秋田県秋田市にある「新政酒造」さんが毎年恒例として醸している
の実験的かつ、玄人向けの日本酒。
その最終章となる第3弾(Part3)が、7月21日(水)より順次発売となりました。
今回の2本に関しては、
と新政酒造の社長・佐藤祐輔さんがコメントを残しています。
そんなラストを飾る頒布会の日本酒第3弾を、わが家でも無事にお迎えすることが出来ました。
その【7月分】となる、
を飲み比べてみました。
どんな日本酒だったのか…?
早速、見ていってみましょう♪
今年(2021年)の特別頒布会のテーマは「六号酵母の醸造における理論と実践」です。
第1弾は、
「Reports of the Resurrection Method」=清酒におけるレザレクション製法の報告
第2弾は、
「Reports of the Triple Fermentation Method」=鼎発酵(もろみにおける乳酸菌発酵)の報告
そしてラストとなる第3弾は、
「Reports of the Brewing Experiments using Various Kinds of Koji」=多様な麹菌を用いた醸造実験の報告
となっています。
今回は第1弾の【レザレクション】や第2弾の【鼎発酵(ていはっこう)】とは違い【多様な麹菌】なので少しは理解できそうな感じがありますよね。
ではどんな麹菌を採用したのか?
となっています。
え??クモノス…蜘蛛の巣カビ…?
あまり聞きなれない麹菌のためドキドキしますが、この2つのNo.6がどんな内容の日本酒となっているのか?見ていきたいと思います。
日本酒は微生物の力を借りて造られるお酒です。
日本酒製造に関わる主な微生物は「麹菌」「酵母」「乳酸菌」などが挙げられます。
アルコール発酵を行うためには「糖類」が必要となり、糖類に「酵母」を加えることでアルコール発酵が起こる条件を整えることができます。
分かりやすく言えば、ワインです。
原材料となる「ぶどう(糖類)」に酵母を加えアルコール発酵をさせたものが「ワイン」となります。
では日本酒の場合はどうでしょうか。
原材料は「お米」ですが、お米や麦といった穀物には糖類がほとんど含まれていません。
そのため、お米のとぎ汁になどに酵母を加えてもアルコール発酵を起こすことはできません。
そこで登場するのが「麹菌」です。
お米に多く含まれるデンプンは、ブドウ糖の集合体です。
デンプンに麹菌を加えることで、その糖化酵素の働きによりデンプンを糖類に変化させることが可能になるのです。
この麹菌はカビの一種で、「麹カビ」や「もやし」とも呼ばれます。
もやし…と聞いてピンと来た人もいるかもしれません。
漫画でアニメ化やドラマ化にもなった「もやしもん/作者・石川雅之」では、主人公が菌の見えるもやし屋の息子で「オリゼー」と呼ばれる麹菌と共にストーリーが繰り広げられます。
オリゼーとは正式名称、アスペルギルス・オリゼーのことで主に日本酒に使用される「黄麹菌」のことです。
通常、日本酒を醸す際は糖化力の強い「黄麹菌」を使用してお米のデンプンを糖に変えます。
その他に、主に泡盛を醸す際に使用され、糖化力が強くクエン酸を大量に生成する「黒麹菌」。
泡盛以外の焼酎を醸す際に使用され、黒麹菌の突然変異として発見された、糖化力が強くクエン酸を大量に生成する「白麹菌」。
主にこの3種類が日本酒や焼酎製造に使用されています。
そして「クモノスカビ」とは、中国の老酒(らおちゅう)紹興酒などに使用されるリゾープスと呼ばれる菌で、フマル酸やリンゴ酸を大量に生成する特徴があります。
ちなみに、
といったように、生成される酸味の強さに違いがあります。
白麹菌が、焼酎に使用される麹菌で「クエン酸」を大量に生成するということはお分かりいただけたかと思います。
現在では、この白麹菌を使用して「酸味系のお酒」として醸されている日本酒も多く見かけますよね。
新政さんで言えば
という銘柄のお酒に白麹が使用されています。
ですが新政のお酒に関しては、お酒の基となる「酒母(しゅぼ)」に白麹は使われず「掛麹(かけこうじ)」に使用していると記載がありました。
ちなみに掛麹とは、蒸米に麹菌を繁殖させたもので醪(もろみ)を造る際に掛米と水と一緒に3回に分けて投入される原料のことです。
そして亜麻猫の場合は、掛麹に使用される黄麹と白麹の割合が「約半分」とのこと。
K-typeは、使用している麹の「ほぼ全てが白麹」とのことなので、亜麻猫を飲んだ時の酸味感を考えると「かなりヤバイ酸っぱいお酒」というのが想像できます。
新政酒造の8代目蔵元、佐藤祐輔さんが<酸味の「核弾頭」>と表したのがようやく理解出来ました。
実は、白麹のみで日本酒を造るのはとても難易度が高くなります。
なぜなら、黄麹とは違い、白麹は蒸米を溶かす力が極端に弱いためです。
そのため、K-typeの作品説明には下記のように書かれていました。
焼酎造りでは30度以上という高めの温度をもって(米を)溶解させるが、清酒の吟醸造りのもろみの温度は常に10度以下だ。
そんな低温では白麹の力では蒸米が溶けない。
つまり白麹のみで酒を作るなどということは正気の沙汰ではないのだが、そこをなんとかしたのが本作品である。
…そこをなんとか(笑)
とても祐輔さんらしいですが、実際はどのように溶かしたのでしょうか?気になりますよね。
飲用方法については、飲用温度を上げたり、冷蔵で長期貯蔵をすると生酒なので甘みが増してバランスが取れるだろうけど
「酸味の表現が目的の酒なので、早めに飲んでいただきたい」
と記載されていました。
これぞ実験酒ですよね。
その酸味を充分に味わいたいと思います!
クモノスカビは、中国の紹興酒に使用される菌で、菌糸の様子がクモの巣を思わせることから命名されました。
C-TYPEのテーマは、開発の経緯に「紹興酒の製法から学ぶ」と記載があります。
紹興酒は餅麹という麹を使用しますが、それを米を原料として再現しようとしたのがこのC-typeのお酒となります。
またクモノスカビにもさまざまなタイプがあり、今回使用したのは激しく酸っぱい有機酸(フマル酸)を生成するタイプの「Rhizopus delemar」を用いたとのことでした。
日本酒造りの際は、種麹と呼ばれる麹菌の胞子を蒸米に振りかけて、種付けという作業をし麹菌を繁殖させます。
紹興酒の場合は、専用の部屋で麹造りをすると種麹を振りかけなくても「勝手に」天然の菌が生えてきます。
これが大きな違いとなりますが、クモノスカビは蒸した穀物には生えにくいということから今回新政さんでは洗って水を吸わせた「生米」を使い麹を製造しています。
「クモノスカビでの生米麹造りは常に暗中模索だ。」
と記載がある通り、まだまだ実験の途中の作品といったお酒が今回のNo.6 C-typeになります。
飲用方法の欄には下記のように記載がありました。
今回製造した生米の麹は予想より酸が出なかったものの、麹自体にはっきりと独特な味わいが感じられた。
この麹単体ではとうてい米が溶けないため、適度に黄麹と混ぜて醸造し、なんとか本作品が完成となった。
味わいとしては、予想よりも麹の酸度が低かったため甘口になってしまったが、由来不明のフローラルな香りがある。
味もどこか違うーーー。頒布会の最後を飾る奇想天外なお酒として、楽しんでいただきたいものである。
…う、うーん。
この説明を読むだけでは、なんだか飲んでみるのが怖いような感じもありますよね。
奇想天外なお酒、楽しんで飲みたいと思います…!
今回は、
の2パターンで味わってみました。
K-TypeもC-Typeも「なんだか酸っぱそうな酸味感の強い日本酒」というイメージがあったので、飲む前は少しドキドキしました。
実際はどうだったのでしょうか?
早速、開栓していきたいと思います。
こちらは、ほぼ白麹のみで醸されたお酒とのことで同じ白麹を使用して醸されている「亜麻猫(あまねこ)」より酸っぱいのかな?と思いながらいただきました。
柑橘の香りがします。
これは好きなやつ。美味しい香りです。
酸味とオレンジやみかんの香り。
さわやかで軽さのある香りです。
思ったよりも酸っぱくなくて、ぶわぁぁ~~~っと柑橘からの後口はめちゃくちゃさわやか!
お酢を飲んだ時みたいな爽やかさがあります。
後口には少し酸味の刺激が残ります。
でもほんのり甘さもあって美味しい。
酸味の刺激は、余韻のように長い間舌に残ります。
やはり、めちゃくちゃ爽やか!
柑橘&レモンといった感じで美味しいです。
舌にジワジワとおいしい酸味の刺激があるのがまた良い感じです。
お酢っぽい爽やかさ、あります。
夏だからか、この酸っぱさが飲みやすくてとってもおいしいです。
こちらは、中国の紹興酒に使用されるクモノスカビを使用して醸されたお酒とのことで「クセがあるのでは?」と少しおっかなびっくりいただきました。
紹興酒は人生で1度だけ飲んだことがありますが、あのクセ感がどうもだめで一口でギブアップした思い出があります。
C-typeは…果たして…
こちらの香りのほうがK-typeに比べると「重ため」の柑橘っぽい香りがします。
ネーブルオレンジとか、皮がしっかり香るような柑橘の香りです。
他にも、お米感とレモンぽい酸味も感じます。少しまったり感もあるかな?
香りが変わりました。
よりまったり感のある香り。
でも爽やかさと、これは…うーん、コーヒー?みたいな香りがあります。
(うまく表現できませんが、焙煎したコーヒー豆を嗅いだ時に感じる香りがしました)
飲んだ瞬間「ん~~~~~~…」ってなりました。
なんだろ、独特!
酸味の刺激もありますが、もったり&まったり。
でも爽やか!
みたいな…。やはりうまく言えません(笑)
個性が、強い!
最後は酸味とお米のキレ感もあります。
濃いめ。
ずっと飲んでると美味しいのですが、K-typeの後に改めて飲むとその個性に本当に驚きます。
うーん、K-typeのほうが好きかも!
開けたては、じっくりとそれぞれの個性を確かめながら飲んでみました。
ですがやはり、新政さんの日本酒はひとりで飲むよりも「シェア」して呑んで「美味しい」を共有したい!
ということで、開栓後は日本酒好きの人と一緒にいただいてみました。
…と、言いながら味わいのメモを見返したところ、ちょっとメモするのさぼっていたためカンタンな感じになっております。ご了承くださいませ…
冷たい状態だと爽やか。
ですが、常温になると「まったり」感がでました。
食中酒として飲んでも料理の邪魔はせずに美味しくいただけます。
C-typeの後に改めて飲んでみると「さわやかさ」が際立ちます。軽やかでレモンぽさもあり。
冷たいのがより美味しいです。
ぶどう?マスカットのような感じもあります。
おいしい爽やかさ。
しょうゆと一緒だと甘さが引き出されるので美味しいです。
冷たいとジュワっと感があります。
K-typeと違って、こちらは常温でも後口に「さわやかさ」があります。
開栓直後は「クセ」を感じましたが、続けて飲んでいるとクセ感が無くなります。
慣れるとこちらの方が甘みがあって、厚みもあり美味しいです。
いや、でもどっちも好き。
たっぷり感と甘み。
しょうゆと一緒だと、こちらも甘さが引き出されるので美味しいです。
飲んでいると甘さが強く感じてきました。キンキンに冷やして飲みたくなるお酒です。
新政頒布会2021年、7月分の「K-Type」「C-Type」を飲んでみて共通するのは
ということです。
両方同時に飲んでいると、なんだか似たようにも感じてきて、ですがどちらも個性がありとっても美味しかったです。
今回は「白麹」と「クモノスカビ」という通常の日本酒造りとは異なる菌を使用して醸されたということで面白い体験の出来た日本酒だと思います。
それぞれの違いをまとめると
という感じでしょうか?
最初は「K-type」が好きだと感じましたが、結論は「どっちもおいしくて好き」にまとまりました。
一緒に飲んだ人は最初は「C-type」のほうが好きと言っていましたが、やはり「どっちも好き」にまとまっていました。
1点感じたのは「キンキンに冷やして飲みたい」ということです。
夏なので、冷蔵庫や日本酒セラーで冷やしていても室温で直ぐに常温に戻ってしまいます。
このお酒は常温よりも冷えていた方が確実に美味しいと思いますので、ワインクーラーなどを活用して冷えた状態をキープしておくのがおすすめです。
ちなみに、ル・クルーゼの「アイスクーラースリーブ」は保冷材のような構造になっていますので通常のワインクーラーよりも冷えた状態をキープできます。
わが家でも1つ用意がありますが、同時に2本開栓とかよくするためもう一個あってもいいなぁと思いました。
なにより冷凍庫に入れておけばいいだけなので「氷を用意する手間いらず」&「水が滴る心配もない」ため便利です。
価格は1つ2530円(税込み)
どんなものなのか?ルクルーゼの公式サイトのURLを貼っておきますね。
公式サイトより楽天市場の方が安く買えるためそちらのURLも貼っておきます。
2021年の新政特別頒布会のお酒はこれにて終了となりました。
いままで飲んだことの無い、実験的なお酒を思う存分楽しむことができて嬉しかったです。
美味しかった~♪
ごちそうさまでした!
第1弾、第2弾に引き続き、矢島酒店さんでは新政頒布会のお酒を抽選にて販売しています。
簡単に内容をまとめると、
【申し込み対象者】
【抽選申込方法】
【当選発表】
となっています。
詳細などは、矢島酒店さんの公式ページよりご確認ください。
矢島酒店 新政酒造「特別頒布会2021 第三巻」のご案内
https://posts.yajima-jizake.co.jp/blog/2021/08/post-7608.html
新政酒造さんの日本酒は
といった方法で購入、また飲むことができます。
基本的に、特別頒布会のお酒は入荷数が少ないため「いつも買いに来てくれるお得意さま」に販売される傾向があります。
まずはお近くの特約店さんを見つけることから初めてみてください。
詳細は、新政頒布会 2021【5月分】のページに記載していますのでご確認ください。
今回のノベルティは2種類。
わたしが貰ったてぬぐいは第1弾のデザインとなる「カモフラ柄」で、第2弾のノベルティのクリアポーチと同じ「ピンクの6」のデザインでした。
他にも「ダズル柄」「マクロス柄」などが存在します。
基本的にノベルティの色などは選べないため、何が出るのかお楽しみとなっています。
ちなみに、バッジは台紙から外そうとしたら磁石が強くて「6」がポロっと取れてしまいました…。
あ、アロンアルファーかな?(汗)
くっついたらどこかに挟んで使いたいと思います( ´;ω;` )
7月の頒布会のNo.6のデータは下記の通りです。
原料米 :酒こまち
精米歩合 :麹米55%、掛米60%
アルコール分:13%
仕込容器 :温度制御タンク
二次発酵容器:温度制御タンク
内容量 :720ml
原料米 :酒こまち
精米歩合 :麹米55%、掛米60%
アルコール分:13%
仕込容器 :温度制御タンク
二次発酵容器:温度制御タンク
内容量 :720ml
価格 :上記2本で、4,500円(税込み)
製造者 :新政酒造株式会社/秋田県秋田市大町6丁目2番35号
公式サイト :http://www.aramasa.jp/
Twitter :https://twitter.com/aramasayamayu
今回の第3弾で、2021年の新政特別頒布会のお酒は終了となります。
「実験酒」の名の通り、普段では味わえない内容のお酒となっていてとても面白い体験をさせていただきました。
2022年の頒布会のお酒も愉しみに待ちたいと思います。
\関連記事/