日本酒には出会いがある。
いつも飲んでいる日本酒。運よく買えたスペシャルな日本酒。たまたま買ってみたら好みだった日本酒…。
ここでは、唎酒師のわたしが出会った「本日の1本」を紹介します。
本日の1本は、千葉県印旛郡酒々井町(いんばぐんしすいまち)にある「株式会社飯沼本家」さんの醸す「甲子 秋あがり」(きのえね あきあがり)です。
創業300年という歴史のある、千葉県酒々井町の酒蔵「飯沼本家」(いいぬまほんけ)さん。
「甲子(きのえね)秋あがり」は2021年よりラベルを一新した飯沼本家さんの醸す「秋酒」です。
元々のラベルは花札をイメージした「THE・日本酒」といった見た目でしたが、イチョウの葉っぱがはらはらと舞うお洒落なラベルへと変更されました。
甲子の日本酒と言えば「フレッシュ」な酒質が特徴となりますが、その中に「熟成」という要素を絡めたのがこちらの「秋あがり」になります。
とってもお洒落なラベルで、夏から秋へと向かう季節にピッタリ!
ついつい手を伸ばしたくなってしまう見た目となっていますよね。
発売は毎年8月の末頃よりスタートし、2022年の今年は「8月24日」ごろより取り扱い販売店さんの店頭に並びました。
再入荷などあるため、10月の中頃くらいまでは購入できるお酒となります。
こちらのラベルは「開栓後の味わいの変化」を表現したいという思いが込められて作成されました。
イチョウのシールがひらひらと舞い落ちるような形で「1本の瓶の中でも変化がある」ことを表現されているとのことでした。
そう言われてみると、ボトルの中身のお酒が減るごとに味わいが変わっていく様がイメージできて、なんだかゆっくりと時間を掛けて楽しみたくなる1本ですよね。
9月がそこまでやって来ると、さまざまな酒蔵さんより「秋上がり」や「ひやおろし」といった日本酒が発売されます。
この2つはどちらも「秋酒」に分類され日本酒としては定番化されたお酒となりますが、意味合いは大体同じです。
冬に仕込んだ新酒を火入れ殺菌し、ひと夏越して秋口に出荷する日本酒のことで、新酒の荒さの残る生酒よりも「角が取れてまろやかに」「飲み頃になった」日本酒になります。
どちらの言葉を使うかは酒蔵さん次第になります。
9月~11月頃の季節限定で発売される日本酒となりますので、新酒の季節がやってくる前に味の乗った日本酒を飲みたい人には最適なお酒となります。
こちらの秋あがりは、精米歩合58%の「純米吟醸酒」です。
原料米は通常の甲子(きのえね)と同じ、麹米が山田錦・掛米に五百万石という酒米を使用して醸されています。
甲子はそのフルーティーで華やかな香りが特徴ですが、秋あがりのお酒にも
と2種類の酵母を使用し醸すことで、フルーティーで華やかな甲子らしい秋上がりとなりました。
きょうかい1801号という、日本醸造協会より頒布されている酵母で下記のような特徴があります。
※カプロン酸エチルとは、リンゴやパイナップルのような香りに例えられます。
こちらも、きょうかい901号という「きょうかい酵母」になります。
といった特徴があります。
この2つの酵母のブレンドなどにより、他の酒蔵さんの「秋上がり」とは異なる日本酒が完成しました。
それは、
といったもので、まさに「甲子(きのえね)」らしさが表現された日本酒となっています。
また、定番の甲子 純米吟醸との違いは、901号というクラシカルな酵母を使うことで酸味が強くお酒の輪郭がはっきりとしている点です。
「ひやおろし特有の熟成された味わいが苦手!」
という人や、秋あがりを飲んだことの無い人には入りやすい(飲みやすい)お酒となっています。
イチョウラベルのきのえね秋あがりを初めて見た時、
「なんじゃこの可愛いラベルは~!!!」
っと思わず手に取ったのがこのお酒を飲むきっかけとなりました。
え?可愛くないですか?
これまで、春の甲子春酒かんばし、夏のきのえねアップルがやはり可愛くてジャケ買いをしてきましたが甲子の季節限定酒の中で1番可愛いのでは?
実は「ひやおろし」や「秋上がり」といった秋の季節限定の日本酒は、これまであまり飲んだことがなかったわたしでした。
ですが、季節を感じれる1本として良い出逢いになったのでは?と思います。
果たしてどんな味わいの日本酒だったのか?
早速、開栓していきたいと思います。
華やかな香りがします。
これは甲子のお酒の香りです。
例えるなら、甘さのあるパイナップルな香りがします。
甘み。
厚みを感じる熟した甘さがあり「これから甘みが広がっていくのかな?」と思ったところでスッと去ってゆきました。
やさしい酸味感とお米の甘さ、まろやかさがあり、ほのかに余韻が残ります。
強すぎずに柔らかく残るのが良い感じ。
夏の暑さが残る時期に飲むのに最適な味わいのお酒だなぁと思いました。
甘みが強すぎず、重たすぎないのが良いですね。
ひやおろしだけど、フレッシュさも残っているというのがよく分かります。
そして、香りはふわりと華やかです。
なぜか写真が無いのですが、鯵(あじ)のお鮨と共にいただきました。
醤油にとっても合うお酒で、鯵を食べた後に飲むと甘みがぶわぁぁあと口の中で広がりました。
美味しい!
飯沼本家さんのInstagramで杜氏の川口幸一さんは
などと相性が良いと紹介されていました。
今回は試さなかったため、次回購入した際は秋の旬の食材と合わせてみるのも良いな!と思いました。
とっても美味しかったです。
ごちそうさまでした♪
わたしは甲子の日本酒が元々好きなのですが、秋あがりを飲んでみて「好きな味わい!これはまた来年も飲みたい!」と思った秋酒でした。
ですが合わない人も居るかと思います。
それは
です。
実はわたしも「あ、ひやおろし苦手かも…」と思った日本酒がありました。
これまでに「ひやおろし」と謳った日本酒を飲んだことが無かったというのもありますが、新酒、春酒、夏酒と飲んできて秋酒は一番苦手かもと思ったのです。
ですが、こちらの「甲子 秋あがり」はひやおろしという熟成された日本酒の中では若い、フレッシュさの残る味わいです。
そのため、ひやおろしビギナーの人や生酒が好きな人でも違和感を感じることなく「秋酒」を楽しむことが出来るかと思います。
初めてのひやおろし(秋あがり)にオススメしたい1本です。
見た目のデザインも可愛いので女性にもピッタリ!秋の味覚と共にぜひ愉しんでいただきたい今の時期限定のお酒です。
飯沼本家さんの醸す甲子シリーズは、蔵での直接販売も行っています。
などで購入することが可能です。
ですが、オンラインストアに関しては8月30日現在、甲子 秋あがりの掲載がありませんでした。
そのため、全国の取り扱い店さんでの購入が必要です。
公式サイトに特約店一覧のページなどの用意は無いため、お問い合わせページより連絡をすることで近くの取扱店さんを紹介してもらうことができます。
ネット通販を行っている取扱店さんもありますので、
【甲子 秋あがり】
といったキーワードでGoogleやYahoo!検索をするとヒットさせることができます。
例えば下記の酒販店さんになります。
甲子の秋酒は他にも「完熟 きのえねアップル」というリンゴ酸を大量生成する酵母を使用した夏酒「きのえねアップル」の火入れバージョンがあります。
気になったあなたはぜひご一緒にチェックしてみてください。
仕様 :純米吟醸
原材料名 :米(国産)米麴(国産米)
原料米 :麹米:山田錦/掛米:五百万石
精米歩合 :58%
アルコール分:15%
日本酒度 :+0.2
使用酵母 :きょうかい1801号・901号
内容量 :720ml
価格 :1,980円(税込み)
製造者 :株式会社 飯沼本家
所在地 :千葉県印旛郡酒々井町馬橋106
公式サイト :https://www.iinumahonke.co.jp/
Instagram :https://www.instagram.com/kinoene_sake/
秋を思わせるイチョウラベルの「甲子 秋あがり」。
ひやおろしのお酒ですが「冷酒」として飲むのがオススメの1本です。
しっかりと酸味も立っていて揚げ物などの油っこい料理も、後味をきれいにしてくれるため相性抜群です。
Instagramでは、蔵元直営ショップ・きのえねまがり家のアカウントも開設されましたのでそちらも一緒にフォローしておくと便利です。
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