日本酒には出会いがある。
いつも飲んでいる日本酒。運よく買えたスペシャルな日本酒。たまたま買ってみたら好みだった日本酒…。
ここでは、唎酒師のわたしが出会った「本日の1本」を紹介します。
本日の1本は、新潟県中魚沼郡津南町にある「苗場酒造株式会社」さんの醸す「醸す森 純米吟醸 生酒」(かもすもりじゅんまいぎんじょうなまざけ)です。
苗場酒造さんの醸す日本酒には「苗場山」と「醸す森」があります。
1907年に創業した酒蔵さんで、元々は瀧澤酒造という名前でしたが後継者問題を抱えていたことから2013年に蔵元が変わり「苗場酒造」として再出発されました。
その後、BAR & HOSTEL 醸す森という宿泊施設のオーナーでありソムリエや酒匠の資格を持つ山岸裕一さんと共につくったのが「醸す森」という日本酒です。
宿とのコラボ日本酒ということで「醸す森(kamosu mori)」という名前もこの宿の名前から付けられました。
「造り方にとらわれず若い感性で」と醸造責任者に抜擢された武田翔太さんは1995年生まれ。
60~70歳代のベテランの蔵人さんたちに支えられ、過去にとらわれない、フルーティーで新しい日本酒として2019年に「醸す森」が誕生しました。
まだまだ新しい銘柄のため「知らない」という人も多いかもしれませんが、SNSなどでも話題に上がるお酒のため日本酒好きの人たちに注目されている1本です。
そのお酒の特徴は、
といったものでSNSでは「うまい!」「甘さが好き!」といった声を多く見掛けます。
醸す森が他の日本酒と異なる造りをしているのがこちらの「一段仕込み」。
通常日本酒は、4日間で3回に分けて原料を投入する添・仲・留(そえ・なか・とめ)という「三段仕込み」にてアルコール発酵を行います。
これは大量の原料を一気に投入してしまうと、酒母の濃度や酵母が薄まり不要な微生物が繁殖してしまうリスクがあるためです。
醸す森では、その1回目の「添」のみを行う「1段仕込・添仕込」を採用しました。
原料の投入は1回のみのため、1度に醸される日本酒は三段仕込み比べ「少量」とコストもかかり、非常に繊細な作業が必要というこだわりの造りとなっています。
例えば
と1/3しかお酒ができません。
その代わり、旨みの凝縮された濃いお酒を醸すことが出来ます。
通常、三段仕込みで日本酒を醸すとアルコール分は18~20%という高いアルコール分を得られます。
このままではアルコール分が高すぎるため加水をして15%~16%に調整する場合や、加水せず原酒のまま低アルコールに仕上げるなどは蔵により異なります。
一段仕込みの場合は、
といった特徴があります。
醸す森を飲んだことのある人は「確かに言われてみれば…」と思い当たる節もあるのではないでしょうか?
今回購入したのは精米歩合60%の「純米吟醸」の「生酒」バージョンのお酒です。
醸す森には
という2種類【生酒】がメインの商品となりますが
なども存在し、こちらは「レア」な醸す森となっています。
醸す森「純米吟醸」生酒の説明文には下記のように紹介がありました。
ぴちぴちと弾けるガス感が生酒らしい、フレッシュでジューシーなテイストです。
洋梨やライチを思わせる甘い香りと、酸がキュッと後味を引きしめています。
食前酒にぴったりなお酒ですが、食事と一緒に楽しむならピザやパテドカンパーニュとのペアリングがおすすめです。
冷蔵庫でよく冷やしてからお召し上がりください。引用:苗場酒造株式会社公式HP
醸す森はSNSを見ていると、新政酒造さんの日本酒が好きな人に選ばれているイメージがあり純米大吟醸よりも「純米吟醸」の方が人気のあるイメージです。
醸す森を知ったのは2021年、夏の搾りたての新酒の予約販売と届いたよ~というSNSでの反響を見て「飲んでみたいなぁ~」と思ったのがきっかけです。
ですがその時は特約店さんを特に調べることも無く「通販か…(まぁいっか)」と流していました。
その後、10月に入り埼玉県の南陽醸造さんへ花陽浴を買いに行った際、せっかくならと埼玉の酒販店さんに寄った時に出逢ってしまったのです。
「醸す森あるじゃん!しかも生酒!」
その時、純米吟醸と純米大吟醸がありお店の店主さんに「初めてですが、どっちを買ったら良いですか?」と聞いてみて純米吟醸を購入してみることにしました。
ちなみに、その時の回答は何て言われたのか覚えておりません…
そんなこんなで、2021年10月に購入した醸す森をマイナス5度で冷やせる日本酒セラーに保管し、2022年4月に飲むこととなりました。
どんな味わいの日本酒だったのか?
早速、見てゆきたいと思います。
吹きこぼれ注意と書いていますが、マイナス5度で長期間保管していたため特に問題なく開栓することができました。
生酒のため瓶の中で酵母が生きていますが、マイナス5度の状態だと酵母の活動が極限的に抑えられるためです。
香りは柑橘系。
皮寄りの苦味も香ります。
これはオレンジ?
ジュワっと果汁が弾けるようなフレッシュさと、濃ゆさ、甘みも香ります。
ジューシー!厚みもしっかりあり甘さがあります。
柑橘な酸味感があるため、甘さにくどさはありません。
でもしっかりと濃ゆくて、苦味もあります。
グレープフルーツのような爽やかさではなく、やっぱりオレンジっぽいですね。
あのジューシーな甘さと、皮の苦味の感じ、あります。
飲む度に、舌にジワッとガス感。
こゆーい。
旨みがぎゅっとした感じがあります。
10月に購入したお酒なので、もしかしたら直ぐに飲んだらまた違った味わいだったのかしら?とも思いました。(飲んだのは購入から半年後です)
甘みジュワジュワ濃ゆこゆで美味しいです。
アルコール分14度でこの濃ゆさは満足感もあります。
え、ちょっと待って、ボトルの色が濃くて気付きませんでしたがボトルの底に「にごり」が見えるのだが…
後で混ぜて飲まねば。
こちらの純米吟醸は「新政っぽい」という人も見掛けますが、こちらの方がなんだろう「強い」感じです。
新政さんのお酒は「洗練」されているイメージです。
この柑橘っぽさが雰囲気的に新政を彷彿させるのかしら?と飲んでいて思いました。後口の感じとか。
こちらのお酒を飲んだのは「春」なので桜の平盃でも飲んでみました。
オニヤンマグラスとはまた違い、美味しいです。
というか、平盃の方が美味しく飲めます。
苦みが気にならなくなり、甘さが美味しく口に入ってきます。
桜を見ると気分もUP!
甘みが可愛らしく柑橘さもふわふわ。
うん、やっぱり平盃の方が美味しいですね!
スルリと口に入ってくるので飲んでいて心地よいです。
そして苦みは健在なので、後口はしっかり〆てくれます。
料理が無くても「このお酒だけ」で楽しめるのではないでしょうか?「食前酒に」という説明にも納得です。
しっかりとにごりました!
まずはオニヤンマグラスで香ってみると、酸味感がUPしました。
ガス感ものピチピチさと、なんか香りの梨っぽさが強くなった気がします。
飲んでみるとシルキー!
かなりのシルキーさです。
甘みも味わいも全体的に濃ゆこゆで、果実をギュッと搾ったような感じがあります。
ですが、柑橘な酸味のおかげでスルスル飲めちゃいます。
赤武のスノークリスマスを濃ゆ~くした感じでしょうか?
赤武と醸す森の間を取りたい!
そんな味わいです。(どんな)
平盃で飲んだ方がジューシーさを強く感じます。
シルキーさもありますが、甘みがハッキリ。果実みしっかり。
ジュワっと美味しいです。
やはりこちらの方がグラスと比べると、濃ゆさと苦さもしっかり感じます。不思議。
オリを混ぜたら味わいのハッキリさがUP。輪郭が出ました。
サラダと共にいただきたいと思います。
セロリとみょうがのサラダは、甘みが合います。
お互い美味しくいただけますし、甘みが美味しいです。
ナスのサラダは、こちらも甘みにマッチしておいしい!
海の幸のサラダ、こちらも美味しい。
え、RF1(アールエフワン)のサラダにめちゃめちゃ合うのだが?
お互いに美味しくいただけます。
というか美味しいお酒です。
オリを混ぜたほうが「新政っぽい」と呼ばれる雰囲気がUPしました。
なるほどですね。
そんなこんなで1本飲み切ってしまいました。
美味しかったです。
ごちそうさまでした!
わたしは飲んでみて「今度は買ったらすぐ飲みたいし、純米大吟醸も飲んでみたい」と思った日本酒でしたが合わない人もいるかと思います。
それは、
です。
ですが、醸す森の飲み方として推奨されているのが
といった様々なアレンジ方法です。
夏に飲むにはピッタリな飲み方だと思います。
「甘過ぎて飲みにくい…」ともし感じた際はぜひ試してみたい方法になります。
日本酒初心者や苦手な人、女性にも1度は飲んでいただきたい味わいのお酒ですので見掛けたらぜひ手に取ってみてくださいね。
「醸す森を見たことが無い!」
という人に朗報です。
醸す森の日本酒は2022年3月より増量体制が整い、今まで数量限定でなかなか購入できなかった人も以前より手に取りやすくなりました。
また、醸す森は冬の寒い時期だけではなく1年通して醸造する「四季醸造」のため夏でも生酒を購入することが出来ます。
6月9日現在、下記の酒販店さんにて「再入荷」していますので購入することが可能です。
また、在庫があれば苗場酒造さんの酒蔵で直接購入することも可能です。
公式のオンラインサイトも用意されていますので、蔵元在庫があればそちらで購入もできます。
※在庫が無くなると一覧から消えます。
なお、全国の取扱店舗(特約店)さんも公式サイトに一覧で紹介がありましたので「近くに店舗があるのか?」ぜひチェックしてみてください。
購入できる酒販店さんは大分増えているのでは?
と思いました。
ちなみにわたしが購入したのは、埼玉県熊谷市にある「はし本商店」さんですが、オンライン販売はされていません。
また、苗場酒造さんは楽天市場にてショップを持っているため「楽天ポイントをお得に貯めたい!」という人にはお勧めです。
気になったあなたは、まずはお近くの販売店さんをチェックしてみてくださいね。
仕様 :純米吟醸
アルコール度:14度
原料料 :米(国産)、米こうじ(国産米)
使用米 :新潟県産五百万石/掛米:新潟県産こしいぶき
精米歩合 :60%
使用酵母 :M310酵母
日本酒度 :-30
酸度 :3.0
内容量 :720ml
価格 :1,650円(税抜き)
製造者 :苗場酒造株式会社
所在地 :新潟県中魚沼郡郡津南町下船渡丁戊555
公式サイト :https://www.naebasan.com/
Twitter :https://twitter.com/naebasyuzo
Instagram :https://www.instagram.com/naeba_syuzo/
醸す森には「300ml」と小さいボトルサイズも用意されています。
取り扱いがあるかは酒販店さんにより異なりますが、公式オンラインショップでしたら選択も可能です。
気軽に試してみたい人は、小さいサイズからはじめてみるのも良いかもしれません。