日本酒には出会いがある。
いつも飲んでいる日本酒。運よく買えたスペシャルな日本酒。たまたま買ってみたら好みだった日本酒…。
ここでは、唎酒師のわたしが出会った「本日の1本」を紹介します。
本日の1本は、栃木県さくら市にある「株式会社せんきん」さんの醸す「仙禽 GREEN NATURE」(せんきん グリーンナチュール)です。
仙禽 グリーンナチュールは、2023年1月27日に「新商品」として発売された「新時代」の日本酒です。
この日本酒には2つのコンセプトがあり
という点になります。
どういうことなのか?それぞれ見てゆきたいと思います。
通常、並行複発酵という原料のすべてを一つのタンクに入れ糖化とアルコール発酵を行う日本酒造りの場合、高いアルコール分が生み出されます。
その度数は、原酒で約18%前後になります。
通常の日本酒は、この搾った原酒に加水(割水)を行うことで15%前後のアルコール度数にしバランス調整を行っています。
ですが近年では、加水をしない「原酒のまま」で15%前後の日本酒や、13%以下の低アルコール日本酒が主流になってきています。
例えば、アルコール分18%の原酒に大量に割水を行うと簡単に低アルコールな日本酒を造ることができます。
ですが、割水=原酒を薄めているということなので日本酒の「旨み成分」も一緒に薄くなり、結果「薄っぺらくて水っぽい日本酒」となってしまいます。
そのため、低アルコールの日本酒を醸したい場合は加水をせずに「原酒」で造ることがほとんどです。
原酒で低アルコール日本酒にする方法として、アルコール度数が高くなる前にもろみの発酵を止めますがこの発酵管理などがとても難しくなっています。
さらに、アルコール度数を低減することで「ボディ感の不足」といった問題も発生します。
そのため、低アルコールかつ薄く感じさせない「軽いのに旨い」日本酒を醸すためには、普通に日本酒を醸すよりも大変で手間も掛かり試行錯誤が必要となります。
そしてここに話が戻ってきますが、グリーンナチュールで挑戦した「原酒でアルコール分10%」。
通常のせんきんさんの日本酒は、アルコール分14%(原酒)という商品がほとんどです。
「もっと低アルコールでは造らないのかな?」
と思っていたところに10%が来て「長年に渡って試作を重ね、10%の低アルコールを実現した」ということを知り完成させるには大変だったんだなぁと改めて思いました。
アルコール度数10%も驚きましたが、もっと気になったのはこちらです。
日本酒造りでは必ず発生する副産物である「酒粕」。
酒粕は一般に販売されたり食品で使用されるほかに肥料や飼料、スキンケアや蒸留酒などに再利用されていますが大部分は廃棄処分されているのが現状です。
グリーンナチュールは、仙禽 オーガニックナチュールから出た酒粕を再利用し、再発酵させた副原料循環型のスタイルにて醸された日本酒になります。
オーガニックナチュールは、無農薬・生もと・酵母無添加(蔵付き酵母)・木桶仕込み・超古代製法にて醸されています。
仙禽さんの醸す日本酒に、完全無添加の超自然派「古式生もと」というナチュールシリーズがあります。
オーガニック米の「亀ノ尾」を使用した日本酒で、精米歩合は90%、今ある当たり前の便利が無い時代の昔ながらのEDO STYLEにて醸されたお酒です。
の3種類があり、今回のグリーン ナチュールは4種類目。
そして、現在も試行錯誤している途中の
も存在します。
スパークリングに関しては発売がいつになるか?などは発表されていませんが、せんきん公式サイトには掲載されておりその存在は明かされています。
ナチュールシリーズに関しては、下記の記事で紹介しています。
\オーガニックナチュール飲み比べ/
こちら、味わいに関しては年々進化を重ねているため今現在発売中のナチュールとはまた異なります。
また最新版の飲み比べをした際は、アップデートした記事を書いてゆきたいと思います。
「酒粕を再利用した日本酒」
新発売の内容を知った時にはとっても驚きました。
さらにアルコール度数10%、どんな味わいなのかとってもワクワクしました。
ラベルの裏には下記のように記載されています。
時を超える日本酒、NATURE
自然派を超える物。仙禽オーガニックナチュールは、いにしえの技法により復活した超自然派日本酒です。
完全無添加(米・米麴・水のみ)の世界は、種から原点帰りしたオーガニック米「亀ノ尾」のエネルギーを十二分に引き出し、仙禽唯一無二の世界を創造します。
「ナチュール」という思想は、あらゆる異なるジャンルの壁を越え、「つながる」ことができます。
自然の時間に身を任せたナチュールの酒造りをめぐる時の旅。
そして、グリーン・ナチュールは微生物の生態系との共存、副産物循環型の希望となります。
果たしてどんな日本酒だったのか?
早速、開栓してゆきたいと思います。
酸味スッキリ系な香りがします。
すっぱいような…そこにボリューム感のある甘み?
バナナみたいな厚みが一緒に香ります。青いバナナ?
飲むと酸味!
そしてボリューム感のある甘み。
甘みはきゅんと控えめです。
やはりバナナの皮寄りの甘さと味わいがあります。
バナナの本体じゃなくてスジのあの感じです。
飲み口の最初、舌に触れる酸味はとっても柔らかく清涼感もあります。
やわらかな酸味が主体でふんわり甘い。バナナを食べた時のようなボリューム感のあるお酒です。
アルコール分が10度なので本当にスイスイ飲めちゃいます。
仙禽さんの醸す亀ノ尾のお酒はちょっぴりクセがあり力強さのある印象ですが、グリーンナチュールはとっても飲みやすいです。
今日はセブンの和風ハンバーグとサラダ、冷奴と共にいただきたいと思います。
まずはサラダを食べてから飲んでみると、柔らかな印象がUPしました!
酸味も甘みもやわらかく交わり美味しいです。
グリーンナチュールは野菜に合うという蔵元・薄井一樹さんのお話通り美味しくいただけます。
冷奴は、かけた醤油に合います!
メロンぽさが少し出ました。
和風ハンバーグは、りんごっぽい酸味が出てスィーーっと美味しいです。
このお酒は単体でも楽しく飲めますし、料理にも合うお酒だと思います。
そして、料理と合わせているとクリアなジュースを飲んでるように感じてきました。
飲みやす過ぎます。
そんなこんなで1本飲み終わってしまいました。
おいしかったです!
ごちそうさまでした♪
わたしは、飲んでみて「また見掛けたら飲んでみたいな」と思った日本酒でしたが合わない人も居るかと思います。
それは
です。
ですが、日本酒をカジュアルに飲みたい人や仙禽さんの日本酒に想いを馳せたい時にピッタリな日本酒です。
これだけで飲めば、のんびりと「亀ノ尾」の味わいの力強さを楽しめるお酒だと思います。
飲みやすくてスルスル飲めちゃいますが、ゆっくりと飲むのが愉しいお酒でもあります。
料理と合わせてもまた美味しい!
気になったあなたはぜひ一度飲んでみて欲しいなぁと思います。
せんきんさんの日本酒は蔵で購入することができないお酒です。
そのため、全国にある特約店さんでの購入が必要です。
その一覧は公式サイトで案内があります。
お近くにない場合や買いに行けない!といった場合は、オンラインで販売を行っている特約店さんもあります。
例えば下記の特約店さんです。
4月6日現在、まだ在庫があり購入可能です。
グリーンナチュールは1月28日ごろより入荷した特約店さんが多く、すでに売り切れとなっている酒販店さんも多いです。
また、次回はいつ発売となるか現時点では不明となります。
気になったあなたはぜひチェックをしてみてください。
仕様 :超古代製法、酵母無添加(蔵付き酵母)木桶仕込み、生?酒母
原材料名 :米(国産)米こうじ(国産米)
原料米 :ドメーヌさくら・亀ノ尾(栃木県さくら市産)
精米歩合 :90%
アルコール分:10度
内容量 :720ml
価格 :2,200円(税込み)
製造者 :株式会社せんきん
所在地 :栃木県さくら市馬場106
公式サイト :http://senkin.co.jp/
Twitter :https://twitter.com/senkinofficial
オーガニックナチュールシリーズは好きでちょくちょく購入し毎年飲んでいます。
特に「生」バージョンは見つけるととっても嬉しいです。
毎年味わいがアップデートされているお酒なのでこれからも追い掛けつつ、グリーンナチュールとも飲み比べなどをしてみたいなぁと思います。
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