日本酒には出会いがある。
いつも飲んでいる日本酒。運よく買えたスペシャルな日本酒。たまたま買ってみたら好みだった日本酒…。
ここでは、唎酒師のわたしが出会った「本日の1本」を紹介します。
本日の1本は、秋田県秋田市にある「新政酒造」さんが夏の季節限定で醸す日本酒「天蛙 2020」(あまがえる2020)です。
新政酒造さんの醸す日本酒には、強烈な個性を持つPRIVETE LAB(プライベートラボ)という「実験ライン」のブランドがあります。
の4種類があり、1年の内に「陽乃鳥」や「亜麻猫」に出会える確率は高めとなりますが「涅槃龜」や「天蛙」は中々出会えない入手困難なお酒となっています。
中でも天蛙(あまがえる)は夏にしか発売されない季節限定のお酒で、強発泡清酒という管理が非常に難しいお酒のため「玄人向け」として発売されています。
基本的には「飲食店さん優先」のお酒で、一般の人で購入できる人はかなり限られてくる銘柄です。
天蛙はアルコール度数が10%以下と低アルコールで甘みもありとても飲みやすいお酒ですが、強い炭酸ガスを持ち合わせているいわゆるスパークリング日本酒です。
この炭酸ガスは「瓶内二次発酵」にて生成されるもので、瓶内で生きている酵母が活発に働いている証拠です。
つまり、暖かい場所やボトルへの衝撃などによっては瓶内のアルコール発酵が加速度的に進み、内圧が高まることで「噴出したり、爆発したり」する可能性があります。
そのため、販売特約店さんでも「マイナス5度の氷温管理」ができないと扱えない商品となっています。
ちなみに「マイナス5℃」であれば、瓶内の酵母の働きを極限に抑えることができます。
ですが、冷蔵庫保存の温度(0℃~10℃)では、瓶内の酵母の働きを抑えることができないため「早めに飲む」「開栓に注意する」といった対策が必須になります。
こういったこともあり、特約店さんでは一般の人には販売していなかったり、全て了承して購入してもらったりとお店により対応が異なります。
2021年の今年発売となった天蛙には「2020」という数字が記載されています。
こちらは「2020年に収穫された酒米を使用して醸したお酒」という意味です。
酒米の収穫時期は、9月・10月頃となるため夏に発売される天蛙は必然的に昨年(2020年)に収穫されたお米で醸されることとなります。
こういった表記は酒蔵さんによって異なるため「新政さんの場合は収穫されたお米の年」と覚えておくと安心です。
ちなみに「2020年ヴィンテージ」と呼ばれます。
また、今年の天蛙はタンク3本分仕込まれましたが、1ロット目が酵母活性が非常に強い「アングリーバージョン」として発売されました。
7月10日より1本目として発売された天蛙ですが、例年より発泡が強くなってしまった怒りんぼバージョンの蛙です。
新政酒造の8代目蔵元、佐藤祐輔さんでさえ
もはやこぼさずには開けられないので、彼の怒りに任せて放置することにしました…。
と開栓時に噴き出てしまった暴れ蛙の姿の写真と一緒にTwitterにてツイートしていました。
「プロ向け」
「風呂場で開栓必須」
「開栓するまでに1時間掛かった」
「開けたら噴き出て2/3が無くなった」
などなど、瓶内二次発酵酒としてかなりの開栓困難バージョンとなったようです。
いつもの酒屋さんでは「アングリーバージョンは飲食店さんにしか出せない」とのことでしたので実際にお目に掛かることはありませんでした。
ですが、吹き出たら悲しいので購入できなくて良かったのかもしれません…。
わたしが購入できた天蛙は、2ロット目の「いたって穏やかバージョン」となりました。
8月下旬に発売となった2ロット目の天蛙。
今年はコロナ過による緊急事態宣言が延長に延長を重ね、飲食店さんでお酒の提供ができない状況が続いています。
本来であれば「2ロット目も飲食店優先」と言われていましたが、上記のこともあり一般人のわたしも購入できることとなりました。
ありがとうございます…!
多分来年は、天蛙(あまがえる)を購入することは出来ないと思いますのでとても嬉しかったです。
夏の風物詩・強発泡清酒「天蛙」が今年も登場です。
なんと今年、「天蛙」は「No.6」とともに十世代を迎えました!ご愛顧ありがとうございます。
なお、この常軌を逸した夏の暑さのため、日頃からキレやすい「天蛙」がさらに冷静さを欠きやすい今日この頃です。
まずはこの手の「瓶内二次発酵酒」に慣れていない人は、危険を避けるために買わないでいただきたいと思います。
また自信がある方でも、じゅうぶん万全を期して開封していただきたいと思います。
と記載がありました。
こちらに書かれている内容は「アングリーバージョン」とは異なります。
アングリーバージョンは赤文字で注意書きがありましたが、穏やかバージョンは白文字で記載されていました。
2020年ヴィンテージより、テイスティングコメントが記載されるようになりました。
青りんご、マンゴスチン、夏の草いきれを思わせる複雑で食欲をそそる香り。
ガス圧は高めで、開けるのに少々困難を伴うが、ドライに触れ気味ながらも甘酸のバランスの良い酒質。
これ以上の内圧上昇を防ぐため、完全要冷蔵の上、可能な限り早く消費されるべきである。
と記載がありました。
味わいに加え貯蔵のアドバイスなども記載されているので分かりやすいですし、読んでいてそのお酒のことをもっと知れるため楽しいですよね。
以上が、天蛙2020(識別情報 20PAG02/穏やかバージョン)のお酒の内容となります。
実は、天蛙2020ヴィンテージのお酒を飲むのは今年「2回目」となります。
1回目は「新政 × エースホテル京都」のイベントにて飲むことができました。
その際にいただいた天蛙2020は、製造年月2021.04/出荷年月2021.06のものでしたので今回一般発売された2本とはまた別のバージョンとなっていたようです。
イベントの内容は下記の記事にて確認できます。
穏やかバージョンの味わいはどうだったのでしょうか?
早速、開栓していってみましょう。
酒屋さんでも、ラベルの裏のコメントでも「開栓には注意してね!」と散々注意を受けてきたためかなりビビッていました。
開栓までの様子はTwitterにUPしています。
【新政 天蛙 2020🐸】
\2ロット目の穏やバージョン/
開けるのにビビり散らかしていますが
スンナリ開いちゃった様子をUPしておきますね🥺(ちょっと長いです)
※開栓まで20日間、マイナス5度で保管していました。 pic.twitter.com/NxNk5fmInN
— ねこと日本酒🐈🍶@なかのひと (@neko_nihonsyu) September 17, 2021
想像と違い、穏やかなカエルさんに驚きながらも何の問題もなく開栓することができました。
それも、購入後20日間ほど「マイナス5℃で冷やせる日本酒セラー」で保管していたのが良かったのかもしれません。
ジュワジュワと発泡し、グラスの下から上へと泡が立ち上がります。
スパークリング日本酒によっては「注いだ瞬間は泡が弾けるけど、すぐに落ち着く」といったものも多いですが、天蛙は注いだ後もジュワジュワです。
お米とフルーティーな香りがします。
少しキレ?酸味?
さっぱり感のある香りもします。
ジュワジュワ!
口の中に広がるガス感と、舌の上でピチピチ弾ける泡がとっても美味しいです。
これはスパークリング日本酒。
ほんのり甘みと、柑橘の酸味。
飲んでいると香りにも柑橘っぽさを感じます。
さっぱり爽やかさがあり、ドライなんだけど甘みもあって美味しい。
オレンジを皮ごと「ぎゅっ」と搾ったような、皮の苦味もありつつ酸味とギュッとした甘さ。
甘すぎず、ドライすぎずに美味しいです。
いつまでもガス感があり、飲む度ジュワジュワと泡が弾けます。
時間が経っても、ぜんぜんガスが抜けていきません。
上顎と舌の間で踊るガス感を愉しめます。
飲み続けていると香りに梨感も出てきました。
それと同時に、甘さ控えめだけどみずみずしさのあるジューシーな梨の味わいも感じられます。
味わいがハッキリ違います。
それは甘さです。
エースホテル京都で飲んだ天蛙は「甘さと酸味」が印象的で飲んでいて至福でした。
こちらの天蛙は「ドライさ&甘さ控えめ」。
柑橘の皮っぽさもあり、スッキリ感があって食前酒ではなく「食中酒」としても楽しめる味わいだと思います。
ですが、温度が上がると甘みが出てくる感じがあります。
う~ん。
やっぱり冷えていた方がすきです。
美味しい。
泡が舌の上で踊るのがホント好きです。
泡を楽しみながらスイスイ飲んでしまいます。
そしてここで気付いてしまいました…
ボトルの底に滓(おり)が溜まっていることに…
そう言えば「うすにごり」のお酒でしたね…
混ぜたら爆発する…という頭があったので、うすにごりのお酒ということをすっかり忘れていました。
残りが少ないのでとっても濃いです。
甘さも濃くて「もしかしたら途中で混ぜていたら、もっと甘みを楽しめたのでは?」と思ったのは内緒です。
混ぜる前とまた印象が違ってとっても美味しいです。
濃い甘さでおいしい…。
そしてもう無くなってしまいました…
飲みやす過ぎます。天蛙。
次回もしも購入できた際は、蛙さんの機嫌を伺いながらしっかりオリを混ぜて楽しみたいと思います。
おいしかった!
ごちそうさまでした♪
天蛙は「夏限定」のお酒なので、夏に出荷された分からしか購入することができません。
今年は7月・8月の2回に分けての出荷となりました。
【追記】9月以降には発表のなかった「3ロット目」の出荷もあったようです。
また、蔵での販売は行っておらず販売特約店さんでの購入が必要となります。
本数も限られており、基本は「飲食店さん優先」となる銘柄です。
扱いの難しい銘柄のため、店頭に並ぶことは「ほぼ無い」と思っていた方が良いでしょう。
もし、個人で購入したい場合は
というのが条件となるかもしれません。
ちょっと扱いを間違えると噴出したり、爆発してしまう銘柄なので「噴出したからもう1本くれ」という考えの人には売ることができないためです。
「噴出すことも愉しみのひとつ」
という日本酒であると理解しておく必要があります。
主な特約店さんに関しましては、下記のJ.S.P(ジャパンサケショウチュウプラットフォーム)のサイトに記載があります。
「でもやっぱり飲んでみたい!」
という人は【飲食店さんで飲む】という方法がおすすめです。
9/17現在は緊急事態宣言などにより、お酒の提供をしていないお店が多いですがSNSなどを見ていると入荷しているお店も多々見かけます。
TwitterやInstagramなどで情報収集しておくと、飲みに行けるチャンスが増えますのでおすすめです。
特殊製法 :低酒精発泡純米酒
アルコール分 :8度
原材料名 :米(秋田県産)米麴(秋田県産米)
精米歩合 :麹米55%・掛米60%
原料米名 :秋田酒こまち100%使用(2020年収穫 秋田県産)
使用酵母 :きょうかい6号
発酵容器 :温度制御タンク
醸造年度 :令和2酒造年度(2020-2021)
内容量 :720ml
価格 :2,200円(税込)
使用瓶 :耐圧ストレート
製造者 :新政酒造株式会社
所在地 :秋田県秋田市大町6丁目2-35
公式サイト :http://www.aramasa.jp/
Twitter :https://twitter.com/aramasayamayu
わたしも購入できると思っていなかった銘柄の「天蛙」。
今までも新政酒造さんの日本酒を購入していましたが、酒販店さんでは1度も見掛けたことの無い銘柄でした。
当サイトでは「実際に飲んだ日本酒」しか記事にしないと決めているため今回購入出来て本当に感謝しかありません…( ´人` )
新政酒造さんの日本酒を購入するのはカンタンではありませんが、大好きな酒蔵さんなのでこれからも出来る限り追いかけていきたいと思います。
\関連記事/