日本酒には出会いがある。
いつも飲んでいる日本酒。運よく買えたスペシャルな日本酒。たまたま買ってみたら好みだった日本酒…。
ここでは、唎酒師のわたしが出会った「本日の1本」を紹介します。
本日の1本は、長野県上高井郡小布施町にある「小布施ワイナリー」さんの醸す「サケ エロティック ヌメロシス」です。
【追記】2023年のソガペ発売スタート!
2023年は1月21日(土)ごろより初回の発売がスタートとなり特約店さんへ順次入荷しています。
今年も「ヌメロシス ドメーヌイケダロット」の6号酵母のお酒からスタートとなりました。
ヴィンテージの部分に2022と記載があるのが2023年に発売されたソガペになります。
まず、この日本酒のお話をする前に「小布施ワイナリー」さんのお話をする必要があります。
小布施ワイナリーさんは名前の通り、普段はワインを製造・販売している「ワイン蔵」(ワインとワイン葡萄をつくる職人さん)になります。
とてもこだわりを持っているワイナリーさんで
ということを誇りとしていると共に、
といった、畑仕事に集中をし、ワイン畑を守るために製造量制限、品質やマジメ度を重視している小さなワイナリーさんです。
そのワインの味わいはコンクールでも多くの賞を受賞されていましたが、2004年に海外コンクールへの出品を控え、2014年には国内コンクールの出品もやめてしまいました。
それも「コンクール用の賞獲得狙いの味わい」ではなく「本来作りたいワインの個性」を大切に考えているからです。
…こういった話を聞くと、日本酒業界でも同じことが言えるのではないのかぁと思ってしまうのはきっとわたしだけでは無いかもしれません。
小布施ワイナリーさんのこだわりは、公式サイトの内容を読んでみると一目瞭然かと思います。
わたしも初めて拝見した時はいろいろな意味でも驚きました。
まだ見たことの無いあなたは、ぜひ1度覗いてみてくださいね。
普段はワイン造りとワイン葡萄栽培をされていますが、冬の時期・雪と極寒でワイン畑の出来ない数週間だけワイン造りではなく「趣味のSAKE」をワイナリー内で醸しています。
それが「サケ エロティック」と名前の付けられた日本酒です。
趣味のSAKEという名前の通り、醸される本数は「極少量」そして販売店さんも限られるため入手困難として名前の挙がる日本酒の1つとなっています。
もしかしたら「ワイナリーが日本酒造ってもいいの?」と思った人も居るかもしれません。
確かに、ワインの醸造免許では日本酒の醸造をすることは出来ません。
ですが、小布施ワイナリーさんは元々1867年に創業した清酒を造る酒蔵さんで「泉瀧(いずみたき)」という地元に愛される代表銘柄を醸していました。
当時の蔵元は「曽我市之丞」さん。
※ 現在は4代目となる「曽我彰彦」さんがオーナーを務めています。
その後、第二次世界大戦による米不足の影響や国策により「廃業」を余儀なくされ「ワイン(果実酒)造り」を始めることとなりました。
戦後になり、一度は没収されてしまった清酒製造免許の復活に向け市之丞さんは大変な努力をされ、当時としては異例となる「清酒免許復活」を果たすことができました。
この市之丞さんの厚い情熱が受け継がれ、現在もワイン造りと共に日本酒造りも続けられている…というのが小布施ワイナリーさんが日本酒を醸している経緯となります。
詳しくは下記のページにその想いが残っていました。
気になったあなたはぜひチェックしてみてください。
わたしが初めて「ワイナリーさんの醸す日本酒」の存在を知ったのが、ねこと日本酒のサイトをスタートしてからの2021年冬です。
SNSで連日投稿される「見た目がワインの日本酒」をみて「なんだかオシャレな日本酒があるんだなぁ」と思って見ていました。
ですが、酒販店さんで見掛けたことも無かったため特に調べることもせずその年は過ぎてゆきました。
そして、人生2度目となるひとり呑みに出掛けた際、サケエロティックと出逢うこととなりました。
【5杯目】ソガペールエフィス ヌメロシス(協会6号酵母)
この時に飲めたのが「6号酵母」のお酒「ヌメロシス」のノーマルロットのお酒でした。
とても好きな味わいの日本酒だったので今年(2022年)は追いかけてみよう!と思い、今年最初に発売された「ヌメロシス ドメーヌイケダロット」を無事入手することができました。
まず、初めてこのお酒を見た人は片仮名が多いため「これはどういう意味なのだろう?」と思った人も少なくないかもしれません。
SNSなどでは「ソガペ」と呼ばれることが多いですが、実は「ソガペ」は銘柄の名前ではありません。
わたしもTwitterで教えてもらい、ようやく理解することができました。( ´人` )ありがたやー
それぞれ解説すると
フランス語。
直訳すると「ソガ(曽我)」「ペール・エ・フィス(父と息子)」
となります。
これは、曽我さんの自社栽培ブドウと国内の契約農家栽培のブドウを使ったシリーズに付けられる名前で、今回は日本酒なので葡萄は「酒米」に置き換わります。
小布施ワイナリーさんの醸す日本酒は「美山錦」という酒米しか使用しないため「契約農家さんが作った美山錦を使用」という意味になります。
ちなみに、自社栽培100%の場合は「ドメイヌ・ソガ(Domaine Sogga)」とエチケットの表記が変わります。
この違いを理解していると、小布施ワイナリーさんのワインに出逢った時に「そういうことか!」と理解しながら購入できるかと思います。
なお、日本酒は全て「ソガ・ペール・エ・フィス」となります。
こちらがこの日本酒の「銘柄名」になります。
ラベルの裏の解説では
辛い恋慕や狂おしい恋愛を経た大人の男女にのみ解りうるフェティッシュかつ退廃的な香味のsakeであるがゆえ「Sake Erotique」としました。
とあります。
なるほど…!その気持ち、とても理解できます。
理解できるのですが酒屋さんや飲食店さんで「サケ エロティックありますか?」って聞くの、なんだか勇気がいりますよね…( ´///` )
そのため(?)「ソガペ」や「ソガペールエフィス」といったこちらの呼び方の方が日本酒好きの方の間で有名になっているのでは?と感じている今日この頃です。
こちらもフランス語です。
直訳すると「ヌメロ(番号)」「シス(6)」。
つまり「6号酵母を使ったお酒」という意味になります。
現在サケエロティックでは、旧協会1~5号酵母、そして戦前に発見された6号酵母のみを使用した日本酒を醸しているため
といった名前の記載されたお酒が発売されます。
他にも
など、酵母をアッサンブラージュして発売することもあるようです。
また以前は、7号酵母(セットゥ)や9号酵母(ヌフ)で醸したお酒もあったようです。
ボトルのエチケットは、パッと見だと一緒に感じますが「酵母の違い」を知っていることにより判断することができます。
6号酵母を使用した「ヌメロシス」にはロット違いのお酒が存在します。
こちらは使用したお米の生産者の違いで、今回は2022年の最初に発売となった「ドメーヌイケダロット」を購入することができました。
小布施北部に広がる田園地帯「延徳(遠洞湖)田園」産米の美山錦で「池田大光」さんが育てた酒米で醸されたお酒がドメーヌイケダロットです。
小布施ワイナリーさんの「ワイン」へのこだわりは先にお伝えしましたが、日本酒にもそのこだわりは強く表現されています。
簡単にまとめると
といった、昔ながらの「機械を使わない酒造り」で高い品質・ステイタスの高い清酒造りを実践されています。
ですが、本業はワインなので日本酒ばかりではなくワインを飲んで欲しい…といったことを曽我さんが漏らしていたと購入の際に酒屋さんが教えてくれました。
もちろんです!
ぜひワインも飲んでみたいと思っていたので、一緒にいろいろと購入をさせていただきました。
ちなみに、曽我彰彦さんの弟である「曽我貴彦」さんは北海道余市町にある「ドメーヌタカヒコ」というワイナリーを設立・ワインを醸造しています。
こちらのワインもとても気になるので、見掛けたらぜひ飲んでみたいと思っています。
今回サケエロティックを追いかけるのが初めてのため「どの酵母が最初に発売されるのか?」といった情報などは不明のまま特約店さんを回りました。
そして最初の入手となったのがこちらの「ヌメロシス ドメーヌイケダロット」です。
以前、飲食店さんで飲んだのはヌメロシスのノーマルロットだったので、ここでロットの違いがあることを初めて知りました。
そして、毎年ソガペを飲んでいる人の感想を見ていると
「熟成させた方が美味しい」
といった声をとても良く見かけます。
今回は
の2種類を入手できたため、まずマグナムボトルで開栓後の熟成を楽しみながら飲んでゆきたいと思います。
マグナムボトルに入った日本酒は初めてなので、その大きさにウキウキしながら開栓をしました。
香ってみると、マスカット…白桃…
うん。
白桃ですね。
みずみずしく甘さのある香りが「ふわっ」と立ち込めます。
思わず「いい香り~」と声に出てしまいます。
甘味に特徴のある香りです。
甘さが口の中に広がり、酸味を感じつつ後口はスッキリさが多い印象。
他の方の口コミでは「硬い」といった意見もありましたが、わたしは初見なので「こういうお酒なんだよ」と言われたら、これはこれで美味しいと感じます。
甘みはやはり白桃っぽさもあり、酸味がしっかりとやって来るため「酸味」の印象が強いお酒です。
たっぷり甘みを感じつつスッキリ飲めて美味しいです。
今日はケンタッキー・フライド・チキンを買ってきました!
まずはサラダ(マヨネーズ)と一緒にいただいてみると、酸味キリッと感がUPしました!
え、面白い。
日本酒とマヨネーズの組み合わせはいつも「甘さ」を引き出してくれることが多かったのですが、今回は「辛口」感が出ました。
え!不思議とあまり合わないです。
酸味感が強くなりました。
レモンよりオレンジとか柑橘系の酸味で、飲み口に甘みもジワッと来ますが苦味も舌に広がります。
今のところ、このお酒は「単品」で飲んだ方が1番美味いです。
グレープフルーツのような強めの酸味とじっくりと広がる苦味を感じます。
うーん。
何の料理に合うのだろう?
今のところ想像ができません。
食べてからひと口飲んでみると、甘さがブワッと広がってからのスッキリ感。
ハラペーニョの辛さと一緒に味わうとスッキリさがUPしました。
飲み口の甘みはとっても甘いです。
ようやく合う食材がわかりました。
チーズです。
チーズと一緒だと、甘みと酸味が丁度良くなりました。
美味しいです。
チーズにキャリーされている感じです。
気付けば1/3飲んでいたので、残りは冷蔵庫で保管して味わいの変化を見てゆきたいと思います。
ソガペの熟成は「常温放置」といった声を多く見掛けますが、初見のためまずは冷蔵庫保管下での熟成を見てゆきたいと思います。
香ってみると、桃やマスカットの香り。
飲んでみると、美味しい甘味の後にスーッと酸味がさらってゆきスッキリ感があります。
ジューシーな甘味が多いのですが、後口のさっぱりさが早めに甘さをさらっていってしまう印象です。
物足りない…
もっとこの美味しい甘さを感じていたい…
そんな風に感じました。
ですが、美味しいお酒であることは間違いありません。
今日は初日と違って「酸味」のイメージがさほど強くありません。
飲み口のジューシーさがUPした感じがします。
少しまろやかになっているのかしら?
やはり最後はスキッとするので寂しいです。もっと余韻が欲しい。
初日にチーズが合う!と認識したので、2種類のチーズをアテにいただきたいと思います。
モッツァレラチーズは、甘みがギュン!と増しました。
チェダーチーズは、甘みが増してからの酸味が美味しいです。
濃ゆい感じになりました。
後口はスキッと、後を引きません。
うん、やはりチーズは合うと思います。
引き続き冷蔵庫にて保管をしています。
今回はちょっと間を置き、開栓してから1週間後の味わいを見てゆきたいと思います。
香ってみると、メロンのようなうりっぽい香り。
少し皮寄りの青さがあり、苦さとキレ感も感じます。
そしてふわっと甘さが香ります。
ここに来て、香りの印象が変わりましたね。
甘さふわっとからのさっぱり感。
今日はとてもさっぱりに感じます。
甘さの余韻は短いです。
ふた口目は、味わうように口の中で留めつつ飲んでみると甘さが広がりました。
ですが苦味も舌にしっかりと浸透するようにやって来ました。
日本酒を飲んで初めて「あ、これが苦味か」とハッキリわかりました。
普段、日本酒の苦味をあまり感じ取れないわたしです。
しっかりと苦味がありますが、最後にジューシーな甘味がカバーしてくれるので美味しく飲めます。
鼻に残る白ぶどうのような香りがとても好きです。
ラストはさっぱりさも確かにありますが、味わいながらじっくり飲んでいると厚みや濃醇さがUPして感じます。
初日や3日目よりも、感じ取れる味わいの「要素」が多くなっている気がします。
熟した葡萄を搾ったような、甘みだけではなく皮の苦味や酸味もあり飲み飽きしません。
ぶどうで例えましたが、葡萄じゃなくてオレンジとか柑橘の皮の苦さがあります。
味わいが強くなった印象で、酸と苦、特に苦味がはっきりした7日目の味わいでした。
まだ残っているので、ゆっくり時間を空けて飲んでゆきたいと思います。
この先、どんな味わいに変化していくのでしょうか?
もっと知ってゆきたくなるお酒です。
また飲んだ際は【追記】として経過を書いていきたいと思います。
ひとまず、ごちそうさまでした!
わたしは飲んでみて「もっと知りたい!」と思った日本酒ですが合わない人も居るかと思います。
それは
です。
自分で購入して飲むのが初めてのお酒だったため、購入後すぐに開栓しても「美味しい」と感じる味わいの日本酒でした。
ですが「寝かすとさらに美味くなる」という声が多いということは「味わいの変化を楽しめる」日本酒ということだと思います。
そのため、時間経過とともに楽しみたい人にはピッタリな日本酒だと思います。
そして、まだヌメロシスしか飲んだことがありませんが「料理を選ぶ」「単体で美味しい」「チーズとは合う」ということが現時点で解っている内容です。
どんな料理にでも合う…という訳ではないと思いますので、食中酒目的としては合わないかもしれません。
ですが、時間を置くことで合う料理にも変化が訪れるかもしれません。
1度、自分の舌で味わってみるのが1番だと思います。
気になったあなたは、飲んでみて損の無い日本酒です。
そしてその味わいを探求すると、日本酒の愉しみがまたひとつ増えるかもしれません。
小布施ワイナリーさんの醸す日本酒は、長野県にあるワイナリーでは購入することができません。
特約店さんでの販売のみとなります。
ですが、小布施ワイナリーさんから特約店さんに「インターネットでの情報公開を控えるように」といった要望があるため
といった内容をネットで調べることは出来ません。
「じゃあ、一体どこで買えばいいの?」
と思いますよね。
わたしも最初はどうしたらいいのかさっぱり分かりませんでした。
ですが、取り扱い販売店さんは公式サイトに記載されています。
こちらに記載された特約店さんで「日本酒も取り扱っている」酒販店さんであれば置いてある可能性が高くなります。
あとは「実際に行ってみる」のが確実に購入できる手段です。
電話での問い合わせは受けていない酒販店さんもあるかと思いますので「実際に行って聞いてみる」のが1番です。
わたしも実際に特約店さんを巡った所、ディスプレイに並べているお店・並べずに聞いたら出してくるお店とありました。
また、入荷本数も少ないため
といった入手困難となる日本酒となりますので、シリーズとして購入したい場合はしっかりとチェックが必要になります。
わたしも今年から注目している日本酒のため、まだ詳しくはよく分かっていないのが現状です。
分かっていることは「1月の下旬から4月にかけて順次お酒が発売される」ということです。
2022年は
発売となりました。
大体1週間に1度のペースで発売されています。
そして、さらに調べてみたところ
といったお話をされている方も見掛けました。
実際どうなるのか?
酵母違いの味わいもぜひ知りたいと思っているので、こちらも追ってゆきたいと思います。
品目 :清酒/生酒
精米歩合 :59%
アルコール分:15度
原材料名 :米(国産)米こうじ(国産米)
使用米 :2021年収穫 長野県産美山錦100%使用
使用米 :ドメーヌイケダ
内容量 :750ml/1500ml
価格 :1,650円/2,860円(税込み)
公式サイト :http://obusewinery.com/
今回、入手困難と言われるソガペールエフィスの日本酒を初めて購入することができました。
印象としては「特約店さんを巡れば意外と購入できる」ということが分かりました。
そして、「すぐに飲む用」と「熟成させる用」の2本は購入したいなぁという気持ちになりました。
そうするとお一人様1本なので最低でも2店舗に足を運ぶ必要があります。
ネットでは購入できないお酒なので「出逢いに行くか、行かないか」はあなた次第です。
当サイトが何かしらの参考になりましたら幸いです。