日本酒には出会いがある。
いつも飲んでいる日本酒。運よく買えたスペシャルな日本酒。たまたま買ってみたら好みだった日本酒…。
ここでは、唎酒師のわたしが出会った「本日の1本」を紹介します。
本日の1本は、秋田県にかほ市にある「株式会社 飛良泉本舗」(ひらいづみほんぽ)さんの醸す「山廃純米 マル飛 ひやおろし」です。
秋田県にかほ市にある飛良泉本舗さんと言えば、今年で創業535年と日本では2番目に古く、東北では最古となる歴史ある老舗の酒蔵さんです。
1487年(長享元年)に創業のため、あの剣菱(けんびし)で有名な1505年(永正2年)創業の剣菱酒造さんよりも古い酒蔵さんとなっています。
なお、27代目となる齋藤雅昭(さいとうまさあき)さんは丁度創業500年の年に産まれたということで自分の歳が創業5百の後に付くため覚えやすいと仰っていました。
つまり2022年の今年は35歳の年ということですね(お若い!)
そして、飛良泉本舗さんの日本酒の特徴と言えば「山廃仕込み」(やまはいじこみ)であることも有名です。
山廃仕込みとは、お酒の元となる酒母(しゅぼ)を造る際に乳酸を添加する「速醸酛」とは異なり、乳酸菌を育成する「生酛系酒母」の一種です。
生酛(きもと)は、蒸米を摺り下ろし米の糖化を早める山卸し(酛摺り)という作業を行いますが、この作業を廃止したのが「山廃酛」(やまはいもと)です。
速醸酛は約2週間で完成するところ、生酛と山廃酛は約30日間と倍の時間が掛かる大変な手法になります。
この昔ながらの山廃づくりにこだわり、自然の乳酸菌などの微生物の力を借り手間暇を惜しまず、手間のかかるわが子を育てるようにお酒が作られています。
山廃仕込みの純米酒かつ、酵母違いで醸されるシリーズになります。
例えば、
といったラベルに記載された数字で酵母を表現しているものや
といった限定品や季節限定で醸されるお酒もあり、こちらもそれぞれ異なる酵母を使用して醸されています。
この酵母が異なることで、発酵の過程で生成される香気成分と酸が異なり日本酒の風味に大きな影響を与えます。
今回紹介する日本酒は、マル飛の秋酒となる「ひやおろし」バージョンです。
2021年は、9月12日ごろより取り扱い販売店さんの店頭に並びました。
2022年は、9月8日に蔵元より取り扱い酒販店さんへと発送されました。
上記で使用酵母が「その年により異なる」と記載しましたが、下記のような違いがあります。
わたしが飲んだのは、2021年(令和2酒造年度)のマル飛ひやおろしです。
IYAPU-1酵母という聞いたことの無い酵母を使用されていますが、秋田県立大学の2人の教授により開発された酵母とのことです。
このように年によって異なる酵母が採用されているため「昨年とは違うひやおろしの味わい」を楽しむことができます。
この限定ひやおろしのためだけに酒質設計した特別なマル飛です。
やわらかな香り、熟成による丸みのある口当たり、米の旨みがギュッと凝縮された狙いどおりのひやおろしが完成しました。
冷やしてお召し上がり下さい。
と記載されていました。
わたしが飛良泉本舗さんの日本酒を飲むきっかけとなったのは、2020年の夏に発売された「マル飛 限定 微炭酸 うすにごり」でした。
こちら、当メディアをスタートする前に飲んだ日本酒だったため記事にはしていませんが、見た目がとにかく好みにドンピシャでした。
水色のボトルとマル飛のステッカー(ラベル)が可愛くて購入した日本酒でした。
味わいは、乳☆酸☆菌!チーズケーキのような酸味&やさしい甘味でさわやか。この時だけの実験的なお酒とのことでした。
それからは、タイミングが合った時にいろいろ飲んでみたくて飛良泉さんの日本酒を手に取るようになりました。
これまでに飲んできて1番好きなのは飛囀(ひてん)スパークリングです。
\甘酸っぱいゆるふわ系スパークリング/
飛良泉さんの醸す「ひやおろし」はどんな味わいなのか?
早速開栓してゆきたいと思います。
しっかりと香る…厚みを感じる香りです。
スプーンですくった時のメロン果汁のようなフレッシュで濃密。
甘過ぎず、酸味も少しある。そんな香りがします。
「なるほど…」
と声が出ました。
これはひやおろしというお酒のど真ん中になるのではないでしょうか?
濃醇なまろやかさがありつつ、スッキリ。
甘みはお米の甘みがしっかりと。
ですが「甘い」と感じるよりも直ぐにスッキリさが甘さをすくってゆきます。
丸さもありますが、どちらかというと「日本酒です」という感じが強いかしら(語彙力が無くてすみません…)
ちなみに、辛口といった感じはありません。
秋の味覚に合いそうな味わいで、食中酒といったイメージが強いですね。
オクラと納豆のねばねばサラダと一緒だと、甘さがギュッと増してからのスッキリ。
丸みのあるお酒というのがしっかりと感じられます。
ちなみに、納豆と一緒でも臭みなど強調されずに安心していただけます。
秋鮭ときのこのバター醤油ソテーは、甘さがふわっと良い感じに広がりお酒のまろやかさが丁度よく美味しくいただけます。
ナスの生姜焼きは、入りの甘み&香りがふわっとやって来ますが直ぐにスッとスッキリ。
やわらかさもあります。
基本的に料理と一緒だとスイスイ飲めちゃうお酒です。
重たくないし飲みやすい。
ですが、スッキリと流してくれる感じが強いためちょっとだけ物足りない感じもあります。
それがまた飽きずに料理の邪魔をせず飲める…というのもあるのですが、旨みと旨みの相乗効果がもっと欲しいなぁと思いました。
開栓後は冷蔵庫にて保管をしていました。
一回火入れをした生詰め酒ですが、味わいに変化はあったのでしょうか?
グラスに注いでみると、黄色!
香ってみると、リンゴの蜜の香りがします。
甘みが瑞々しく、スッキリ感もあります。
とってもさっぱり!軽い甘さ。
お米の甘みはしっかりと後口には厚み&日本酒らしさが残ります。
やはり単体ではなく、しっかりとおつまみや料理と共にいただきたい味わいです。
飲み口のスッキリ感が初日よりもUPしています。
甘みはやさしいマスカットみたいに軽いです。
今日はカレーと共にいただきたいと思います。
カレーを食べてから飲んでみると、甘みに酸味がプラスされたような味わいになりますがスッキリ感もしっかり。
後口のお米の感じがUPしてキレっぽさも出ました。
カレーと日本酒のペアリングって合うものはとっても合うのですが、このお酒はあまり合わないかも!
スッキリさがとにかく強くて、逆に物足りなくなっちゃいました。
引き続き、冷蔵庫にて保管をしておりました。
香ってみると、マスカットの香りに感じます。
酸味もあり、こゆく甘い香りがします。
飲んでみると、ふわりとさっぱり感。
やわらかいのに厚みを感じます。
ですが香りほどの甘みはなく、スッキリ感の方が強いです。
今日は揚げ物&サラダにしてみました!
からあげクンのレモンは、レモンの酸味とお酒が合います!
Lチキレッドは、甘みがUPして美味しいです。
みょうがとセロリと大根の塩昆布和えサラダは、めっちゃ合います!さわやかで美味しい。
今日のおかずはどれも美味しくいただくことができました。
そんなこんなで飲み切り!
美味しかったです。
ごちそうさまでした。
わたしは、飲んでみて「唐揚げ+レモンのお供に良いのでは?」と思いましたが合わない人も居るかと思います。
それは、
です。
ですが、
「熟成によるまるみがあって、お米の旨みを感じつつやわらかくスッキリと飲みたい」
という人にはお勧めの日本酒です。
わたしがこれまでに飲んだ「ひやおろし」の中では、
「これがひやおろしなんだろうな…」
と思うような、正にひやおろしという味わいを表現した日本酒なのでは?と感じました。
どちらかと言えば昔ながらの日本酒のため好みは分かれるかと思いますが、マル飛ひやおろしはその年によって異なる酵母を使用して醸されています。
そのため、2022年の味わいはここに記載したものとはまた違ったものになるかと思います。
気になったあなたはぜひ実際に飲んでみてくださいね。
飛良泉本舗さんでは、公式オンラインショップを用意しているため公式サイトより購入することも可能です。
ですが、特約店さんでしか購入できない商品もあるためお近くの特約店さんを知っておくのが便利です。
一部の取り扱い販売店さんは、JSP(ジャパンサケショウチュウプラットフォーム)のサイトにて確認できます。
ネット通販を行っている特約店さんもありますので、
「飛良泉 特約店」
「飛良泉 マル飛 ひやおろし(商品名)」
といったキーワードでGoogleやYahoo!検索をするとヒットさせることができます。
例えば
などで購入することが出来ます。
ひやおろしに関しては、9月の中頃(2022年は9月9日ごろ)より発売となりました。
前もってチェックしておくと安心です。
製造 :令和2酒造年度
特定名称 :純米酒(山廃)
原材料名 :米(秋田県産)米麴(秋田県産米)
原料米 :秋田県産秋田酒こまち100%
精米歩合 :60%
アルコール分:15度
使用酵母 :IYAPU-1酵母
日本酒度 :-1.0
酸度 :1.4
内容量 :720ml
価格 :1,760円(税込み)
製造者 :株式会社 飛良泉本舗
所在地 :秋田県にかほ市平沢字中町59
公式サイト :https://www.hiraizumi.co.jp/
Instagram :https://www.instagram.com/hiraizumi_sake/
2022年は日本酒イベント「若手の夜明け」に参加される飛良泉本舗さん。
全国から41の酒蔵と11の酒販店が集合し「100種類」以上のお酒を試飲できる、全国最大級の日本酒イベントになります。
ちなみに読み方は、ひらい「ず」みではなく、ひらい「づ」みとなります。
若手の夜明けは9月21日~24日まで東京大手町にて開催されますので、気になったあなたはぜひチェックしてみてください。
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