日本酒には出会いがある。
いつも飲んでいる日本酒。運よく買えたスペシャルな日本酒。たまたま買ってみたら好みだった日本酒…。
ここでは、唎酒師のわたしが出会った「本日の1本」を紹介します。
本日の1本は、秋田県秋田市にある「新政酒造」さんと、代表作にNHK大河ドラマ『龍馬伝』の題字など、書家として活動されている「紫舟」(ししゅう)さんのコラボ日本酒。
「新政 No.6(紫舟)Sisyu-type」です。
新政酒造さんの醸す唯一の定番生酒「No.6」(ナンバーシックス)が2021年の今年、発売10周年を迎えました。
それに伴い、2ヵ月ごとに6名のアーティストさんとコラボレーションをした「No.6 十周年記念酒」が発売されます。
前回の第一弾となる「No.6 ダイスケリチャード -type」に続き、こちらは2人目のアーティストさんとのコラボ日本酒となります。
第二弾はその名も
です。
書家として活動されている「紫舟」(シシュー)さんは、愛媛県出身の女性の方で、芸術家、大阪芸術大学教授でもあります。
ボトルのデザインとなっている、繊細でいて躍動感のある印象的な「6」の書体。
今回のコラボレーションを象徴するにふさわしい「書体」に辿り着くために、まずは6号酵母を知ることから始めるなど紫舟さんこだわりの書となっています。
初めて紫舟タイプのボトルデザインを見た時は、一見渦巻きのようなデザインで数字の「6」であることに気付くのに時間が掛かりました。
「6」と気付いてからは「あぁ、なるほど!」と1人で感心し、繊細ながらも力強くお酒の中にたゆたう6号酵母がイメージできました。
キラリと輝く水引や白いボトルも「書」の世界観ととても合っていて素敵ですよね。
そんな紫舟タイプですが、中身は「貴醸酒スパークリング」となっています。
まず、貴醸酒とは日本酒を仕込む際に、通常は「仕込み水」という「お水」で仕込んでいくところ、一部を「日本酒」で仕込んでいるお酒のことです。
お酒をお酒で仕込んでいるため、通常の日本酒よりも「濃厚甘口」といった仕上がりになります。
新政さんの醸す貴醸酒には「陽乃鳥」(ヒノトリ)というプライベートラボの日本酒があるため、飲んだことのある人は味の想像ができますよね。
さらに、スパークリング日本酒。
日本酒をシュワシュワの発泡するお酒として仕上げたい場合、
大きく分けてこの2つの方法がありますが、新政さんでは2つ目の「日本酒本来の発酵の力に任せる方法」でスパーク(発泡)を叶えています。
「瓶内二次発酵」(びんないにじはっこう)という方法で、瓶内に移し替えた後の酵母による発酵により炭酸ガスが増えるようコントロールしています。
瓶の中で発酵し続けているため、新政さんでは通常「耐圧瓶」を使用します。
ですが今回は「可能な限りデザインを優先」したために通常のカラーズ瓶にてリリースされました。
そのため、今回のコラボNo.6となる紫舟タイプには注意点があります。
通常新政さんでは、瓶内二次発酵の賞味期限は生酒同様に「3ヶ月間の賞味期限」としています。
ですが、紫舟タイプに限り「1ヶ月ほどで飲む」ということを注意点としてTwitterでも発信されていました。
瓶内の発酵により内圧が高まり過ぎると「瓶が破裂」する恐れがあるためです。
新政さんでは、破裂しないように細心の注意を払い相当な安全策を講じ、かつ、内圧を一旦ゼロにして出荷しています。
ですが、瓶内の酵母は生きているため二次発酵が進むと、また内圧が高まります。
そのため、紫舟タイプの首掛けにも「2021年5月末日までにすみやかにお飲みください」と注意書きがされています。
「もったいないから取っておきたい」
「6本まとめてお正月に飲みたい」
などなど、長期保存を考えていた人は首掛けの賞味期限以降は「自己責任」となりますので注意が必要です。
なお、どうしても1ヶ月を超える貯蔵が必要な場合は
といったことも一緒に注意喚起されていました。
実は今回、最初の「先行発売の抽選」に全て外れてしまったため購入をほぼ諦めていました。
ですが、結果はありがたいことに前回のダイスケリチャードタイプに続き2本購入することが出来ました。
1本目は「5月16日」に開栓し、3日間かけて1人で思う存分味わいました。
2本目は「5月30日」に開栓し、わが家では氷点貯蔵が出来ますが折角なので品質保証された期限内にと、日本酒好きの人と一緒にいただきました。
これがとても興味深い結果となりましたので、その時の体験を書いてゆきたいと思います。
購入したのは「5月8日」。
ゴールデンウィークが明け、日本酒を調達しにいつもの酒屋さんへ行った際に案内していただけました。
既にIMADEYAさんにて1本確保ができていましたが、緊急事態宣言などの影響で受け取りがどうなるのか不確定の状態…ありがたく購入させていただきました。
第1弾は「飲食店さんのみ」と断られたため、気に掛けていてくださったのかもしれません。
( ´人` )本当に感謝です。
紫舟タイプは、ホログラムのピンクや緑に輝く透明な袋に入っていますので、光の反射による色の違いを楽しみつつ袋を開けていきます。
すると水引の端がしっかりと蓋を覆い両面テープで貼り付けられているため、ベリッと剥がす感じで開ける必要がありました。
マイナス5℃の日本酒セラーで保管していたため、スクリューの蓋を回しても吹きこぼれることなく静かに開栓することができました。
ジュワ~っと泡が広がり、その後もプチプチと発泡しています。
瓶内もシュワシュワ泡が立ち込めていますが、見た感じの印象は思ったよりもガス感控えめでした。
マイナス5℃で冷やしていたので、温度の問題もあるかと思います。
…ん?なんだか酸っぱい香りです。
シードルワインみたいな、酸味の強い香りがします。
ジュワジュワっと発泡感。
さっぱり?
と思わせてからの甘み。
口に残る甘みは、新政の貴醸酒「陽乃鳥」(ヒノトリ)を思わせます。
白ワインっぽい。
酸味からのジュワリとした甘み。
「おいしい?」
と聞かれたら、香りに独特のすっぱさがあるので、ちょっと素直に好きと言えません。
ですが、柑橘っぽさと和梨のようなジューシーさのある甘さが良い感じです。
陽乃鳥よりさっぱり爽やか。
誕生日とかお祝いの時の「乾杯酒」として飲みたい感じです。
続けて飲んでいると、口に残る甘みに惚れそう…。
かわいさと魅力のある甘みです。
新政さんのスパークタイプの日本酒はあまり飲んだことがないので、去年いただいたクリスマスタイプと比べてみると
貴醸酒ですが、甘すぎないスパークリングワインのおいしいやつ。
といった感じです。
日本酒感はありません。
飲む度にジュワジュワするので、ケーキとチキンが欲しくなってきました(笑)
お米でこの感じを表現するのはすごいなぁ…と改めて感心しました。
先ほどは混ぜずにいただきましたが、瓶の底にうっすらと溜まったオリを混ぜてみます。
ひと口含むと、ジュワリ。
甘さが変わりました。
さっきは、酸味からの余韻で甘さを感じました。
混ぜると最初から甘い。
香りも酸っぱさが落ち着きました。
混ぜたほうがバランスが良いです。おいしい。
後に残るのは軽やかな甘みで、陽乃鳥っぽさが増しました。
ガス感があるので、陽乃鳥より爽やかです。
口に含んだ時に、辛口の白ワインを飲んだ時のような酸っぱさがありますが、混ぜたほうが美味しくて好きです。
甘さに柑橘っぽさがあるので、さっぱり飲めます。
ジュワジュワとしたガス感も良い感じです。
グラスに注ぐと「ジュワ~~~~」っと泡が。
香りが昨日よりも落ち着いて、最初に感じた独特な酸っぱさが無くなりました。
若干瓜っぽいような感じもします。
ジュワジュワガス感!
そうそう、これこれ。
甘さと柑橘ぽさとガス感。
酸っぱさが気にならなくなりました。
昨日よりも飲みやすくて、ジュースっぽくなりました。
ガス感が強いので、強炭酸水飲んだ時みたいにお腹に満足感があります。
でも、柑橘のさわやかさがあるのでゴクゴク飲みたくなっちゃいます。
料理と一緒じゃなくても、これだけ(単体)で味わえる日本酒です。
昨日とは雰囲気が違くて、ドライさも感じます。
飲んでいるとたまにチーズのような乳酸の香りがまったりと漂います。
美味しい日本酒ですが、今回紫舟タイプを購入するのに苦労したので、あの大変さを考えると「あ、うん、こういう日本酒なのね」と思ってしまいました。
「おいしい。…けど…」
と。けど…が続きます。
個人的には、陽乃鳥のほうが好きです。
陽乃鳥(ひのとり)は飲んでいて「これじゃなきゃヤダ!」と何度も飲みたくなっちゃう大好きな日本酒ですが、紫舟タイプは1本飲めたら満足できる感じがあります。
香りに独特なすっぱさが戻ってきました。
うまく表現できないのですが、独特なのです。
飲んでみると、甘ジュワで甘さが強くなったように感じます。
柑橘&おいしい甘さ。ガス感もまだ健在で、3日目が一番おいしいかも!
初日のクセが落ち着いておいしいです。
強いガス感が落ち着いたので、美味しくなった感じでしょうか。
甘みにやさしさがあります。
ようやく「もっと飲みたい!」と感じるようになりました。
でもこれ以上ガスが抜けたら多分寂しさ(物足りなさ)が出ちゃうので、開栓後は3日が限度かな?とも思いました。
IMADEYAさんのオンライン販売で勝ち取った2本目。
本来でしたら東京銀座にある店舗へ取りに行く予定でしたが、緊急事態宣言が延長されたため今回に限り「配送」にて家へ送ってくださいました。
マイナス5℃で保管できるので、正直開栓するかどうか迷いました。
ですが日本酒セラーもパンパンになってしまったので「美味しい日本酒は美味しい内に」を合言葉に、2本目も飲んでしまうことに。
あと、独り占めするより美味しい日本酒はシェアしたいですからね♪
2本目は、日本酒好きな人と一緒に飲むことに。
「No.6十周年記念の第2弾があるのだが…」
と紫舟タイプを慣れた手つき(?)で開けます。
わたしは1本味わっているので、先に飲んでもらおうとグラスに注ぎ様子を見ます。
「なにこれ!すごい美味しい!かなりジュワジュワだね!」
飲んだとたんに歓喜の声が!
その後も「美味しい」を連呼して喜んでくれるではありませんか…!
(え?そんなに美味しかったっけ?←失礼)
と失礼なことを思いつつ、わたしもひと口飲んでみると…
「あれ、1本目より美味しい…!」
賞味期限の5月31日ギリギリまで保管したおかげもあるのか、1本目の時に感じた「独特な酸味」や「クセ感」がありません。
酸味と甘みが丁度いい。
そして何より、目の前で美味しそうに一緒に飲んでいる人を見て
と誰かと一緒にお酒を飲む楽しさを実感しました。
なんか、飲んでいてすっごく美味しかったです。
現在はコロナ過で緊急事態宣言など、仲間と一緒に集まってワイワイすることは難しいですが「人と一緒に飲むお酒の美味しさ」を再度実感することのできた出来事でした。
特に新政さんの日本酒は、ひとりで飲むより誰かと飲んだほうが断然旨い。
喜んでくれる姿を見ると、それがまた嬉しいですよね。
2本目はあっという間に飲み切ってしまいました。
美味しかった!
第3弾も出来る限りがんばろう!と思いました。
第二弾の紫舟タイプは、先行販売が全て「抽選販売」だったために完全に「運」スタートとなりました。
先行の抽選は全てハズレ。(愛媛は不参加)
わたしに運命の女神は微笑んでくれませんでした。
どんな販売方法だったのか?は下記のページにて確認ができます。
あとは5月1日の全国一斉発売の特約店さん頼みとなりましたが、最初は諦めていました。
いつもの酒屋さんでは第1弾の時、断られてしまったため「各店に入る本数が少ない」というのは解っていたからです。
ですが、販売情報に関しての進捗は毎日追いかけました。
「だって、飲みたい!」
そして、第1弾の時に購入できたIMADEYAさんでも発売されると知り
「これはチャンスかもしれない!」
と。結果、購入が確定された時に燃え尽きました(笑)
このように、
新政酒造さんの限定日本酒を手に入れるには、相当な労力が必要です。
「必ず購入できるつてがある」
という人でしたら良いですが、そんなものはない人間からしたら精神的にも来ます(笑)
今回は、
という感じでした。
あ、わたし救われたんだ。書いていて思いました(笑)
でも確かに2本目は、1人で飲んだ1本目より美味しかったです。
自分が好きな日本酒を「おいしいね~」って言ってもらえると嬉しいですね(* ´ω` *)
第3弾も、新政さんの日本酒好きの一人として、出来るところまで頑張りたいと思います。
現場からは以上です。
第三弾は、上國料勇タイプです。ファイナルファンタジーのアートディレクターとして活躍されておりますが、京都の大徳寺での襖絵制作など活動は多岐にわたります。秋田の自然と酒の神さまが描かれてた秀逸なグラフィックに仕上げいただきました。ということで、携帯の壁紙をどうぞ。 pic.twitter.com/R0Rys2x2I3
— 新政酒造 佐藤祐輔 (@aramasayamayu) May 21, 2021
第三弾が発表されましたね。
上國料勇さんは、ファイナルファンタジーのアートディレクターを務め、現在はフリーとして活動中。
第三弾のNo.6のボトルデザインも「FFっぽい世界観」を感じさせる出来となっています。
ファイナルファンタジーファンにはたまらないのではないでしょうか?
「秋田の自然と酒の神さま」
が描かれ、グラフィックに合わせた味わいのお酒に仕上げたとこのとです。
6月1日現在、発表されている内容は
とのことでした。
ちなみに、エースホテルはポーランド発のライフスタイルホテル。
公式サイトが日本向けではないのでちょっと操作性が悪いかもしれません。
エースホテル京都公式サイト
https://www.acehotel.com/kyoto/
第1弾「ダイスケリチャードタイプ」、第2弾「紫舟タイプ」と各4000本の限定販売となりましたが、第3弾「上国料勇タイプ」は4500本と本数が増えているようです。
京都以外の先行販売はどうなるのでしょうか?
毎回、先行販売を扱う酒販店さんが異なるようなので、そわそわしますよね。
続報が入り次第、掲載していきたいと思います。
品目 :日本酒(貴醸酒スパーク)
内容量 :720ml
アルコール分:12度
原材料名 :米(秋田県産)、米こうじ(秋田県産米)
精米歩合 :55%(麹米、掛米ともに55%)
原料米名 :改良信交100%使用
原料収穫地 :2020年 秋田県秋田市河辺地区 収穫
使用酒母 :きょうかい6号
発酵容器 :木桶仕込み
醸造年度 :令和2酒造年度(2020-2021)
杜氏名 :植松誠人
製造者 :新政酒造株式会社
所在地 :秋田市大町六丁目2-35
製造年月日 :2021.04(出荷年月)
価格 :4,800円(税込)
ちなみに使用されている原料米の「改良信交」は、新政Colors(カラーズ)シリーズの「コスモス」と同じ酒米となります。
No.6 十周年記念酒の第二弾が発売されました。
紫舟タイプは賞味期限が「2021年5月末日」までとなっているため、飲み終わっている人が多いのではないでしょうか?
氷点貯蔵であれば発酵が進まないため、レマコムなどに閉まっている人もいるかもしれません。
冷蔵庫で保管している人は、瓶が破裂しないように注意してくださいね。
No.6十周年記念酒の
と飲んで、わたしの好みは今のことろ「ダイスケリチャードタイプ」になります。
次回の第3弾、上国料 勇(かみこくりょういさむ)タイプはどんな味わいの日本酒となるのでしょうか?
楽しみですね。
新政酒造、佐藤祐輔社長の告知を待ちましょう!
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