹」とは通常焼酎を醸す際に使用される麹菌で「クエン酸を大量に生成」する特徴があります。
そのため、日本酒造りに白麹を使うことで「クエン酸の酸っぱい味わい」をプラスすることができます。
WHITE 射美に使用される白麹は一部で、他の酒蔵さんの白麹の日本酒とは異なり「あまり多くない」のかもしれません。
ラベルの裏には下記のように記載がありました。
日本酒は通常、黄麹を使用します。
『WHITE 射美』は、その一部に白麹を使用し、独特の風味を少し加えようと試みています。
昨年の『WHITE 射美』から、白麹と気麹が創り出す風味をもう少し感じて欲しいと、白麹量を増やしました。
飲みやすい食中酒になればと祈っています。
麹が創り出す風味を楽しみながら、あなたの大切な人と味わって頂ければ嬉しいです。
ほんの少しであっても、普段より良い日になりますように!
For lovely eyes.seek out the good in people.
通常、射美のラベルの裏には蔵元杜氏である杉原慶樹さんの日記として、毎年異なる内容の日常の出来事などが記載されています。
WHITE 射美に関しては、射美に加えている白麹について書かれています。
先に使用されている白麹の量は「あまり多くない」と記載しましたが、年々調節を行っていることが分かりますね。
ちなみに「For lovely eyes.seek out the good in people.」という言葉。
世界的女優オードリー・ヘップバーンが愛した言葉としても有名な詩の一文で
という意味があります。
通常の日本酒にはない風味を探しながら、このお酒を楽しんでほしいという意味がこもっているのかもしれません。
明治25年創業の杉原酒造さんは、製造量100石以下(一升瓶換算で10,000本以下)と少量生産の酒蔵さんです。
その年により製造量が異なり、2BY(令和2酒造年度)はわずか60石の生産でした。
そのため自他ともに「日本一小さな酒蔵」として有名で、2022年には創業130年の老舗酒蔵さんでもあります。
現在、射美を醸している5代目蔵元・杉原慶樹(すぎはらよしき)さん。
元は水産会社で働かれていましたが2002年に廃業寸前だった酒蔵を立て直すべく蔵に戻りました。
それからは親子2人で酒造りをされていましたが、BY3(令和3酒造年度)より4代目で父親である杉原庄司さんはメインの酒造りから外れています。
現在は、学生のアルバイト2名とパートさん2名と共に「主役は飲む人」という思いのもとで地酒を造り続けています。
手仕事を大切に醸される日本酒のため、各特約店さんでの入荷本数も少なく販売後は即売り切れ!と入手困難なお酒となっています。
2022年は4月に発売された「Barrel 射美」(バレル いび)が今期ラストのお酒となりました。
ちなみにBarrel 射美はワイン樽に寝かせて熟成させたお酒で、実に4年ぶり発売となったようです。
射美には定番商品と、いつ発売になるか分からない限定商品とがありますので「限定」を見掛けたら即買いをしておきたい1本になります。
定番・限定・限定期間定番などの種類は杉原酒造さんの公式サイトに紹介がありましたので、気になったあなたはチェックしてみてください。
杉原酒造【PRODUCT IBI】
https://www.sugiharasake.jp/product/
射美の日本酒を飲むのは人生で「3本目」となります。
白射美の前に「吟撰 射美」と「特別純米酒 射美」を飲みましたが、わたしは吟撰 射美を飲んだ時のその衝撃的な味わいがとても好みでした。
その時の飲み比べの記事は下記に書いています。
\射美の吟撰&特純飲み比べはこちら/
射美 WHITEはどんな味わいの日本酒だったのでしょうか?
わたしは白麹を使用した日本酒が大好きなため、ウキウキで開栓してみました。
早速、飲んでみた感想を書いてゆきたいと思います。
グラスに注いでいる時からフワフワと香ります。
甘くてパイナップルのような香りがします。
鼻を近付けると、やはりパイン。
パインアメのように甘い。
酸味より甘みが香ります。
ジュワっとガス感が少々。
酸味がふわりと甘さにアクセントを加えます。
甘みはやはり射美!
強い甘みですが酸があるので爽やかに飲めます。
ですが甘みは濃ゆくて、しっかりと日本酒らしいアルコールの強さも感じます。
甘みぎゅっと、酸味ふわっ。
後口はさっぱり感もあります。
鼻にはお米の素材感が残ります。
他の酒蔵さんの白麹の日本酒よりも「白麹の割り合い」が少なく感じます。
改めて飲むと、パインで後口にスッキリ・キレさ有り。
途中に苦味もあります。
甘みに関してはしっかりと射美らしさがあります。
酸味はすっぱさがありつつの苦味。
すっぱさは強すぎないのですが、とっても濃ゆいお酒なので1度に沢山は飲めない印象です。
ボトルの色が濃かったので分かりませんでしたが「うっすらにごり」があったようです。
本当に若干にごりました。
口に含むと、酸味おだやか甘みジューシーでパイン感。
後口スッキリさ有。
…と最初よりもにごりが混ざった方が味わいのバランスが取れたように感じます。
今日はRF1の生春巻きとサラダ、揚げ物です!
サラダを食べて飲んでみると、白醤油ドレッシングと白射美の酸味が合います。
生春巻きは酸味UP!うん、合う。
美味しく食べれますね。
カキフライは、タルタルにとっても合います。
酸味がUPして美味しく、甘みもまろやかになって今日の献立の中で1番合いました。
牡蠣のミルキーさにも甘さがマッチして、穏やかな酸味がとても気持ちよくお酒を飲めるし、箸が進みました。
寝かせた味わいも知りたかったので、1日では飲み切らずに冷蔵庫にて保管をしていました。
味わいに変化はあったのでしょうか?
早速香ってみると、落ち着いたパインの香りです。
甘みと少しの酸味が香ります。
飲んでみると、昨日より甘い!
強さのある甘みではなく、酸味と調和した穏やかで丁度良い甘さです。
開栓初日より飲みやすくなっています。
後口に向けてスルリとさっぱり感がありつつ、穏やかにフィニッシュしました。
美味しいです。
初日よりも穏やかで落ち着きがあり、やわらかくも感じます。
今日は、きのこと白菜の生姜スープと胸肉の梅大葉焼きです。
スープは甘みがUPしてめちゃ美味しいです。
かなり合います。
胸肉は、甘みが引き出されつつ香りもUPして、それがとっても美味しいです。
梅に甘みが引き出されるのでは?
甘さが本当に美味しくて、甘み&パイン。
スープも胸肉もどちらも美味しいのですが、梅が大成功!
甘さがめちゃめちゃ美味しくなるので、
\う ま す ぎ る !/
と心が躍りました(笑)
そんなこんなで、昨日よりも美味しく飲むことができました。
ごちそうさまでした!
わたしは飲んでみて「射美の新たな一面も知れたのかな?」と思った日本酒ですが合わない人も居るかと思います。
それは
です。
まず、わたしが白射美を飲んで思ったのが「思っていた白麹の日本酒とは違う」ということでした。
今まで飲んできた白麹の日本酒はどれも、その特徴であるクエン酸をバチバチに楽しむこと出来ましたがホワイト白射美は違いました。
黄麹の射美らしさを立てつつ、少しの白麹で味わいに変化をつけているような印象のお酒でした。
そのため、新政酒造さんの「亜麻猫」や酒井酒造さんの「五橋 ride? WHITE」を想像して飲むと物足りないかもしれません。
ですが「白麹の日本酒を飲むのは初めて!」という人には問題なく飲んでいただきたい1本となります。
射美の最初の1本として飲もうとしている人に関しては、射美の最初の1本はぜひ「吟撰 射美」を飲んでいただきたいと個人的に思っているからです。
ですが、白射美は毎年造りをアップデートしている為また来年は違う味わいを楽しめるかもしれません。
「見掛けたら買いの1本」として間違いのないお酒ですので、ぜひ自分の舌で味わってみてくださいね。
杉原酒造さんの射美シリーズは、「特約店」さんのみで販売されている限定流通の日本酒となります。
蔵に行って購入することはできません。
詳しくは下記のページに記載しています。
\射美(いび)が買えるお店・入荷時期は?/
今回購入した「ホワイト射美」に関しては、日本酒好きの間では「日本酒の聖地」として有名な小山商店さんで購入することができました。
それも、東京にある特約店さんの中では「1番本数が入荷する」という特徴があるためです。
わたしの住んでいる地域には特約店さんが無かったため、杉原酒造さんに問い合わせすることで教えていただけました。
「近くの特約店が分からない!」
「どこで買えばいいの?」
という方は「○○県に住んでいるのですが…」と、問い合わせてみるとよいかもしれません。
品目 :清酒
原材料名 :米・米麴(一部白麹)
精米歩合 :60%
アルコール分:16%
原料米 :国産米100%使用
酒米 :揖斐の誉(いびのほまれ)
内容量 :720ml
価格 :2,800円(税込み)
製造者 :杉原酒造株式会社/岐阜県揖斐郡大野町下磯1番地
公式サイト :https://www.sugiharasake.jp/
Facebook :https://www.facebook.com/sugiharasake/
BY3(令和3酒造年度)では、射美の日本酒を「3本」味わうことができました。
実際に購入をしてみて、他の射美も飲んでみたいけど「吟撰 射美」のインパクトに勝てる射美はあるのかしら?とも思っています。
入手困難な射美の中でも「にごり」はさらにレア酒のようですので、飲食店さんなどでもし見掛けた際はぜひ飲んでみたいと思います。