日本酒には出会いがある。
いつも飲んでいる日本酒。運よく買えたスペシャルな日本酒。たまたま買ってみたら好みだった日本酒…。
ここでは、唎酒師のわたしが出会った「本日の1本」を紹介します。
本日の1本は、秋田県秋田市にある「新政酒造」さんが醸すColors(カラーズ)シリーズの日本酒「水墨(アッシュ)2021」です。
新政酒造さんの日本酒で何が好き?と聞かれた際「No.6」(ナンバーシックス)と答える人が多いのではないでしょうか。
ボトルに「6」という数字がデザインされた一見日本酒には見えないお洒落なNo.6は、新政酒造さんの醸す日本酒で唯一の定番「生酒」のお酒となっています。
生酒とは、名前の通り火入殺菌処理をしていない「生のままのお酒」で出来立てフレッシュな味わいを存分に楽しむことができます。
それとは別に「Colors」(カラーズ)というブランドがあります。
こちらは1度「火入」をしたお酒で、秋田県の酒米の個性を存分に楽しめるようにと火入処理をすることでその特徴を固定したシリーズです。
これまでColorsのお酒は下記の4種類がありました。
ですが、2020ヴィンテージで青いボトルの「ラピスラズリ」という美山錦を使用した日本酒は終了となりました。
\終売するラピス 2020/
そして、ラストラピス 2021が新政酒造さんで美山錦を使用して醸された最後のラピスの日本酒となりイベントなどでも振舞われました。
\ラストラピス 2021/
ちなみに、カラーズの色は新政酒造8代目蔵元・佐藤祐輔さんが「飲んだ時のそのお米の印象」から付けられています。
ラピス終売に伴い、2種類の酒米を使用したお酒が仲間入りしました。
いずれも秋田県で栽培された酒米を使用しています。
陸羽132号に関しては、新政酒造さんの自社田のある秋田市河辺鵜養(うやしない)地区で栽培された無農薬米のものが使用されています。
こちらの2種類はまだまだ酒米の栽培量が安定していないため、カラーズシリーズの中でも「希少」なお酒となっています。
そのため、通常時に特約店さんで購入できるColorsは「ヴィリジアン」「コスモス」「エクリュ」のいずれかになるかと思います。
アッシュ(Ash)は「亀の尾」という酒米の個性を楽しめるお酒です。
新政酒造さんでは「秋田県産」にこだわり使用する酒米も秋田県で生まれたものへと回帰してきました。
ですがこちらの亀の尾、最初に酒米として登録されたのは「山形県」となります。
アッシュの商品説明には下記のように記載されていました。
通称「アッシュ」
明治時代に山形庄内地区で選抜された「亀の尾」は、多くの飯米・酒米の親として名高い存在である。
東日本全土で盛んに栽培され、6号酵母誕生時にも当蔵においても頻繁に使われていた。
東日本の稲作における遺伝的な祖であり、まさに伝説の米とも言える。「アッシュ」は生酛を増量するなど、様々な技術を駆使して、この「亀の尾」のポテンシャルを最大限に引き出そうとする作品である。
存在しうる全酒米の中でも、もっとも硬質な酒米のひとつであるため、長期の冷蔵保管により味わいがより深まる典型的なスロースターターの作品といえる。
引用:新政酒造公式HP
つまり、亀の尾は使用するべくして使用した酒米ということでしょうか。
6号酵母誕生時にも頻繁に使われていたというのが採用となったポイントになるのかな?と思いました。
新政酒造さんでは主に、秋田市河辺和田地区で栽培された亀の尾を使用しています。
アッシュがColorsのうちの1本として初めて登場したのが「2020ヴィンテージ」でした。
2020ヴィンテージとは「2020年に収穫した酒米を使用しているよ」ということです。
こちらの発売本数は極少量だったため、わたしは購入どころかお目に掛かることさえできませんでした。
今回購入できたのが「2021ヴィンテージ」の水墨(アッシュ)です。
アッシュ(水墨)2021には、2つのロットがこれまでに発売されました。
02から瓶が変わったのはフロスト瓶の場合、やはり紫外線の影響に対する不安があるため「真っ黒なボトル」へと変更になったのではと思います。
またロットとは、仕込みタンク(新政酒造さんの場合、仕込みの木桶)の違いになります。
そのため、ロットが違うと味わいが異なります。
これはどのカラーズのお酒に対しても言えることですので、今自分の手元にあるカラーズのロットはいくつなのか?確認してみると面白いかもしれません。
それぞれラベルの裏に記載された味わいは下記の通りです。
本ロットの味わい
バニラ、シリアル、生米といったミズナラ樽の由来の香ばしい香り。
味わいは非常に複雑の一言。
爽快な酸味、するどい酸味など酸を一つとっても多様な構成が伺える。
中盤にミズナラの印象があらわれるが、次第に木桶のテイストに置き換わり、再び酸主体の長い余韻へとつながる。
亀の尾マジックとでもいうべき作品。
本ロットの特徴
蜂蜜、青リンゴ、若い柑橘類、紫蘇や梅のニュアンス。
味わいは、キレの良い甘味に続いて、柑橘を思わせる酸味が続き、最後は亀の尾らしい一種独特な、アイソトニックな渋みを余韻として残す。
若いうちは荒さが目立つため、2~3年の冷蔵育成をおすすめする。
01ロットは長期保管(育成)に関しての案内はありませんでしたが、02ロットは直ぐに飲むのではなく寝かせることで美味しく育つようですね。
今回、01ロットのアッシュが市場へ出回った際に「美味しい」「とにかく美味しい」といった声が多く挙がっていました。
そのため「わたしも飲みたい…」と切に願いながら日々を過ごしていました。
本当に出逢えないんです。アッシュ。
そんな中、抱き合わせかつ、抽選販売を行っている特約店さんを発見!
とにかく申し込みをして、結果当選することで初アッシュを購入することができました。
果たしてどんな味わいだったのか?
見てゆきたいと思います。
いい香り!
柑橘系と木樽のスッキリさ。
そして梨?青りんご?のような甘みも香ります。
とってもジューシー!
うまっ!
果実感がありとっても濃ゆい!
柑橘系の…はっさくとかの甘みもありますがスッキリさもあります。
本当に柑橘を口に頬張ったみたい。
そして中盤からは木のニュアンスがスーッとやってきてまとめてくれます。
これはうまい!
亀の尾って力強くて特徴的な味わいのお米と思っていましたが、新政酒造さんが醸すとこんなに美味しくなるんだ…と思いました。
本当にビックリするほど美味しいです。
亀の尾に対する印象が全く変わりました。
口に含んだ時に、舌にジンワリとガス感が広がるのがまた美味しいです。
他のColorsのお酒よりも厚み?濃醇さがあります。深み?
ひと口飲む度に美味しくて、たっぷり感もあるため満足感がすごく高いです。
このお酒だけで楽しめるし、楽しみたい!
濃ゆさとたっぷり感が本当に良いです。すきだ!!
1日で飲み切るなんて\もったいない!/
ということで、残りは冷蔵庫にて保管をしていました。
味わいに変化はあったのでしょうか?
今日はグラスを、仙禽×ユナイテッドアローズのUAオニヤンマグラスに変えて飲みたいと思います。
こちらのグラスの方が香りの特徴をしっかりと捉えるができます。
香ってみると、このグラスだとメロンっぽい香りに感じます。
甘みジワッとスッキリさもあり。
まず柑橘さが一番にやって来ます。
そして厚みたっぷり、みずみずしさもあり、もう、本当、好きです。
おいしー!
昨日と同様に飲んでいて満足感があり、後口には甘みを残しつつ木桶のスッキリさによって爽やかさがあり余韻まで楽しめるお酒です。
今日はゴーヤチャンプルーと共にいただきたいと思います。
ゴーヤを食べてから飲んでみると、たっぷりと柑橘さありつつゴーヤの苦味と木桶のニュアンスが合わさりスッキリさもUPしました。
ですが、お酒の甘みがジンワリと残るので美味しいです。
飲む度にジワッとガス感があるのも良い!
飲む度美味しくて、ぎゅっと旨い…
そんなこんなでアッと言う間に飲み切ってしまいました。
え、あと10本くらい飲みたい…
とっても美味しかったです!
ごちそうさまでした。
新政酒造さんの日本酒は蔵での販売は行っていません。
そのため、取り扱いのある「特約店」さんでの購入が必要となります。
一部の特約店さんに関しては、下記のJ.S.P(ジャパンサケショウチュウプラットフォーム)のサイトにて確認が可能です。
また、直接蔵へ電話にて連絡することでお近くの特約酒販店さんを紹介してもらえます。
ですが新政酒造さんの日本酒は生産量が限られる「入手困難」なお酒です。
中でもColors(カラーズ)は比較的に購入しやすいお酒となりますが「アッシュ」「アース」はかなり購入出来ない部類のお酒になります。
そして、アース(産土)よりも買えないのがアッシュ(水墨)になります。
入荷時期は酒販店さんも不明なのが新政酒造さんの日本酒です。
「タイミングが合わないと買えない」
「買える種類のお酒が選べない」
というのは当たり前です。
そのため、
「その時に入荷していた種類から選択する」
という買い方になるのがほとんどかと思います。
もちろん、入荷していなければ買えないため「行ってみたけど買えなかった」ということは多くあります。
また、販売方法も特約店さんによって異なるため「まずは自分の足で行き、販売方法を聞いてみる」というのが1番かと思います。
わたしは、特約店さんのメルマガに登録し抽選に参加…ということをたま~にしています。
こういった購入方法もあるため、特約店さんの公式サイトなどをチェックしてみるのも良いかもしれません。
仕様 :生酛木桶純米
アルコール分 :13度(原酒)
原材料名 :米(秋田県産)米麴(秋田県産米)
精米歩合 :麹米45%・掛米45%
原料米名 :亀の尾100%使用(2021年収穫 秋田県産)
使用酵母 :きょうかい6号
発酵容器 :木桶(30・31号)
醸造年度 :令和3酒造年度(2021-2022)
内容量 :720ml
価格 :4,280円(税込)
使用瓶 :暁鐘(Morning Bell)フロスト
製造者 :新政酒造株式会社
所在地 :秋田県秋田市大町6丁目2-35
公式サイト :http://www.aramasa.jp/
Twitter :https://twitter.com/aramasayamayu
アッシュはColorsの中でも最高級酒になり、知らないで購入した人はその価格にちょっとビックリするかもしれません。
わたしは飲んでみて、これまで飲んだカラーズのお酒の中でも断トツで好きな味わいなので何本でも飲みたいです。
飲んでいて「うまい、うまい」と幸せ気分になれる味わいでした。
もちろん好みはあるかと思います。
また、02ロットはどんな味わいなのか?とても気になります。
出逢えたあなたはぜひ、楽しんでくださいね。
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